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夜露死苦! 異世界音速騎士団"羅愚奈落" ~Godspeed You! RAGNAROK the Midknights~  作者: 石川博品
第1突堤 大日本音速騎士団 "羅愚奈落" 出ッ発!
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1-1 編入……!?

第1突堤(イットツ) 大日本音速騎士団"羅愚奈落(ラグナロク)" パツ




「うおおおおおおおおっ!」


 俺の放った渾身こんしんとつは魔王の胸板を貫いた。


「グワアアアアアアアッ!」


 断末魔の叫びが響きわたる。


「やったわね、カズタカ!」


「さすがですわ、ご主人様!」


「カズタカ、すごーい!」


 仲間たちが駆けよってくる。


「へへ……終わった、な……」


 俺は剣を取りおとした。激しい痛みに気が遠くなり、その場に崩れおちる。


「たいへん! ひどい傷だわ!」


「はわわぁ、ご主人様ぁ! いま治癒魔法をかけますぅ!」


「それより早く脱出しないと! この城、崩れるよ!」


 俺は仲間たちに抱えられて魔王城を脱出した。




 治癒魔法を受けて体力を回復した俺は、崖の縁に立った。はるか下方では魔王の力を失った城が崩壊している。


「長かった戦いもようやく終わりね」


 かたわらに立ったソフィアがいう。俺がこの世界にやってきた当初からともに戦ってきた騎士だ。


 ちなみに身長190㎝、筋肉モリモリマッチョマンのオネエである。服装は兜にマントに黒いビキニパンツだけという非常にオスくさいスタイル。映画『300』に出てくるスパルタ人に似ている。


「ご主人様の手によって世界に平和がもたらされたのですわ」


 ベアトリーチェはいつもどおり俺の斜めうしろに控えている。いまではこの世界でも有数の白魔導士だが、奴隷時代の習性が抜けないのだ。


 ちなみに身長190㎝、筋肉モリモリマッチョマンのオネエである。服装は兜にマントに黒いビキニパンツだけという非常に雄臭いスタイル。映画(以下略)。


 ソフィアと見分けがつきにくいが、こっちの方が体毛が濃くて熊っぽい。


「ついに取ったよ……仲間たちのかたき


 マルガリータが崩壊していく城を厳しい表情で見つめる。元は魔王軍に属していた身ゆえ、複雑な思いがあるのだろう。


 ちなみに身長190㎝、筋肉モリモリ毛むくじゃらの熊系獣人であり、当然のごとくオネエである。


 何ていうかさ……俺、他の異世界って本やアニメで見ただけなんだけど、こういうのじゃない気がするんだよな……。


 もっとこう、主人公のまわりに女の子いっぱいいるじゃない、ああいうのって。彼らと同じレベルカンストのチートキャラなのに、なんで俺だけガチムチ男衆おとこしゅうとドサまわりしなきゃならないの?


「さあ、最初の城にもどって王様に報告しましょう」


「きっと盛大なうたげが催されますわ」


「わーい、ご馳走楽しみー!」


 っていってもなあ……この世界の人間って、男と女の居場所がはっきり区別されていて、俺が出席できるのは屈強な男たちが野太いコールとともに酒をみかわすだけのイベントなんだよなあ。


「あの……俺それ欠席でいい?」


 俺がいうと、仲間たちは「えっ!?」と声をそろえた。


 わかるよ、キミたちのいいたいことは。つきあい悪すぎるよね。だけど俺もう限界なのよ……。




 というわけで、俺は現実世界に帰還を果たした。ガチムチ男衆との涙の別れがあったわけだが、それは暑苦しいので省略する。


 今日から俺は高校生だ。というのも、中3の受験直前に居眠り運転のトラックにはねられて異世界に転移し、目覚めたら半年が経過していたのだ。


 幸いなことに、そろそろ1学期も終わりというこの時期でも入れてくれる高校があった。私立(さば)()さき高校というところだ。聞いたことない学校だが、東京の大学に行って陽キャ大学生になるという目標のためにはまず高校を卒業しなければ。


 剣と魔法と筋肉の世界とはオサラバして、これから3年間、勉強や恋に全力を注いでいくんだ。がんばるぞい!


 朝、俺は登校するとまず職員室に行き、担任の先生とすこし打ちあわせをしてから教室に向かうこととなった。こういうの、転校生みたいでなんだかワクワクするな。


 ところで……この学校、妙にきたねーのな。廊下に落書きとかすごいたくさんあるし……。ちょっとふつうじゃない。


 ひょっとしたら「デトロイト2050」とかのテーマで文化祭に向けて校内を飾ってるのかな?


 廊下の向こうからイカツい感じの男子5人組がやってきた。全員ド金髪だ。俺の担任がすれちがいざまに声をかける。


「キミたち、もうホームルームの時間だよ」


「ッセーヨ、ッラァ!」


 イカツい男子のひとりが怒鳴る。ちょっと何いってるかわかんないのだが、俺の担任は「ハハッ」と力なく笑ってそのまま歩きつづけた。


 この学校のナンバーワンDQNの人たちなんだろうか。そういえば中学校にもああいう連中がいたな。


 教室に入ると、空気がどよ~んとしていた。男子も女子も正面向いて座ってる奴がほとんどいない。キシリトールを摂取することに貪欲どんよくなのか、みんなガムをんでいる。気のせいか全員ににらまれている気がする。


 先生が黒板に俺の名前を書く。


「彼が今日からこのクラスの一員となる山岡やまおかくんだ。では自己紹介を」


 いわれて俺は教壇に立った。


 一度こういうのやってみたかったんだ。


「あ、どうも。海山うみやま五中から来ました山岡和隆(かずたか)です。今日からこの鯖ヶ崎高校に編入――」


「オウ、オメー五中かヨ……!?」


 教室のうしろの方で声をあげる者があった。


「ゲッ……」


 俺はそいつの顔を見てことばを失った。


 海山五中でナンバーワンDQNだった吉本よしもとだ。コイツこの学校だったのか……。


「オメー、コッチ来いヨ……!?」


 窓際の席で吉本が手招きしている。


 うわあ行きたくねえ……。


 こんなとき、ちょっと前までいた異世界なら、仲間たちが「ご主人様ぁ、気持ち悪い人が呼んでますぅ」(野太い声)とか「カズタカ、何なのこのゴミは?」(野太い声)とかいってくれてたのにな。


 あのガチムチフレンドシップがいまは懐かしいぜ……。

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