1-7 パーティー……!?
「我ガ主、アソコニイル者タチハ主ノ仲間デスカ?」
俺の僕であるドラゴンがホバリングしながらいう。
「仲間というか……状況がよくわからないんだ。俺もこの世界に来たばかりだから」
合図して俺は地上におろしてもらった。
3人の暴走族が恐る恐るといった様子で俺に近づいてくる。
俺の方は彼らを恐れる必要などない。なにしろこっちはレベルカンストなのだ。やろうと思えば一瞬で全滅させることもできる。
完全に流れかわっただろ、これ。
「アイツ、ウチらンコト襲わねーよナ?」
フブキが空に浮かぶドラゴンを見あげる。
「俺が命令しない限りはね。ちょっとこっちに来るよう命じてみようか? 触ったり乗ったりしても平気だよ」
「ンなコトゼッテーやンねェ」
彼女はぶんぶんと頭を振る。よく見るとコイツ、幼児体形だし、顔も小学生みたいだな。
「オメーはむかしからトカゲとかダメだもンナ」
マッハクンが笑う。それをフブキはにらみつけた。
「アァ……!? オメーだってエビ食えねーじゃンヨ……!?」
「いまそれ関係ねーだろーがヨ……!?」
ふたりはじゃれあっている。仲いいなコイツら。
ナイトは彼らから離れて俺のことをじっと見ている。
「オメー……異世界来たトキあンだろ……!? 召喚魔法使えるくれーだかンヨ……!?」
「ちょっと事情があって……」
「オメーやっぱ走り屋だナ……!?」
「はい?」
俺は首をひねった。やっぱって何だ?
「ケツに乗ってたトキから俺にはわかってたゼ……!? あのスピードの領域で冷静でいられンのは走り屋だけだかンヨ……!?」
「いや、あれは……」
ナイトはマッハクンの方に目をやる。
「なあマッハ、コイツ羅愚奈落に入れンべ」
「アァ……!? このダサ坊をかヨ……!?」
「ああ。コイツ気合入ってンゼ。俺ャー気に入った。羅愚奈落の4人目はコイツっきゃいねー」
ナイトに謎の高評価を受けている俺。まあ、むかしからガチムチ系にはかわいがられるタイプだからな。かわいがられすぎて宿屋に泊まるときとか部屋の戸締りたいへんだったけど。
「でもヨォ……」
マッハクンは不満顔だ。その肩をフブキが叩いた。
「でもも何もオメー、チキンレースでコイツに負けたじゃねーかヨ……!?」
「アリャー俺の勝ちだベ……!?」
「ギリギリまで行った方が勝ちだかンヨ、そんなら崖からダイブして死ぬギリギリのトコまで行ったコイツの方が勝ちだベ……!?」
「でも俺ャー、コイツに原チャをオシャカにされたッつー恨みがあるかンヨ……!?」
「アレ先輩から5000円で買ったやつだベ? もともとオシャカ寸前だったじゃねーかヨ」
いいまかされたマッハクンはしばらくひとりでブツブツ不平を漏らしていたが、やがてこちらに近づいてきた。
「しゃーねーからオメーを羅愚奈落に入れてやンヨ。イッペンいっしょに暴走ったら友達だかンヨ……!?」
「えっ……いや、俺は……」
「アァ……!?」
マッハクンは俺の胸倉をつかみ、顔を近づけてきた。「俺らの族に入れねーッてのか、コラ……!?」
「えーと、入ります。いや……いますぐ入れやがれバッキャロー!!」
ここでまさかの逆ギレである。
俺はコイツらを瞬殺できるほどのチートキャラだ。
チートキャラだが……現実にもどれば単なるモヤシ系陰キャボーイにすぎない。逆にコイツらDQNの手で瞬殺される立場である。
ならば飛びこむ! その懐に!
「何だ、そんな羅愚奈落に入りたかったンかヨ」
マッハクンがほほえむ。
「そ、そうだよ。羅愚奈落に入りたくてあの学校選んだようなもんだからな」
「そーなンかヨ。オメーソレ早くゆえヨ」
あっという間にご機嫌になる。ご機嫌のあまりに俺の肩をブン殴る。防御力もカンストだが一応痛い。
「サスガ我ガ主、コノ世界ニ来テスグニぱーてぃーヲ結成サレルトハ」
上空でドラゴンがいう。
これのどこがパーティーだよ。コイツ教師だったら絶対いじめを見過ごすタイプだな。
「オーシ、今日からオメーは羅愚奈落の旗持ちだ」
マッハクンに肩を抱かれる。
「俺らの族入ったンだからビッとしろヨ……!?」
「半端してッとウチがブッチメンかンヨ……!?」
ナイトとフブキから温かい励ましのことばを頂戴する。
ヤバイ……。本当はただの陰キャであることがバレてしまったら命はない……。
俺はちょっとした砂漠なら緑化できるレベルの冷や汗をかきながら今後の学校生活について思いをめぐらせていた。