表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜露死苦! 異世界音速騎士団"羅愚奈落" ~Godspeed You! RAGNAROK the Midknights~  作者: 石川博品
第2突堤 爆走純情戦乙女 "悪糾麗" 咲かせてみせます恋の花!
16/54

2-7 シマ……!?

 俺たちは一度現実世界にもどった。


 時速150kmを超えて、例の光に包まれると、宮前みやまえ交差点の北に出た。


 王我伐闘流オウガバトルとの衝突がなければ交差点の南に行くはずだったのだという。


 羅愚奈落ラグナロクメンバーの話によると、現実世界の地図と異世界のそれは重なっていないらしい。つまり、先程は交差点の北からどこかの野原の真ん中に転移したが、次に交差点の南に行ってそこから転移しても、さっきの野原の南に出るわけではないということだ。


 だから異世界に行くチームそれぞれお気にいりの転移ポイントを持っている。


 羅愚奈落の場合は宮前交差点から南に50mほど行ったところだった。


 加速して光を抜けると、また真っ暗なところに出た。だがさっきとちがって、遠くに明かりが見える。


「あれが俺らのシマ、ホルバロウの町だ」


 マッハクンがいう。


 シマ(・・)……。この人たちが異世界の人々を支配しているというのか。


 まわりが野原なのはさっきとかわりないが、なかなか立派な道がある。さすがに舗装はされていないが、馬車2台がすれちがえそうなほど広い。バイクのヘッドライトに照らされる路面はよく踏みかためられていて、往来の盛んなことを想像させる。


 前の異世界でしょぼくれた町をたくさん見てきた俺にとって、ホルバロウの町は明るすぎた。広場のまわりに石柱が立ち、その上で光るものがある。


「アリャーどうせきッつーンだ。火ィつけると長い時間燃えるから、明かりや燃料になる」


 ナイトがいう。


 文明のレベルは俺のいたところとそうかわりないようだが、エネルギー事情はやや異なっている。


 羅愚奈落の面々は、この世界としてはありえないレベルの騒音をブオンブオンとまきちらす。


 そこへ町の人たちが集まってきた。


「オウ、どーヨ……!?」


 マッハクンが彼らに声をかける。「あれからモンスターは来ねーかヨ……!?」


 人のよさそうなおじさんがマッハクンに歩みよる。


「実はこのところオオカミがやってきて家畜を襲うんだ」


「そーかヨ。ンじゃ、俺らがやってやンヨ」


「そうしてくれるとありがたい。きみたちがいてくれて助かるよ」


 おじさんがいうと、マッハクンは照れくさそうに笑った。


「俺らがはじめてココ来たトキ、ゴブリンの大群に襲われててヨ――」


 俺の前に座るナイトがいう。「ソイツら撃退してからこの町の人らは俺らのコト世話してくれてンだ」


「それはいいことをしたね」


 暴走族が正義の味方というのはなんだか変な感じだ。


 町の人たちは羅愚奈落の面々に興味津々な様子だ。


 具体的にいうと、若い女の子たちはマッハクンのところに集まり、はしゃいだ声をあげている。男たちはナイトを囲んで、けんの武勇伝を語りあう。フブキのもとには小さな子供たちが群がって、バイクに乗せてもらったりしている。


 一方、俺はといえば、なぜかキッタネー犬にギャンギャン吠えられていた。番犬としての能力をここぞとばかりにアピールしやがる。


 なんか扱いに差があるな……。


 ひとりのお婆さんが布のようなものを捧げもってナイトのところへやってきた。


「頼まれていたもの、できたわよ」


「オオ、サンキュー」


 それを受けとったナイトは俺の方を向いた。「コレ、オメーのだ」


「俺の?」


 手渡されたものをひろげてみると、みんなが着ているのと同じ上着だった。背中に「羅愚奈落」のしゅう。胸にはご丁寧に「海山うみやま」と住んでる街の名前が入っている。


 俺こんな主張強い服着たことねーよ。


「オメーの特攻服トップクだ。サプライズでオメーに渡せるよう、頼んどいた。アッチの世界で刺繍頼むとケーかンヨ」


「着てみろヨ、カズゥ」


 フブキにうながされ、羽織ってみる。オーバーサイズで着る感じなんだろうか。サイズとかはまあいいとして、似合ってないねコレ。服に対して顔のオラつき度数が低すぎる。


「ビッとしてンじゃねーかヨ。一気に族っぽくなったゾ」


 マッハクンは褒めてくれる。


「写真撮るベ」


 フブキにいわれて俺たちは肩を寄せあい、写真に収まった。俺がもし芸能人になったり選挙に出馬するようなことになった場合、この写真が流出したら一発でアウトだろう。


「オウ、おばちゃん――」


 ナイトが刺繍のおばさんに声をかける。「代金はすぐ持ってくるかンヨ」


「いつでもいいよ」


 おばさんは人のよさそうな笑顔を浮かべる。


「この世界の通貨を持ってるの?」


 俺がたずねると、ナイトは首を横に振った。


「持ってねえ。だからいまからモンスターサラってカネの代わりにすンだヨ」


 このいい方……やっぱ暴走族って悪の組織だわ。


「オーシ、モンスター狩りのドーグ用意すンゾ」


 マッハクンがいうと、みんなはバイクを押して歩きだした。


 村はずれにあるボロい小屋まで行く。ここは羅愚奈落が町の人から借りている建物だという。


「カズも好きなドーグ持ってけヨ」


 対モンスター用のアイテムでもあるのかな、と思ったが、彼らの手にするものは剣やせんやメイスといった武器ばかりだ。ドーグって武器のことらしい。


 他に防具も置いてある。見た感じ、あまりモノはよくなさそうだが、数はそろっている。


「これどうしたの?」


「ゴブリンからの戦利品ヨ」


 マッハクンがいう。


「これ売ったらカネになるんじゃない?」


「この辺、商人いねーンだ。大きな町は遠いかンナ」


「そっか、それは残念。……いや待てよ。俺たちにはバイクがある。それを使ってモノを運べば、馬車なんか使ってる業者より有利だからこの世界の覇権を――」


 手を打ちならす俺をマッハクンがにらんだ。


「ンなコトやってられッかヨ……!? 俺らァ走り屋だゾ……!?」


「う~む……」




 ~ バイクを使って異世界物流革命!! 完 ~




 けんとかナシでやっていく道が打ち切りエンドを迎えてしまった。あとはもう俺がこのチームから追放される路線しかねーな。


 仕方なく俺は小屋の中を物色しはじめた。前の異世界では神話級の武器・防具を扱っていた俺にとって、このレベルのものは手に取る気にもなれない。


 床に落ちている指輪に目が留まった。人差し指にはめてみる。ぴったりだ。ふと思いたって小指にもはめてみる。これもぴったりだった。


 どのサイズにも適合する――魔力を持つ指輪の特色だ。


鑑定エスティメート


 俺はアイテムの価値を調べる魔法を発動させた。



   回復の指輪 毎秒HPを100回復する

         レア度:A

         予想価格:3000ゴールド



 なかなかの拾い物だ。店で売れば一儲ひともうけできる。かさばるものでもないし、持っておこう。


「カズ、ドーグそれだけでいいンかヨ」


 ナイトにいわれて俺はうなずいた。


「オーシ、ンじゃパツだァ!」


 マッハクンの合図で俺たちはバイクにまたがった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