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5-3 神話級……!?

「行こうぜ、アイツの背中の上に!」


 俺は龍を指差し、叫んだ。


 尻尾を伸ばした龍はまるで山が歩いているようだった。


 その山道(・・)をバイクで登る!


「ハァ……!? カズ、オメーマジか……!?」


 マッハクンがことばとは裏腹に笑顔を浮かべる。「俺らァラリ坊集団だけどヨ、そん中でもオメーが一番イッチャンラリってンゼ……!?」


「あんなトコ行けッかヨ……!? 相当ルートメーゾ……!? 一歩まちがえりゃ単車ごと転落だベ……!?」


 ナイトがいうと、フブキが鼻で笑った。


「オメー、ビッてンか……!?」


「アァ……!? ビッちゃねーヨ……!?」


 ナイトのキレかけているのが背中越しにも伝わってきた。


「総長が行くッつッてんのに親衛隊長のオメーがお留守番かヨ……!?」


「ンだコラ……!? だったら見したらァ、羅愚奈落ラグナロク親衛隊長の疾走ハシりをヨ……!?」


 ナイトはバイクを急発進させた。


「うわっ」


 俺はあわてて彼にしがみつく。


「羅愚奈落特攻1番機、行ったらァァァァァッ!」


 前輪を持ちあげ、龍の尻尾に乗ると、そのままりょうせんを駆けあがっていく。


 実際に乗ってみると、尻尾は意外に細く、平らな部分がほとんどない。下を見ると地面がどんどん遠くなっていく。ジェットコースターなら固定用の器具があるからいいけど、バイクだと丸裸だ。


「おおおおおっ、ェェェェェッ!」


「カズゥ、旗ァ掲げとけェ……!? オトコ伊達ダテの見せドコロだゼ……!?」


 そうナイトはいうが、俺はそんなスタントかます気にはなれない。


 龍の背中には神社の豆まきとかに使えそうな屋根つきの台が作ってあった。そこに弓を持ったゾンビが乗っている。俺たちに気づいてつがえた矢を向けてくるが、バイクの方が速い。


「ッダラァァァッ! 羅愚奈落親衛隊長・荒垣あらがき騎士ないと推参ンンン!」


 ナイトは手前にいたゾンビを前輪でつぶし、さらに降車してまわりの連中をブン殴る。


 俺もいっしょになってゾンビをボコボコにした。


 そこに、背後からエンジン音が迫ってきた。


「ッシャァァァッ! 羅愚奈落初代総長・さくら音速まっは様のおでましじゃァッ!」


 マッハクンがバイクでつっこんできたので危うく轢かれるところだった。


 バイクはさらにやってくる。


「羅愚奈落特攻隊長・大和やまと()参上! ウチの顔ォ最後に拝んで地獄()ちろ……!?」


悪糾麗ワルキューレ第22代(ソオ)チョオたか莉子りこだァ……!? 死にてーヤツから並べ……!? 整理券はいらねーゾ……!?」


独立どくりつ連隊れんたい拷死苦ゴシック初代総長スカーレット・スカムスカル見参! アンデッドはあーしの軍門にくだりナ……!? さもなきゃもっぺん死ね……!?」


 いまさらだけど、俺のまわりにいる連中の自己顕示欲スゲーな。


 龍の背中の上には族車が並んだ。ここの台を作った人もその後まさか県道沿いのファミレスの駐車場みたいになるとは思ってなかっただろう。


 台の上のゾンビは一掃したが、まだ龍の首の根元に10体ほど固まっている。よく見ると、龍の頭から伸びる鎖をその10体でひっぱっていた。どうやらこれを手綱代わりにして龍を操っているようだ。


「オラァ――――ッ!」


 俺はそいつらをブチのめした。


 1体残った中ボスっぽい奴が鎖をつかんだまま不敵に笑う。


「グフフ、我ラノ役目ハコノ龍ノ進行方向ヲ微調整スルコトノミ。ココマデ来レバ、モハヤ止メルコトハデキン」


「そうかよ。じゃあ失せな」


 俺はそいつを龍の背中から蹴りおとした。


 見おろすと、城壁は目の前だ。壁のてっぺんからあわてて逃げだす兵士たちの姿がはっきり見える。龍の角だらけの頭は壁を越えていて、あと1歩前に出れば壁は簡単に破られてしまうだろう。


 俺は鎖をつかんだ。


「カズ、力を貸すゼ……!?」


 マッハクンたちが駆けよってくる。


「あーしがスケルトン召喚すッから、みんなでひっぱンベ……!?」


 スカーレットが俺のとなりで杖を振りかざす。


 俺はかぶりを振った。


「いや、それでもこの龍は止められない。ここは俺にまかせておけ」


 ひとつ息を吐き、スキルを発動させる。


神話級ミシカル魔獣調教ビーストテイム!」


 鎖を強く引くと、龍は首を曲げてこちらを向いた。


 爪先が城壁をかするギリギリの位置で止まる。


「いい子だ」


 角がいっぱい生えていて顔を覆ううろこもイカツいが、よく見りゃかわいい目をしていた。


「オオッ、カズが龍を止めたゾ……!?」


「やっぱコイツハンパねーゼ……!?」


「この龍、排気量でゆったら100万ccくらいあンベ……!? もう免許制度の枠超えてンナ……!?」

 

