冬
あなたの事は嫌いです。
だから私を愛さないで。
望んだ恋ではなかったのです。
私には翼がないから、落ちることしかできなかったのです。
私には手も足もあったけれど。
落ちた場所から抜け出すことはできませんでした。
あなたの腕の中は心地よくて。暖かくて。
初めて出会った春の日の木漏れ日を思い出させました。
夏の日に見た海は今までで一番輝いていて。
いつまでもさめなかった夜。
虫の声を聞きながら、街灯に照らされたあなたを見つけたとき。
あなたの頬が光っているのを見た私は。
あなたのことが嫌いです。
見るだけで泣きたくなるし、話すだけで手も声も震える。近づかれると心臓を吐き出したくなる。
あなたのことが嫌いです。
「君に泣かれるくらいなら、僕は消えてしまいたい」
冬物のコートの裾をしっかりと掴んだ、泣きじゃくる少女の赤くなった手よ。




