↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/54

5-1 ダベリ……!?

第5突堤(ゴトツ) スピードのこっち側




 平日の夜だというのに集会だった。


 集会といっても、校長が出てきてなにやらありがたいお話をしてくれるやつではなく、総長が出てきて「気合入れてくンで夜露死苦《ヨロシク》ゥ!」とかいいだすタイプのアレである。


 異世界では特に厄介なモンスターにも他の族《ゾク》にも会わずに済んだ。


 元の世界にもどってきてまず向かうのはコンビニだ。食べ物と飲み物を買って駐車場で車《くるま》座《ざ》になる。


「うめー、ファミチキうめー」


 スカーレットが肉汁と唾液を垂らしながら肉に食らいついている。


 彼女は「独立《どくりつ》愚《ぐ》連隊《れんたい》拷死苦(ゴシック)」という1人だけの族《チーム》を旗揚げし、羅愚奈落《ラグナロク》と行動をともにしていた。しかし、どこでおぼえてくるんだろうな、こういうワード……。


「これ100個くれー持って帰ったら異世界《アッチ》統一できンベ。アッチにゃーこんなうめーモンねーかンヨ」


 彼女は脂でギトギトになった唇を舐めた。


「ンならとっととアッチ帰《ケ》ーれヨ……!? アタシが100個買ってやッかンヨ……!?」


 リコがそういってカフェオレをストローで吸った。


「アァ……!?」


「ンだコラ……!?」


 ふたりはにらみあう。


「まあまあまあまあ」


 俺は間に入って仲裁した。


 確かにスカーレットのいうとおり、こっちの食べ物はうまい。


 というか異世界の食べ物がひどすぎるのだ。


 魔王城周辺のエリアなんてスープがほとんどお湯だったからな。主食は薄《う》っすい粥だし。


 この間ミルホートの城でメシ食わせてもらったけど、これはうまかった。さすがに城主レベルだといいもの食ってる。


 まわりの現代っ子どもは「肉しょっぱ」「スープくっさ」っていって食が進んでいなかったが、俺はパクパク食った。それを見た彼らから「さすカズ」の声を頂戴したが、さすがにチョロすぎるのではないかと思った。


 メシ食うだけで褒められるって離乳食を食いはじめたとき以来だぞ。


「そーいやオメーこのKH400(ケッチ)ドコで手に入れたンだ?」


 マッハクンがスカーレットのバイクを指差す。


 彼女はファンタをラッパ飲みして口を拭った。


「拷死苦の奴に『よこせ』ッつッたらウダウダいいやがったっけェ、ボゴってそのまま乗ってきた」


「免許はどーしたヨ」


「ンなモンねーよ。警察《マッポ》来たらブッチギッから」


 いまの会話だけで複数の違法行為が含まれていたわけだが、おわかりいただけただろうか。


「ケッチッつッたらヨォ――」


 フブキがハイチュウを口に放りこむ。「むかしは『マッハ』ッつッたんだヨ」


「へー、そーなンかヨ」


「マッハの親父が750(ナナハン)のマッハ乗りでヨ、そんで息子にマッハって名前つけたンだと」


「ンじゃ、オメーもいつかソレ乗るンかヨ」


 スカーレットがたずねると、マッハクンは苦笑した。


「マッハがマッハ乗るってなんか変だベ。もし大型取っても、オメーらにイジられッから俺《オリ》ャー絶対《ゼッテー》乗ンねー」


「マ、18ンなったら四輪だベナ、俺らもヨ……!?」


 ナイトが空になったコーラのペットボトルを投げあげる。


 駐車場に入ってきたトラックのヘッドランプが、俺たちを囲むように停めてあるバイクのマフラーを鋭く照らした。


 俺たちは何となく黙りこんだ。


 コンビニの看板が高い柱の上から俺たちを見おろしていた。


 星なんか見えなくて、県道の車がそれなりに個性的な残像を目に焼きつけて流れ去る。


 空気は蒸し暑いのにケツの下のアスファルトは冷たくて、居ても立ってもいられない気がした。


「ちッと15号《ゴオ》流してから帰《ケ》ーンベ」 


 立ちあがるリコに、


「おう」


 俺もつられて立ちあがり、旗を担いだ。




 羅愚奈落と悪糾麗《ワルキューレ》、そして独立愚連隊拷死苦は県道を走った。


 まあ多少はうるさいが、暴走ってほどではない。異世界での走りとくらべたらおとなしいものだ。


 北上して雫原《しずくはら》南《みなみ》交差点に差しかかる頃、前方に青い光が見えてきた。


「オイ、アリャーまさか……」


 俺たちが異世界に行くとき見るのと同じ光だ。


 その中から1台のバイクが飛びだしてきた。

 

「あれ? ヒロヤサンじゃン」


 リコが声をあげる。


 俺たちの前に現れたのは唯愚怒羅死琉《ユグドラシル》のナンバー2だった。


「オオ、リコチャンかヨ」


 ナンバー2が俺たちと並んでバイクを停める。


「ヒロヤサン、ひとり? どおしたの?」


「それがヨ、ミルホートの城が黒《こく》死《し》卿《きょう》の軍隊に襲われてンだヨ」


「ハァッ……!?」


「この間のドリッジ砦《とりで》とは別の方角から来やがった。高瀬クンも戦ってンだけど、なにしろ数が多いかンヨ」


「ンで、なんでヒロヤサンココにいンの?」


「応援呼べって高《たか》瀬《せ》クンにゆわれてヨ。リコチャンも出てこれるヤツ呼びだしてくンねーか?」


 ナンバー2は俺たちの方を見た。「羅愚奈落も、頼むゼ。連絡まわして単車《ゲタ》あるヤツ集めてくれ」


 マッハクンは一度俺たちをふりかえり、またナンバー2に目を向けた。


「悪《ワ》リーがソリャームリだナ……!?」


 彼のことばにナンバー2が顔色をかえた。


「アァ……!? こんなトキに下《ゲ》克《コク》上《ジョー》カマしてンじゃねーゾ……!?」


 マッハクンは一度エンジンを吹かす。


「連絡なんざァまわしてるヒマねーヨ……!? 俺らァいまからソッコーでその戦場に特攻《ブッコ》むかンヨ……!?」


「オウヨ」


 フブキが笑いだす。「敵ァ多けりゃ多いほど伝説だベ……!? 行くッかねーヨ……!?」


「早く異世界《アッチ》行かしてくれヨ……!? 敵《エモノ》が減っちまうだろーがヨ……!?」


 ナイトが櫛《くし》で髪をビシッと分ける。


 あ~、やっぱこういう流れになりますか……。


「あーしも行くヨ……!? 黒死卿とは落とし前つけなきゃなンねーかンヨ……!?」


 スカーレットが舌なめずりする。


「悪糾麗、シャワーの前にもッぺん血《チ》飛沫《シブキ》浴びンゾ……!?」


 リコの号令に悪糾麗が「オウヨ」と声をそろえる。


「ッたくヨォ……このラリ坊どもは俺じゃ止めらンねーナ……!?」


 ナンバー2は頭《かぶり》を振った。


「オッシャ、出《デ》ッ発《パツ》だァ!」


 俺たちは急発進してやがて青い光に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。