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夜露死苦! 異世界音速騎士団"羅愚奈落" ~Godspeed You! RAGNAROK the Midknights~  作者: 石川博品
第3突堤 殴拳神樹 "唯愚怒羅死琉" 止められるか、俺たちを!
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3-4 ドリンクバー……!?

 リコと2ケツで県道を走る。


「もっとしっかりつかまってろヨ……!?」


 彼女に腕をひっぱられる。俺は彼女の腰にまわす手にこころもち力をこめた。


 ナイトのケツに乗っているときとはちがって、あまり密着できない。


 彼女の制服のシャツが風をはらんで膨らむ。赤信号で停車すると、汗で張りつき、濡れた生地にブラジャーのピンクが浮かびあがる。

 

 目のやり場、手の置き場に困ってしまう。


 となりの車線を走る羅愚奈落ラグナロクの面々が冷やかすように笑いながらこちらを見ている。


「カズ、オメー夏休み何かバイトすンのかヨ……!?」


 リコがエンジン音に負けない大きな声でいう。


 そうか……こっちの世界にもどってきたばかりだけど、もうすぐ夏休みなんだな。


「そういう予定はないけど」


 俺も怒鳴るような声で返した。


「じゃあヨ、うちのコオテンでバイトしろ……!? パパにもゆっとくかンヨ……!?」


「はい?」


 パパ出てきちゃったよ!


 それに工務店のバイトって何だ? めっちゃキツそうなんだが。はじめてのバイトは『君の名は。』みたいなおしゃれなレストランと決めてるのに。


「いまの内から現場出てカネ貯めとけば、高校コオコオソツギョオしたあとですぐアパートとか借りれンベ……!?」


「えっ……?」


 何これ……知らぬ間に人生のレール敷かれちゃってんじゃん。しかも終着駅めっちゃ近場じゃん。リコと仲良くゴールインじゃん。


 東京の大学に行って不思議系サブカル女子とおつきあいするっていう俺の夢はどうなっちゃうの?


 赤信号に捕まってバイクが停まる。リコがふりかえると、その背中が俺の胸に押しつけられた。


「何ヨ、オメーショオライのコトとか考えてねーンかヨ……!?」


「うん……まだそこまでは……」


「ハァ……!? イツまでもガキじゃねーンだゾ……!? ビッとしろ……!?」


 俺、いままで黙ってたけど、この人たちのいう「ビッとする」の意味がわからない。


 信号が青にかわる。リコが前を向き、またハンドルを握る。彼女の背中の残したすこし湿ったような感触が、走りだしたバイクの向かい風で冷たかった。 




 ファミレスの駐車場で俺たちはバイクを降りた。


 テーブルにつき、ドリンクバーを注文する。


 各自飲み物を取ってきたら、まったく会話がなくなってしまった。


 まあ唯一の接点がけんだから仕方ない。


 そしてその接点のど真ん中にいるのが俺だ。


 ここは俺が話を振るしかないのか。


「ブリ商には他にもゾクがいるのかな」


 俺がたずねると、リコは噛んでいたストローを放した。


一等イットオ有名なのは悪瑠帝魔餓奔アルテマウェポンかナ」


「オオ、アリャーデケートコだヨナ」


 マッハクンがコーラの氷をガリガリかじる。


「支部入れたら100人くれーいるかンナ。あとは乱須狼闘ランスロットもデケーナ」


「あッこはむかしッからあるトコだベ」


 ナイトがアイスコーヒーをすする。


「でも最近はたいしたコトねーけどナ」


「レディースはねーんかヨ……!?」


 フブキがガンくれながらいう。


「アァ……!?」


 リコもにらみかえす。「レディースッつッたら爆悪蔑愛怒バックベアードの親衛隊やってる美火瑠堕ビホルダーぐれーかナ。まあうちらは眼中にねーけど」


后瑠轟音ゴルゴーンはどーヨ」


 ナイトがいうとリコはストローを噛みしめた。


「悪糾麗は后瑠轟音ゴルゴオン絶対(ゼッテー)だかンヨ……!? うちの初代から、あッことはずっと抗争コオソオしてッから」


 この街ってこんな暴力や憎しみに満ちた場所だったっけ……。


「シャバコオホオはどおヨ」


 今度はリコがたずねる。


王我伐闘流オウガバトルって知ってッか?」


 マッハクンがいう。リコはわずかに唇をとがらせた。


ソオチョオが赤モヒカンのトコだベ? 確かざきッつッたっけェ。けっこおなトオだヨナ」


「あッこは俺らがブッチメて舎弟にしたかンヨ」


 それを聞いてフブキが吹きだす。


「何ゆってンのヨ。アレやったンはほとんどカズだろーがヨ」


「あんときのカズはバッキバキにラリってやがったナ。全員倒したあとで一発パツイチで回復して、そんでまたボコボコにした。それを全部ひとりでやっちまうンだからヨ」


 ナイトのことばに、リコが目を丸くする。


「アイツらをひとりで……? マジかヨ……」


 彼女の視線をまっすぐに浴びて、俺は生まれてはじめて「目がハート」というのがどういう状態なのかを知った。


 コイツ確実に俺のこと好きだな。リスペクト&ラブの色が瞳に浮かんでいる。


 こういうの、もっと別の機会・別の相手で気づきたかった……。


 飲み物のおかわりを取ってきたマッハクンが席につく。


「うちには他にも塔折禽トールキンとか虞痢腑胤弩折グリフィンドールとかいるけどヨ、マアイッチャンデケーのは――」


 彼のことばをかきけすように、いままで聞いたこともないような爆音が店の外から響いてきた。

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