3-7 パツイチ……!?
唯愚怒羅死琉の先導で俺たちは異世界へとワープした。
転移した先はだだっ広い荒野だ。
草もろくに生えてなくて、風が吹くと土煙が舞う。
近くに岩山があって、その斜面を利用して城が築かれていた。かなりしょぼいが、羅愚奈落のシマである村とくらべるとはるかに大きいので、この世界では割と大都市なのではないだろうか。
俺たちがここに着いてからも続々と唯愚怒羅死琉の増援がやってくる。彼らが集まってバイクの輪を作った。これがタイマンの舞台だ。
「行ってくる」
俺はナイトのうしろから降りて輪の中央へと向かった。
「オウ、高瀬ブッ潰して伝説作ってこい……!?」
「絶対オメーならやれるゼ……!?」
「もしやばくなったらウチらが助けに行くかンヨ……!?」
羅愚奈落の声援が俺を後押しする。
何だろうな、この感じ……。こんなに人から信頼してもらうのって生まれてはじめてかもしれない。相手がDQNじゃなかったらよかったのにな……。
リコはあのあと呼びだした悪糾麗の面々とともに黙ってこちらを見つめている。もし俺が高瀬海樹をボコボコにしたら彼女は俺に襲いかかってくるだろうか。
「オウ、はじめよーゼ……!?」
高瀬がシャツを脱ぐと、腹にサラシが巻いてあった。
どんな高校生活送ってたら制服の下にサラシ巻くって発想が出てくるんだよ……。
こちらに向かってくる彼は筋骨隆々で、なかなかの殺気を放っている。
それでも負ける気はしないが、一応相手の力を測っておこう。
「解析!」
タカセ カイジュ
Lv 10
HP 260
MP 118
ATK 154
DEF 236(+4649)
INT 112
AGI 147
LUK 189
KIAI 0
出たな、「KIAI」。
今度は防御力にボーナスか。
ということは、多少強めにブン殴っても平気そうだ。
「オラァッ!」
間合いに入った高瀬が大振りのフックを放ってくる。
俺はそれをやすやすとかわし、相手の腹にパンチを叩きこんだ。
「オッゴォォォォッ……」
高瀬は腹を押さえて倒れてしまった。
こりゃ当分動けないな。
ギャラリーがざわつく。
「ウ、ウソだベ……!?」
「総会長が一発で……!?」
「あの野郎トンデモネー剛腕だゾ……!?」
これで終わりかと思って見ていると、高瀬はよろよろと起きあがった。
「全然効かねーナ……!?」
「そうこなくちゃ」
俺は手招きしてみせる。
高瀬がまたパンチで攻めこんできた。
俺は軽くかわして今度は相手の太腿を思いきり蹴った。
「ウグォッ……」
高瀬が膝を突く。
いまのは骨が逝ったかもしれない。
俺はリコの方を横目で見た。彼女は胸の前で手を合わせ、祈るような格好で戦況を見つめている。
ここはひとつ、残虐ファイトで彼女に嫌われるよう仕向けるとするか。
俺は立てずにいる高瀬にタックルを仕掛けた。押したおしてマウントを取り、ボッコボコに殴る。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオ(ゴホッ)……オラァッ!」
これ実際口にしてみると息が切れるね。
しばらく続けていると、相手の顔も俺の拳も血まみれになった。
さすがに我ながらドン引きで、攻撃を止める。
「フッ、口ほどにもなかったな」
俺は立ちあがった。
「ク、クソがァ……」
腫れあがった唇の隙間から力ない罵声が漏れる。
「ス、スゲエ……」
「あの高瀬をノーダメで……!?」
「さすがカズだゼ……!?」
羅愚奈落の面々が騒いでいる。
これだけやれば高瀬もこれ以上俺に構おうという気は起きないだろうと思い、ふと顔をあげると、そこには武器を手にした荒くれ集団が迫ってきていた。
「ッダラァッ、総会長の仇じゃアッ!」
「テメー唯愚怒羅死琉の標的だゾ、コラァッ!」
「生きて元の世界にもどれると思うナヨ……!?」
うわあ……今度はコイツらが相手か。王我伐闘流よりも人数が多いから骨が折れそうだ。
そこに高瀬が立ちはだかる。
これは「一対一の勝負に割りこむんじゃねえ!」と一喝してくれるパターンだな――そう思っていたら、高瀬は部下でなく俺の方を向いた。
「悪リーナ、カズ……!? タイマンッつッたけどヨ、ありゃナシだ。俺ャー唯愚怒羅死琉の看板背負ってッかンヨ、どんな手を使っても負けるわけにゃーいかねーンだ」
「は?」
そんなんアリかよ……。やっぱDQNって信頼できねーわ。
俺は全員を相手にすべく身構えた。
だが高瀬は俺に襲いかかろうとする部下たちを手で制する。
「ヒロヤ、アレ持ってこい」
「ア、アレを……!? 高瀬クン、アリャヤベーだろ」
組織のナンバー2らしき男が顔を引きつらせる。
高瀬は彼の胸ぐらをつかんだ。
「総会長命令だ……!? 2度ゆわせンじゃねーゾ……!?」
「わ、わかったヨ……」
アレって何だ……? まさか……俺が中2のときにやってた某アニメキャラ(♀)なりきり垢のログか……? アレ出されたらもう切腹して果てるしかねーぞ。
ナンバー2が何か筒のようなものを高瀬に差しだす。
あれは……巻物?
そこに俺の恥ずかしいツイートが記されていたとして、それを高瀬が読みあげるっていうんなら、精神的ダメージで相打ちになるんじゃないかと俺はぼんやり考えていた。




