2-9 タイマン……!?
「望みどおりベッコベコに潰してやンヨ……!?」
高瀬リコは羽織っていた特攻服を脱いで部下に渡した。
脱いでしまうと上半身はサラシをぐるぐる巻きにしただけの姿で、胸の谷間がはっきり見えて、非常にエロい。
俺は固有スキル「乳房解析」を発動させた。
……ふむふむ、胸の谷間がIの形になっているな。これは真正の巨乳だ。小さいのを無理に寄せた場合は谷間がγ←こういう形になるのですぐわかる。
フブキの方は……まあやめておこう。
「オオッ、総長の喧嘩が見られンゾ……!?」
森の中から特攻服を着た女子たちが出てくる。
フブキは自転車のチェーンを取りだして振りまわした。
「ベコベコになンのはテメーの方だヨ……!?」
さっき王我伐闘流を血祭りにあげた必殺の武器だ。
リコはそれを見ても余裕の表情で肩や首をまわしていたが、突然魔法を発動させた。
「突風!」
地面に向けて放ったので土埃が巻きあがる。
「クッ……」
フブキが顔をかばって手をかざす。
その隙にリコが間合いを一気に詰めてきた。
「避けろ、フブキッ!」
マッハクンの声が飛ぶ。
フブキも前を見て反応しようとするが、間に合わない。
「ッダラアッ!」
リコの前蹴りがフブキの腹に突き刺さった。
爪先がモロに入っている。あれは痛い。
「オゴォッ……」
フブキは腹を押さえてよろめく。
そこをリコのハイキックが襲った。
膝から下がすこし遅れてやってくる空手式の蹴りがフブキの側頭部をとらえる。
がくんと頭が揺れてフブキは膝から崩れおちた。
「オオッ、さすがリコォ!」
「空手黒帯は伊達じゃねーナ!」
「ウチらの総長ァ最強だァ!」
悪糾麗が歓声をあげる。
「オイ、ナイトォ……」
「ああ」
マッハクンとナイトが目くばせしあっている。フブキを助けに出るつもりだろう。
リコが一度バックステップして、地面に倒れたフブキに向かって大きく踏みだす。顔面に思いきりサッカーボールキックを入れるつもりだ。
「死ねやオラアッ!」
そのとき、俺の体は反射的に動いていた。
レベルカンストの身体能力がフルに稼働する。
バイクのシートから飛びだした俺は地面のフブキを抱きあげ、リコの背後にまわった。
常人の目には一瞬の風のようにしか感じられなかっただろう。
「な、何だァいまの……」
「あのシャバ僧、いつの間に……」
「迅エェ……」
リコがふりかえり、こちらをにらんでくる。
「テメー、いったいどおやって……!?」
俺はそれを無視して腕の中のフブキに治癒魔法をかけてやった。地面に倒れているのをとっさに持ちあげたので、図らずもお姫様抱っこになってしまっている。
肩に担いだ羅愚奈落の旗がフブキの鼻先をくすぐる。時間の余裕がなくて他に預けてくることができなかったのだ。
「あれ……? ウチ、アイツにやられたはずじゃ……」
フブキが目を開け、俺を見あげる。
「もうだいじょうぶだ」
「カズが助けてくれたンかヨ」
「まあな」
彼女はまわりを見て自分を見て、お姫様抱っこされていることに気づいたらしく、顔を赤くした。
「バッカ、オメー……おろせヨ……!? ウチなんともねーかンヨ……!?」
腕の中で暴れるのでやむなくリリースする。
その様子を見てリコが笑った。
「やっぱオメーは姫だな。座敷犬みてーに抱っこされて尻尾振ってんのがお似合いだヨ……!?」
「ッセーヨ……!? もっぺん勝負しろや……!? さっきは油断しただけだかンヨ……!?」
挑発するリコにフブキが向かっていこうとする。俺は彼女の肩をうしろからつかんだ。
「待て。今度は俺がやる」




