2-6 無双……!?
現実世界で王我伐闘流に狙われないためには……これしかない!
「極大治癒! 範囲:全体!」
俺は治癒魔法を発動させた。
「オォ……痛みが……」
「消えていく……」
「傷もなくなったゾ……」
王我伐闘流の面々が立ちあがる。
赤モヒも起きあがり、自分の体を不思議そうに見つめている。
「コ、コリャア……オメーがやったンかヨ……!?」
「そのとおり」
俺はうなずいた。「そしてオラァ――――――ッ!」
赤モヒに跳びかかり、顔面をぶん殴る。
「ゲブアッ」
クリーンヒットして、赤モヒの体はバイクのところまで吹っとんだ。
「うおおおおおおおおッ!」
俺は残りの王我伐闘流も次々にボコっていった。
「グバアッ」
「オゲエッ」
「ベゴオッ」
あっという間に草原は血に染まり、そこに半死半生の男たちが転がった。
背後では羅愚奈落の面々がドン引きしている。
「カズ、オメー何やってンのヨ……!?」
「またブッチメるためにわざわざ治癒したンかヨ……!?」
「コイツ、ラリってやがンナ……!?」
俺は赤モヒが倒れているところまで歩いていった。
彼は俺に気づくと仰向けのまま顔だけをあげた。
「テメー……こーなったら王我伐闘流だけじゃねーゾ……!? 鯖ヶ崎高の2年が総力挙げてテメーを潰すかンヨ……!?」
「そうか……」
俺はふたたび治癒魔法を発動させた。「極大治癒! 範囲:全体!」
王我伐闘流たちの傷が癒えていく。
「しかしふたたびオラァ――――ッ!」
俺はまた一瞬のうちに全員をボコボコにした。
いくらレベル差があるとはいえ、さすがにちょっと疲れる。
呼吸を整えてから、倒れている赤モヒに近づく。さっき正中線十六連撃を食らわせたので血まみれだ。
「ヒッ……」
彼は俺に気づくと、いうことを聞かない体を引きずり、逃げようとした。
俺はその赤いトサカをつかみ、顔を近づけた。
「これ以上俺に構うと……殺すよ?(レベルカンスト暗黒微笑)」
そういって脅しておいて治癒魔法をかけてやる。これだけやればさすがに俺の恐ろしさが身に染みたはずだ。
動けるようになった王我伐闘流たちは我先に逃げだした。
「ヒイッ……」
「バケモンだ……」
「檻の外にいちゃいけねーヤツだゾ、アリャ」
彼らがバイクに乗って現実へと帰っていくのを俺は見送った。
いろいろあったが、彼らの標的にはならずに済みそうだ。
俺の背後では羅愚奈落の面々が何やらささやきあっている。
「ボゴるために治癒するってさすがにやりすぎじゃねーのか……!?」
「族の喧嘩にも限度ってモンがあるだろーがヨ……!?」
「アンパン食いすぎで脳ミソ麩菓子みてーになってンかアイツ……!?」
日々の平穏を得た代わりに何か大切なものを失ってしまったような気がする。