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夜露死苦! 異世界音速騎士団"羅愚奈落" ~Godspeed You! RAGNAROK the Midknights~  作者: 石川博品
第3突堤 殴拳神樹 "唯愚怒羅死琉" 止められるか、俺たちを!
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3-6 本性……!?

「カズ、オメー、気に入ったゼ……!?」


 たか海樹かいじゅはそういって俺の肩に腕をまわした。


 なぜだ……。


 このDQNの権化のようなお方が俺のような真面目ボーイを気に入るはずなどない。


 高瀬海樹は妹・リコの方にあごをしゃくる。


「アイツはむかしッからヤンチャだったかンヨ、どーせしょーもねーチンピラとつきあうモンだと思ってた。でもオメーみてーな真面目な奴が彼氏だってゆーンで、オリャー安心したゼ……!?」


 マジか……。


 真面目アピールが逆効果だったとは……。


「リコのこと夜露死苦ヨロシク頼むゾ……!?」


 彼は俺の肩を叩いて身を離す。去り際にマッハクンたちにも声をかける。


「オメーらもナ……!? 何かあったら俺んトコゆってこい……!?」


 そのことばにマッハクンたちは毒気を抜かれたような顔をしていた。


 マズい……。


 リコとの交際に完全な太鼓判をされてしまった。


 このままじゃアイツから離れられなくなる。


「オウ、待てやコラァ!」


 俺は高瀬海樹の背中に向かって怒鳴った。


「アァ……!?」


 高瀬海樹は鬼の形相でふりかえった。


 唯愚怒羅死琉ユグドラシルのみなさんもこちらに目を向けてくる。


「うちの総会長アタマにタメ口きくとはイイ度胸じゃねーのヨ、ボクゥ……!?」


「つけあがるンじゃねーゾ、小僧……!?」


「リコチャンの彼氏ッつッてもケジメってモンがあるからヨォ……!?」


 怖いけど、ここで引くわけにはいかない。


 真面目キャラがダメならゴリゴリのDQNキャラで攻める!


「誰がシャバ高の出木杉英才だとコラ。勝手なことヌカしてんじゃねーぞ」


 俺は手をポケットにつっこみ、高瀬海樹をにらみつける。


 マッハクンたちが心配そうに俺を見つめる。


「バッカ……サベーって」


「カズのスイッチ入っちまったヨ……!? こーなったらタダじゃ済まねーゾ……!?」


「つーか出木杉って下の名前『英才』ッつーンかヨ……!?」


 高瀬海樹が俺に迫ってくる。


「オイオイ、何の発作だ……!? 真面目クンがヨ……!?」


 俺は無理して笑顔を作った。


真面目クン(・・・・・)だァ……? 毎日ソシャゲ気分でオレオレ詐欺さぎはたらいてる俺のどこが真面目なんだ?」


 唯愚怒羅死琉の面々がざわつく。


「コ、コイツSSR級のワルだゾ……!?」


「コレもうゾクハンチュー超えてンベ……!?」


「うちのバーチャンの年金カスメやがったンもコイツかヨ……!?」


 高瀬海樹は歯ぎしりをしながら俺をにらみつけた。


「テメー、俺の前で本性隠してやがったンかヨ……!?」


「あんたを試したんだよ。でっかい族の総長だから、さぞかし人を見る目があるんだろうと思ってな。まあ、見事にだまされたわけだが」


「このクソがァ……! よくもチームの前でこの俺に恥をかかせてくれたナ……!?」


 高瀬海樹はサングラスをはずす。「タイマン張れや……!?」


「いいだろう。異世界ムコウガワに来い」


「テメーは片道切符だかンヨ……!? 行く前に身辺整理しとけヨ……!?」


「そっちこそな。遺書の書き方、ネットで調べとけ」


 俺のことばに、高瀬海樹はひときわキッツいガンをくれて店を出ていった。


 その部下たちが騒ぎだす。


「オウ、人数集めろ……!?」


「全支部に連絡まわせ……!? 総会長のタイマンだってナ……!?」


「俺らもドーグ用意すンゾ……!?」


 みんなでスマホをいじりながら駐車場に向かう。早くもバイクに乗ってどこかへ走りさる者もいる。


 羅愚奈落ラグナロクのみなさんはというと、意外にも余裕の顔つきだ。


「派手なケンができそうだナ……!?」


 マッハクンが掌に拳を打ちあてる。


「向こうは200人だから、ウチら1人当たり50人やっちまえばいいわけだ……!?」


 フブキが舌なめずりをする。


「唯愚怒羅死琉ツブしてシャバ高統一だァ」


 ナイトがくしで髪をビシッと分ける。


 うーん……やっぱこの人たち、頭のネジが100本単位で飛んでんな。


 俺はこの喧嘩をどういう流れに持っていくか考えていた――相手をボコボコにすればいいのか、逆にやられたふりをすればいいのか。


 どちらがリコから愛想尽かされるのに適切なのか。


「カズゥ――」


 そのリコがこちらに歩みよってきた。「タイマンなンてやめときナ……!? いくらアンタでもうちのお兄ちゃんには勝てねーヨ……!?」


 これは……兄の必勝を信じているようだな。てことは、ボコボコにしちゃえばドン引きまちがいなし。俺のことも嫌いになってくれるだろう。


「こっちのことよりお兄ちゃん(・・・・・)の心配をした方がいいんじゃないのか?」


 俺がいうと、リコはキッと俺をにらみつけた。


 あれ? これ殴られるパターンか?


 だが彼女は動かない。下唇を噛み、表情に怒りとはちがった色をにじませて俺をにらみつづける。


「マジどおなっても知ンねーかンナ……!?」


 そういうと、身をひるがえして外へと飛びだしていった。


 その背中を見送りながら、俺は不思議な心の痛みに襲われていた。


 おかしいな……。彼女とは別れたいはずなのに……。


「オーシ、羅愚奈落()パツだァ」


 マッハクンの号令で羅愚奈落の3人が歩きだす。俺はうつむき加減に彼らのあとを追った。

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