3-1 待ち伏せ……!?
第3突堤 殴拳神樹 "唯愚怒羅死琉" 止められるか、俺たちを!
土曜日の王我伐闘流および悪糾麗の襲来というワンナイトDQNカーニバルを生きのび、週明けの高瀬莉子アポなし訪問という突発イベントもクリアした俺は、火曜日、ソッコーで家に帰ることにした。
羅愚奈落の面々とも顔を合わせたくない。
6時間目、授業が終わって先生がチョークを片づけるのよりも早く教室を出る。
誰もいない廊下を走り、靴を履きかえて、校門に到達する。
「よし、逃げきった」と思った瞬間、俺の耳が異音をとらえていた。
改造を施されたバイクのエンジン音。
これ、聞きおぼえがあるな……。
俺もそのうちマッハクンたちみたいに利きバイクができるようになるんじゃないか?
校門の外をそっとのぞいてみる。
するとまあ、予想どおりいたね。
高瀬莉子が。
例のピンクのバイクにまたがり、シャバ高の校舎をにらみつけている。
何が彼女にあれほど恐ろしい表情をさせるのか。うちの学校を建設するときに故郷の森を破壊されてしまったのか?
ただ、改めて見てみると、彼女はやっぱりかわいい。
顔だけでいうと100点満点の100点だ。
先日、ひょんなことからおっぱいを見てしまったが、大きいうえに形もきれいで、これも100点だ(もっとも、おっぱいという時点で99点以下がつくことはないのだが)。
ただ、内面はもう○○点ではなく「TNT火薬○○t相当」といった単位で表現せざるをえない。完全な危険人物である。
校門から出ていったら確実に捕まってしまうので、別のところから帰ろう――
そう考えてまわれ右したそのとき、
「オウ、何やってんのヨ、カズゥ!」
俺の名を呼ぶ者があった。
同じクラスの吉本が昇降口から唾を吐き吐きやってくる。
「ちょっと……静かに」
俺は人差し指を口に当てた。
「アァ? 何ヨ……!? いっしょに帰-ンベ……!?」
吉本は俺の肩を抱く。
「いや、ちょっとそれは……」
ひきずっていかれそうになり、俺は予防接種を嫌がる猫ちゃんのごとく足を踏んばって抵抗した。
「ど-したンだヨ……!?」
「いまここから出るのはまずい」
「アァ……!? 何だヨ、警察にでも張られてンかヨ……!? わかった。オメー、コンビニ強盗でもしたンだベ……!?」
いやいや……コンビニ強盗やらかして平気な顔で学校来るバカいるかよ。どんな世界観してんだコイツは。
「ンじゃ、俺が外の様子見てきてやンヨ」
吉本が門柱の向こうに首を伸ばす。
コイツ、意外といい奴なんだよな。あとは世界観さえちゃんとしてくれればな。
「オオッ、何ヨあのゲロマブ!」
彼が歓声をあげる。
リコのことをいっているのはまちがいない。
「カズ、あれ見たかヨ……!?」
「ああ、うん……」
「俺、ちッと行ってくンわ」
「行ってくるって?」
「ナンパだヨ、ナンパ。俺のテク見とけヨ……!?」
「いや、それはやめた方が……」
俺が止めるのも聞かず吉本は門の外に出ていく。
「ヨウ、彼女ォ――」
彼はデート中のカップルにからむチンピラみたいなノリでリコに寄っていった。
リコは冷たい目をそちらに向ける。
「イカす単車乗ってンじゃン。CBRにハリケーンのセパハン? シビー改造してンじゃンヨ」
褒められてリコはわずかに表情をゆるめる。
「ナア、いまヒマか? 俺とコレ乗ってヨ、いっしょに疾風伝説作ろーや」
吉本のことばに、リコは笑顔になってオイデオイデをした。
彼はホイホイ近づいていく。
次の瞬間、リコの表情が一変した。
「グジャグジャうるせーンじゃァ、ダボがァッ!」




