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夜露死苦! 異世界音速騎士団"羅愚奈落" ~Godspeed You! RAGNAROK the Midknights~  作者: 石川博品
第4突堤 百機夜行 "拷死苦" 侵略すること死の如し!
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4-2 城……!?

 土曜日の昼さがり、俺たちは唯愚怒羅死琉ユグドラシルの案内で異世界へと転移した。


 雫原しずくはらみなみ交差点そばで時速150kmを超えると、この前(たか)とタイマンした荒野に出た。


「あれがミルホート城だ」


 高瀬が岩山にへばりつくような形で建っている城を指差す。


「あッこに王様住ンでンかヨ。王様とかいままで会ったトキねーから緊張すンナ」


 マッハクンがいう。


 羅愚奈落ラグナロクは今日、高瀬の仲介で王様に謁見えっけんする予定だ。全員特攻服でキメている。


「カズ、おにぎり持ってきたから食えヨ……!?」


 俺のとなりにいるリコが弁当箱を差しだしてくる。


 なぜか誘ってもないのに悪糾麗ワルキューレの面々もついてきていた。


「遠足気分でいンじゃねーゾ、コラ……!?」


 フブキがリコをにらみつける。


「アァ……!? 腹が減ってはイクサもできねーだろおがヨ……!?」


 リコはバイクから身を乗りだしてにらみかえす。


 フブキがバイクを降りて彼女に迫る。


「アァ……!? じゃあ腹減ってるウチは戦できねーッつーンかヨ……!?」


「腹減ってんならアタシのおにぎり食えや……!?」


「中身何だヨ……!?」


「おかかだヨ……!?」


「おかかッつッたらウチがイッチャン好きなやつじゃねーかヨ……!?」


「じゃあ食えヨ……!?」


 リコが弁当箱を差しだす。


「食うヨ……!?」


 フブキはおにぎりをひとつ取って頬張った。


「どおヨ、コラ……!?」


「うめーよ、コラ……!?」 


 このふたり、本当は仲いいんじゃないのか……?


 唯愚怒羅死琉に羅愚奈落ラグナロク、悪糾麗を加えた200台超のバイクが移動をはじめる。巻きあがる土煙で前が見えなくなるほどだ。


 俺たちが城の門に近づいていくと、通行していた人や馬が目を見張り、道を空けた。


 岩山を利用しているだけあって、門の中には平坦な部分がほとんどない。俺たちはバイクにまたがったまま急な坂をのぼっていった。


 城主の居館前に小さな広場があったが、3つのゾクが停めたバイクですっかり埋まってしまった。


「ユグドラシル騎士団、ラグナロク騎士団、ワルキューレ騎士団がかっに拝謁すべく、参上いたしました」


 玄関の中にいた召使が先触れとなって俺たちの到着を告げる。


「ラグナロク騎士団だってヨ」


 マッハクンがナイトやフブキと顔を見合わせて笑う。


 俺たちは広間に通された。


 奥の方に玉座・・ってほどではないが、明らかに偉そうな椅子があって、ヒゲのおっさんが座っている。


「鉄車の騎士たちよ、よくぞ参った。私がミルホート城主エナン・オールトンである」


 偉そうに挨拶あいさつしてくる。


 高瀬の話では「王様」ということだったが、どうも王ではなさそうだ。


「オウ、どーヨ……!?」


 高瀬はいつもの調子で声をかける。


 いるんだよね、異世界のお偉いさんにタメ語でいっちゃう奴。


「各地で魔王軍の動きが活発になっているとの報告が寄せられておる」


 このオールトン公とやらはあんまりタメ語とか気にしない人らしい。


「俺らも毎日マインチは来れねーかンヨ、そっちもビッとしろヨ……!? 俺らァ魔王絶対(ゼッテー)だかンヨ……!?」


「うむ。ともかくも、こうしてあらたに鉄車の騎士団がふたつ、我がもとに参じてくれたことは心強く思うぞ」


 オールトン公は壁際に立っていた女性陣を手招きした。彼女たちはぞろぞろと公のそばにやってくる。


「ささやかだが歓待のうたげを持ちたいと思う。我が娘たちは異国の話を聴くのが好きでな」


 あれ全部娘さんかあ……。


 右からゴリラ、ゴリラ、アンドゴリラ。後列右からゴリラ、ゴリラ、ゴリラフォーエバー……。


 全員もれなくゴツい。


 そろそろ異世界に出会いを求めるのはまちがっていると断言してもいい時期に来ていると思うよ俺は。


 そのまま、なしくずしにゲリラ的ゴリラ合コンが開かれようとしていたそのとき、広間にかっちゅうを着た男が駆けこんできた。


「ご報告いたします! ドリッジとりで陥落かんらくいたしました!」


「何ッ!」


 オールトン公は驚きのあまり立ちあがった。「砦を預かるロイ・スターナーは歴戦の勇士。それを破るとはいったい何者だ」


「鉄の車の騎士たちに率いられた化け物どもでございます。彼らはこく連合れんごうを名乗っております」


 鉄の車……。


 てことは暴走族か?


 それがモンスターといっしょにいるということは、魔王と手を組んだということか。いくらDQNでも魔王と手を組むのは一線越えちゃってるだろ。


「黒死連合って聞いたトキあるか?」


「いや、ねーナ。県外のヤツらじゃねーか?」


 マッハクンとナイトが額を寄せあっている。


「あの砦は北の守りのかなめ。急ぎ奪還せねばここも危ない」


 オールトン公が部下たちに出撃の準備を命ずる。


 そこへ高瀬が進みでた。


「オウ王様ァ、ドーグ持ってこい……!?」


「おおっ、そなたも力を貸してくれるか」


「魔王とつるンでるよーなシャバ僧にゃヤキ入れてやンねーとナァ……!?」


 高瀬はふりかえり、部下たちに号令をかける。「唯愚怒羅死琉、パツだァ!」


「悪糾麗も続くヨ……!? オメーらビッとしろ……!?」


「先陣切ンのは俺ら羅愚奈落だァ! 気合入れてくンで夜露死苦ヨロシクゥ!」


 広間が騒然とする。まるっきり暴走族の集会だ。


 明るいうちから集まっても結局こうなるんだよな……。もっとゲームするとかBBQするとかサポありJCのふりして出会いちゅうを心霊スポットに誘いだすとか、そういう健全な遊びをしようぜ。


 族のみなさんが続々と広間をあとにしていく。俺はいまさらながらゴリラ合コンがごり惜しく思われて、城主の娘たちの方を何度もふりかえった。

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