3-3 友情……!?
羅愚奈落の面々がバイクを押しながらこちらにやってきていた。
「オウ、コルァ……!? テメーまた来やがったンかヨ……!?」
フブキがリコをにらみつける。
サンキュー、俺の助け舟!
ていうか、この学校の助け舟ってどれも海賊レベルで荒っぽいな……。
「アァン……!? オメーにゃ関係ねーだろおがヨ……!?」
リコもフブキにガンを飛ばす。
「ハハッ、モテる男はツレーナァ、カズゥ……!?」
「オメー、ソッコーで帰ろうとしたンはコレのためかヨ……!?」
マッハクンとナイトが笑う。
この状況、一見修羅場だが……使えるぞ。前の異世界じゃ何度もピンチをチャンスにかえてきたんだ。
俺は至近距離でにらみあっているリコとフブキの間に割って入った。
「ファミレスに行ってもいいが、ひとつ条件がある」
「アァ……!? 何ヨ……!?」
リコは怪訝そうな顔をする。
「羅愚奈落のみんなもいっしょに行く――それが条件だ」
「アァ……!? コイツらと……!?」
「俺は女よりも友情を取るタイプでね。そこを理解できない女とはつきあえないな」
はいこれ、女性に一番嫌われるタイプね。デートに友達連れてくるとか最悪でしょ。
「カズ、オメーさすがにそりゃダメだろ……!?」
フブキは同じ女性としてドン引きである。
「カズ、オメーってヤツは……」
「オメーみてーに熱チー男は見たトキねーヨ……」
なぜかマッハクンとナイトには俺のセリフが響いてしまっていた。
「カズゥ、テメーヨォ……!?」
リコに正面からにらまれる。
これで嫌われて縁が切れるというなら1発殴られるくらいは仕方ない。俺は目をつぶり、歯を食いしばった。
だが、どういうわけか肩に手を置かれ、揺さぶられる。
「やっぱオメーはアタシの見こンだとおりの男だナ……!?」
「はい……?」
「友達を大事にしねー男はサイテーだかンヨ……!? もしオメーがコイツら置いてくってゆってたら、いまごろボゴリ入れてたトコだヨ……!?」
「マジっスか」
あっぶねー。そっちの選択肢がアウトなのかよ。「人間到るところ青山あり」とはまさにこのことだな。
「オウ、オメーはアタシのケツ乗れヨ……!?」
リコがバイクのエンジンをかける。
2人乗りか……これも危険だな。何かの拍子にご機嫌を損ねてしまえば、肘打ちによる強制下車でアスファルトの染みとなる未来が待ちうけていそうだ。
「俺はナイトのケツに乗るよ。いつもの席だからな」
そういって羅愚奈落の方へ向かって歩きだした。
だがリコに腕をつかまれる。
「アァ……!? アタシのケツ乗れねーッつーンかヨ……!?」
「いや、乗れないというわけでは……」
「アタシのCBRに乗るはじめての男にしてやろおッつッてンのにヨ……!?」
「いや、はじめてといわれましても……」
まずいぞ……。このままじゃ断りきれない。
このとき、俺の中に眠っていたパッシブスキルが自動的に発動した――「幼児退行」!
「ヤダァァァァァァァァァァッ!」
俺は地団駄を踏み、リコの手を振りほどいた。「ナイトのケツがいい! ナイトのケツでなきゃイキたくないのボクチンは!」
「カズ、オメーって奴は……」
「コイツ友情の制限速度ブッチギッてやがンゾ……!?」
マッハクンとフブキがドン引きしている。
「お、俺の単車、今日調子ワリーかンヨ。オメーそっち乗れ……!?」
ナイトはあわててエンジンをかけ、逃げるように走っていってしまった。
俺の何がいけなかったのか。
「グダグダいってねーで早く乗れヨ、カズゥ……!?」
リコにガッツリにらまれる。
俺は仕方なく彼女のうしろに乗った。




