労働断固拒否
「だめだ…異世界舐めてたわ…まさか食えそうなもんすら木になってねぇとか流石にドン引きなんだけど…。こんな事なら王女様の提案に乗って騎士見習いでもなんでもなっておくべきだったか…?いやでも絶対面倒臭いだろうしな、しかも騎士って柄でもないし…何より労働、ヤダ、ゼッタイ。」
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「……え?」
多分断られるとか思ってなかったんだろうな…しかも2人揃ってノータイムで……
だがしかし、ここは流石に強気で断らせてもらう…ごめんよ…王女様……。
「え、えっと…理由をお聞きしてもよろしいでしょうか……」
「あー…まぁなんて言うか騎士…って柄でもないし… ……あ、それとせっかく異世界に来れたんだから自分たちでこの世界を見て回りたいなー……と」
「なるほど…そういう理由でしたか……」
だいぶ苦しい言い訳かとは思ったが何とか通せるもんだな……
「それでしたら護衛として騎士をお付けしたいのですが、現在騎士も人手が足りておらず厳しいのです…。なので、せめて金銭等の補助させてください!こちら側が一方的に呼び出しておいて何の手助けもせずにさようなら、とは流石にできません…!そんなに大量の支援をする程の余裕が無いのが申し訳ない所なのですが…」
まじか…完全に働きたくない言い訳だったのにこんな展開になるの…?流石に断るか……いや、それなら当分の食料位だけでも貰っておくべきか…?うん…それをもって適当に街の外にでも出てみるか…。まぁ最初から食料があれば余裕でひまと引きこもり生活できそうだよな、よし!
「……えっと、それなら金銭ではなく食料でお願いしてもいいですか…?」
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王女様の提案を断って大体1週間経つか経たないかと言った頃、早速俺とひまは崖っぷちの状態に陥っている…。しかも複数の意味合いで……。
先ず1つ目、食料問題。食料なんて適当にその辺の森に生えている木になってるもん食えばいいと思っていたんだが…どうにもそんな木が見当たらない。草なら幾らでも生えてるが…流石に知識も無しにその辺の草を毟って食おうとは……。王女様から貰った食料もほぼ底をつきかけている。
2つ目、当然ながら住む場所がない。というかどの世界でも当たり前だが金がないのに住む場所なんて手に入らない。そして働かない限り金は手に入らない…。でも俺たちは働きたい!なんて気持ちはまっったく無い。最初は適当に野宿でもすればいいやーなんて2人で考えていたのだが数日野宿を経験して痛感した…野宿、意外と辛い……。
そもそも家に引きこもってた人間が野宿なんてするもんじゃないって…。ひまの「野宿でいいと思う!1度経験してみたかったんだよねー!」なんて能天気な意見参考にしたのが本当にダメだった。あの判断を下した俺をぶん殴って止めたい…。
身体を清潔に保つことだけは出来ているのが救いだ。近くに綺麗な湖があって本当に良かった…。それでも水浴び程度しか出来ていないが、何もしていないよりは100倍マシだ。その湖に魚でもいれば良かったのだがそんなものは影すらも見えてない……。
「あー…これからどーすっかなぁ………やっぱ働くしかないか…?」
「亮兄ぃ…働くのー…?じゃあひまはこの拠点で帰りを待つよぉ…労働なんていやだぁ……」
「いやいや…そこは嘘でもいいからさ、わかった!一緒に頑張ろう!とか……いや言うわけないな、俺の妹だもんなー…」
「そーだよぉ…そもそもひまがそんなこと言ったら怖いでしょー……」
間違いなくビビる、というか熱があるのかを疑うほどだな…。あとひまさん…ここただの洞窟であって俺らの拠点って呼べるほど立派な場所じゃないよ……。まぁ雨風しのげるだけでもすごい助かってるけど。
それよりもこんな話してる場合じゃない…本格的に何か行動するとしたら体力的に動けてもあと1.2日程度だ。何をするか、するなら何が必要かだけでも考えないと本当に詰む。
選択肢はそんなに多くは無い。王女様の発言を信用するのであれば異世界から来る人はこの世界の普通以上には戦えるらしい。それを信じて冒険者等にでもなるか…。もしくは普通にどこかに働きに出るか、だ。
でもぶっちゃけどっちを選ぶにしても騎士見習いを断ってでもするべきことでは無かったような気もする……。幸い洞窟内部には剣が複数本落ちていた。おそらく過去にここに来たことのある冒険者たちのものだろう、この際だから使えるものは何でも使わせてもらうつもりだが…。
やはり冒険者にでもなってみるか…?と思っていたが先程からぐったりだらけていたひまが唐突に妙案を叩き出してきた。
「亮兄ぃ!わかった!個人的冒険だよ!!冒険をしてそして最終的にはここに帰ってきて引きこもればいいんだよ!!」
……正直、ひまが現実逃避でぶっ壊れたと思った。
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