 城の中の兵士たちも俺を見て歓声をあげている。


 俺はパレード気分で彼らに手を振った。


 だが歓声はすぐ悲鳴にかわった。もう1頭の龍が城壁に突進していき、段ボールでも蹴破るみたいに破壊してしまったのだ。


 れきと化した城壁をゾンビたちがいのぼる。


「サベーヨ……!? アッチのヤツも何とかしねーと……!?」


「カズゥ――」


 リコに袖をひっぱられる。「アタシのケツ乗ンナ……!? アイツントコまで連れてくかンヨ……!?」


「ダメだ。それじゃ間に合わない」


 俺は「神話級魔獣調教」のスキルをふたたび発動させた。


 このスキルの特徴は、一度テイムしたモンスターの鳴き声を真似まねて同種の個体を遠くから操れるようになることだ。


 城壁を破りさらに進もうとする龍に俺は呼びかけた。


『そこのキミ、城を壊すのはやめるのだ!』


 龍はこちらを見た。


『わかったのだ!』


 呼びかけにこたえ、足を止める。


「オオッ、コトバ通じてンゾ……!?」


「意外と声カンケーのナ……!?」


「カズ、志村どうぶつ園レギュラーいけンゼ……!?」


 俺はさらに呼びかける。


『足元にいるゾンビたちを蹴散らすのだ!』


『了解なのだ!』


 向こうの龍が尻尾を振り、壁の割れ目から中に入ろうとしたゾンビたちを吹きとばす。


 完全に形勢逆転だ。


『よーし、じゃあみんなで力を合わせてゾンビを追いはらうのだ!』


『了解なのだ!』


 龍たちはまわれ右する。


「行っけぇぇぇーッ!」


 俺と龍は疾走し、ゾンビを蹴飛ばし、踏み潰し、薙ぎ倒した。




 荒野を何往復かすると、そこはすっかり無人の土地と化した。


「フッ……まあこんなもんか」


 俺は龍の背中の上から下界を見おろした。


 城の騎士団が旗を掲げて門の内へと凱旋がいせんしていく。


「カズゥ、オメーやっぱスゲーヨ……!?」


 スカーレットがうしろから抱きついてきた。「ネエ、ちょっちあーしと消えンベ……!? オメーの活躍見てて子宮エンジンに火ィ入っちまったヨ……!?」


 腰を俺のふとももにすりつけてくる。


「ヒッ……」


 俺は龍の鎖を握りしめた。


「オウコラァ、人のオトコにキタネーケツ押しつけてンじゃねーゾ……!?」


 リコがスカーレットの襟をつかんでひっぱる。


「アァ……!?」


「ンダコラ……!?」


 ふたりは額をぶつけてにらみあう。


「オイオイ、やめとけやめとけ」


 フブキが割って入った。「ンなしょーもねーコトでケンしてンじゃねーヨ」


 リコとスカーレットは彼女をにらむ。


「部外者のくせにウエメセ(・・・・)カマしてンじゃねーゾ、コラ……!?」


「テメーみてーのが一番イッチャンムカつくンだヨ……!?」


 フブキも表情をかえる。


「テメーら地上シタおりろ……!? 2人まとめて相手してやっからヨ……!?」


「まあまあまあまあ」


 俺は仲裁すべく、鎖を放して彼女たちの方へ向かおうとした。


 すると突然、足元がぐらりと揺れた。


 俺たちの乗っている龍がだんを踏んでいる。


『ご主人様、手を離しちゃイヤなのだ!』


「おまえも参戦すんのか……」


 俺とんでもないハーレムを形成しつつあるな……。ドラゴンカズセックス充分ありうる流れだぞコレ。


「オイ、アレ何だ……!?」


 マッハクンが空を指差している。


 見ると、小型の翼竜がこちらに飛んできていた。


 まさかドラゴンカズ3Pセックス……? 脱童貞(デビュー作)から過激なプレイに挑戦しすぎだろ……。


 翼竜は俺たちのそばに来ると、ホバリングした。背中には黒いマントを着た奴が乗っている。フードをかぶっているので顔は見えない。


「キミたちがラグナロク騎士団だね?」


 フード野郎はパンチきいた登場の割に落ちついた声をしていた。


「だったら何だッつーンだヨ……!?」


 マッハクンがガンを飛ばす。


 フード野郎の表情はうかがえない。


「我が名はベルゼム。人間たちからはこくきょうと呼ばれている」


 彼のことばに、暴走族サイドは武器ドーグを構えた。

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