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夜露死苦! 異世界音速騎士団"羅愚奈落" ~Godspeed You! RAGNAROK the Midknights~  作者: 石川博品
第2突堤 爆走純情戦乙女 "悪糾麗" 咲かせてみせます恋の花!
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2-11 本気……!?

「今度はアタシからいくヨ……!?」


 リコがじっくりと腰を割った。


「オオオオオオオオオッ!」


 両の拳を腰に当て、何やら声をあげる。


 これ、バトルアニメの尺稼ぎでやるやつでしょ? ホントにやる奴いるんだな。


 だが明らかに彼女の様子がおかしい。伝わってくる殺気がさっきとは段ちがいだ(こういうときでも忘れたくない……ユーモアの精神……)。


「覚悟はできたかヨ……!?」


 彼女が俺を見てニヤリと笑う。


 次の瞬間、すさまじい勢いで彼女が突進してきた。


 俺の動体視力でもとらえるのがやっとだ。


「オラアッ!」


 左右のフックを放ってくる。


「速い……!」


 俺は頭を振ってかわす。


 彼女の後足が振りあげられる。膝から下がすこし遅れて俺の側頭部に飛んできた。


 俺は腕をあげてガードする。なかなかの威力だ。ちょっと腕がしびれた。


 彼女の体が沈む。


「跳んでくる……! 膝かッ!?」


 跳び膝に備えて上体を反らす。


 だが――


「フェイント!?」


 襟首をつかまれ、引きつけられる。彼女はそのまま俺の下腹部めがけて膝を突きあげようとする。


「イ、イカン……!」


 俺は彼女の体を突きはなし、跳びすさった。


 あっぶねえ……。あの部位はDEF(防御)とINT(知性)がともにゼロという、人体の急所! 打撃を食らえば確実に再起不能エターナルインポテンツだ!


「あ~、惜しい!」


 悪糾麗の面々が声をあげる。


「出たゼ、リコの十八番・金玉潰し(オーブクラッシャー)!」


「やっぱうちの総長はエーナ」


「相手のヤローもなかなかやるじゃねーのヨ」


 おかしい……この俺が格闘戦で後手を踏むとは。ステータスの数字的にありえん話だ。


 俺はもう一度解析(アナライズ)を発動させる。



   タカセ リコ


  Lv 5


  HP 180


  MP 54


  ATK 95


  DEF 78


  INT 39(+500)


  AGI 135(+4649)


  LUK 83


  KIAI 0



 何だこりゃ……。AGI(素早さ)にとんでもないボーナスがついている。


 最後のゼロになってるKIAIとかいう項目、これが原因か。ひょっとして、いつでも自由に振りわけられるボーナスポイントを持っているってことなのか。


 だとするとかなり厄介な相手だ。


「こうなりゃ本気出すしかねーな」


 俺のことばにリコが笑いだした。


「ハァ……!? いままで本気マジじゃなかったッつーンかヨ……!?」


「俺が本気を出したら死人が出るからな」


 俺は特攻服の袖をまくった。


「オモシレーなオイ……!? 見してみろヨ、テメーの本気とやらをヨ……!?」


「いわれなくても見せるさ」


 だがどうしたものか……。得意の火炎魔法をあれ以上強くするとなると、周囲にも被害が及ぶ。


 考えているうち、ふたたびリコが突進してきた。


「ッラアアアッ!」


「くっ……」


 今度は正面から受けとめる。手と手を合わせ、プロレスラーがやる力くらべのような格好になった。


 腕力でいえば俺の方が上だ。余裕を持って押しかえすことができる。


 しかし――近いなコレ! サラシに圧迫された胸の谷間がすぐ目の前にある。


 しかも生ワキ全開だ。これが俺のフェチ心をくすぐってくる。


 クソッ……レベルカンストの怪物君モンスターとでも称されるべき存在ながらカワイコちゃんには滅法弱いというこのギャップがいまは憎いぜ……。


「なかなかやるじゃねーかヨ……!?」


 リコが手を放し、跳び離れた。構えを解いて掌を地面に向ける。


突風ウインドブラスト!」


 つちぼこりが舞いあがる。目に入って何も見えなくなる。


 相手の迫ってくる気配があった。


「ッダラァ、ダボがァッ!」


 リコの前蹴りが俺の腹を襲う。


 だが俺の方が速かった。


極大突風メガウインドブラスト!」


 地面に向けた掌から強い風が吹きだす。それに舞いあげられて、俺の体は宙に浮いた。

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