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夜露死苦! 異世界音速騎士団"羅愚奈落" ~Godspeed You! RAGNAROK the Midknights~  作者: 石川博品
第4突堤 百機夜行 "拷死苦" 侵略すること死の如し!
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4-1 魔王……!?

第4突堤(ヨントツ) ひゃっぎょう "拷死苦(ゴシック)" 侵略すること死のごとし!




 たか海樹かいじゅとのタイマンから1週間。


 俺は平和にすごしていた――リコから来る異常な数のLINEメッセージを除いては。


 なんであの人はあんな話すことがあるのかね。


 しかも5分くらい放置したらすぐ「どうしたの?」って来るし。


 自撮りもそんなに送ってこなくていいよって話だ。ろうが白く飛ばそうがどれもいっしょだよ。たまにはエロいのでも送ってこい。


 ……まあそんなことはブン殴られるのでいえないわけだが。


 学校内も平和だ。


 期末試験も近いのだからもうちょいピリピリしてもいいんじゃないかと思うが、まあ争いがないのに越したことはない。


「オウ、便所行くベ……!?」


 ある平和な休み時間、マッハクンから連れションのお誘いがあった。


「うん、行こう」


 残念ながらこの学校の便所はあんまり平和じゃないので、マッハクンのようなボディガードがいるとたいへん助かる。


 廊下に出ると、何だか様子がおかしかった。


 ふだんはオラついて歩いている連中が、いまは両側の壁に張りついて気をつけをしている。


 ぽっかり空いた廊下の中央を1人の男がのしのしとやってくる。そのうしろから集団がぞろぞろとついてくる。


「何だアリャー」


「院長先生の回診かな?」


 集団がやってくると、壁の男たちは、


「チ、チィーッス!」


「チィワウッス!」


 声を張りあげ、深くお辞儀する。


 ま~たおかしなイベントがはじまった、と思いつつ見ていると、集団が俺たちの前まで来て止まった。


「オウ、どーヨ……!?」


 集団の先頭にいたのは高瀬海樹だった。


 ということは、うしろに従えているのは唯愚怒羅死琉ユグドラシルの面々か。


「ッゾ、オォッ……!?」


 マッハクンがブチキレて高瀬をにらんでいる。


 なぜこの人は出会い頭にここまでキレられるのか。


「ッかヨ、アァッ……!?」


 高瀬もそれに呼応して声を荒らげる。


「まあまあまあまあ」


 俺はふたりの間に割って入った。


 壁際の1年生がざわめきだす。


「オオッ、アレがうわさの山岡和隆やまおかかずたかかヨ……!?」


「高瀬サンとマッハクンがブチキレてンのにカジュアル気分で間に入ったゾ……!?」


「やっぱアイツ只者タダモンじゃねーナ……!?」


 マッハクンは俺の顔を見て多少冷静さを取りもどしたようだった。


「1年の教室に何の用ヨ、大将……!?」


 高瀬はサングラスをずらし、俺たちを見つめる。


 この人、校内でもグラサンしてんのね。


羅愚奈落ラグナロクに伝えてーコトがあってヨ……!?」


「アァ……!? 何ヨ……!?」


「オメーら、今週の土曜ヒマか……!? ヒマなら俺らと来い……!?」


「なんでオメーらと行かなきゃなンねーンだヨ……!?」


「俺の世話ンなってる王様ントコにヨ、魔王の軍勢が攻めてきてるらしいンだわ。そんで腕におぼえのあるヤツ連れてこいッつーからヨ、オメーらどーかと思ってヨ……!?」


 魔王……やっぱいるのか……。


 俺は前にいた異世界で魔王を倒したが、もうああいうのはご免こうむりたい。いくらチートキャラでもそれなりの規模の組織を相手にするのはキツいのだ。


「王様だの魔王だの、俺らにゃ関係ねーヨ……!?」


 マッハクンはまだキレている。


「何だ……!? ビッてンかヨ……!?」


 高瀬がクスッと笑った。


「アァ……!? ビッちゃねーヨ……!?」


「じゃあ俺らと来い……!? 王様と顔つないどくだけでもイイコトあるかンヨ……!?」


 そういうと高瀬は俺たちに背を向け、行ってしまった。唯愚怒羅死琉もぞろぞろと帰っていく。壁際に避難していた1年生たちがほっとため息をついていた。


 マッハクンは高瀬たちの背中をにらみつけていたが、やがて俺の方を見た。


「魔王の軍勢だってヨ。どんな奴らだベナ。早く見てみてーナ」


「なんだよ。楽しみなんじゃん」


 俺は拍子抜けして笑ってしまった。


「そりゃそーだろーがヨ。せっかく異世界行くンだから魔王とか見てーべヨ」


「なるべくなら会わない方がいいと思うけどなあ」


「魔王倒して異世界統一すンベ。関東統一とどっちがたいへんだろーナ」


「どっちかなあ」


 彼と連れだってトイレへ歩きながら俺は、元いた異世界について考えていた。


 あそこで俺は魔王を倒したが、統一なんてことは思いつきもしなかった。そういうのは現地の王様たちにまかせりゃいいと思っていた。でもマッハクンがいうみたいにあの世界を統一してそのまま住みつづけるって選択肢もあったんじゃないだろうか。この世界にもどらずに……。


 俺は3年生が去って1年生がオラつきだした廊下を、マッハクンの陰に隠れるようにして歩いた。

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