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第04話 ギルドを訪れし者と初の依頼

 ギルドマスターに任命されてから2ヶ月がたった。

 ギルド『ライゼフォールズ』の異世界支部の酒場にはそこそこの客が来るようになった。


 そこにいるお酒を飲む黒髪の幼女もそうだ。


「おい!マスター、今かなり失礼な事を考えていただろう?」


「いや、そんな事ないですよ」


 彼女は見た目こそ幼女だが、一応酒の飲める年齢だ。

 最初はかなり驚いたが、もう慣れた。


 だって毎日来るんだもん。暇かよ?


「マスターソル、今日届いたクエスト貼っておきます」


「ああ、ありがとう」


 最近はこんな感じでクエストも届くようになり、ユウカもギルドを手伝ってくれる事がある。

 というか、最近、従順すぎてちょっと怖い。

 なにか裏がありそう。


 あとは、ギルドメンバーも少しずつだが増えてきて、酒場にも常連客が増えてきて、結構嬉しい。


 クエストもギルドメンバーも全員元の世界人間だが。


「それにしても、このギルドの酒は美味しいな。

 評価するに値する。 褒めてやろう!」


「お前なぁ。よくも毎日飲みにきて飽きないな。

 てか毎日来るな。 暇人かよ?」


「あーーーあーーーあーーー 聞こえなーーーーい」


「うるさいって。少し口閉じろ!」


「いいじゃん!私だって色々溜まってるの!」


「見た目幼女のくせに何言ってるんだよ?」


「・・・最近さ、勇者に虐められる」


 お分かりいただけただろうか?

 この幼女、ただの幼女ではなく魔王なのだ。

 ()()()()()()魔王なのだ。


「あーはいはい。 そうだね、辛いね。じゃ、もうおうちに帰ろうね〜」


「馬鹿にしてるんだろ!? 許さないぞ!」


「アー ゼンゼンシテナイヨ。ボク、ウソツカナイ」


「うわーーーーー!!」


 魔王が雄叫びをあげて頭を抱える。

 ちょっと馬鹿にしすぎたかな?


 頭を抱えてカウンターに伏せてる魔王【ウラノ】をユウカが慰めているとギルドの扉が開かれ、鎧を来て腰に剣を携えた背の高い金髪の女が入って来た。


「ちょっと失礼する・・・って、魔王!!」


 ウラノはその声を聞くや否や顔をあげて勢いよく振り向いた。


「あ!! 貴様は!」


「ん? 幼女、知り合いか?」


「あいつは勇者だ! 無慈悲かつ極悪非道の最低最悪の人間じゃ! すべての生物の敵だ!

 てか、幼女言うな!」


「ちょ、なんて紹介してくれてんの!?

 そんな紹介したら第一印象最悪になるでしょ?」


「いいのだ!

 貴様のようなドSなビッチ勇者は第一印象が良くても直ぐにボロが出て印象が悪くなるのだ」


「ほお、言ってくれるな。魔王?

 なんならここで因縁の決着をつけてやっても良いのだぞ?」


「いいだろう。 この姿でも魔王は魔王。 貴様のようなチンケな勇者なんぞ蹴散らしてくれるわ」


 そう言うと勇者は腰に携えた剣を抜き、魔王は魔力を練り、2人とも臨戦態勢をとり始めた。


 なので、ユウカを2人の間に入らせてみた。というか、勝手にユウカが入っていった。


「ウラノさんも自称勇者も、マスターソルのギルドで暴れようと思うのか?いい度胸をしているな」


 ユウカは勇者と魔王の首元に剣を向けた。


 あれ? ユウカが魔王に向けている剣って俺の新調した剣に見えるけど気のせいだよなぁ?

 気のせいじゃないな、うん。


「ユウカ、これは私と勇者の問題だ。止めるでない」


「少女よ。去るがいい。ここにいては怪我をするぞ?」


 俺は取り敢えず、勝手に盛り上がる勇者と魔王にフライパンを投げておいた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いってー。フライパン(あんなもん)をこんなに可愛い美少女に投げるか?普通」


「そうだぞ。魔王(こいつ)はともかく、勇者である私に投げるなんてどうかしている」


 2人ともはまたもや睨み合う。

 俺の横でユウカが『猫と犬の喧嘩みたい』と言いながら目を輝かせていたことなんて断じて知らない見ていない。


「ウラノが美少女かどうかは置いといて、お前らさ、意外に仲良いだろ?」


「「どこがだ!?」」

 2人の声が重なる。


「そういうところだ。 てか次ギルド内で戦おうとしたら出禁にするからな。 やるんだったら元の世界でやれ」


「な、なんと無慈悲な事を・・・」

「私に魔王と仲良くしろというのか!?」


「勇者と魔王ってなに? 暇なの? なんで酒飲みに来てんの? 馬鹿なの? 死ぬの?」


「何故罵倒されているか分からんが、暇なのは確かだ。 世界も平和だしな」


「確かにね、先代の魔王(お父さん)が先代の勇者に倒されてから人間と魔物が仲良いからね」


「私からしたら勇者として召喚されて、勇者になる訓練を積んだのに 魔王がこれだから暇でしかたない」


 本当にこれ勇者か?

 もう平和とか関係のなしの戦闘狂だろ。

 勇者より冒険者のほうが向いてるので転職を勧めたい気分だよ。


「マスター、取り敢えずエール一杯くれ」


「あ、私も もう一杯ちょうだい」


「ほらよ! もうこれを飲んだら2人とも帰れ。そしてしばらく来るな」


「嫌だね。しばらく居るもーん」


「私は来たばかりだぞ! 何故帰らなければならないのだ?」


「お前らがいるとギルドまで手が回らないからだ!」


「あ、そうだった。忘れていたぞ!」


 そう言い、勇者が紙を取り出して俺に渡す。


「私は依頼があって来たのだ。魔王がいた所為で、すっかり忘れていた」


「私のせいにするな!」




【我がセントレリウス四世の名の下に 南方の山に住まいし特定危険天災級生物であるレッドドラゴンの討伐を勇者 シュナに命ずる】


「これってさ、王命だよね? しかもお前宛の」


「そうだ。あのデブ野郎、『討伐に失敗したら我がきさきとなることを誓え』とか言いやがるんだぞ? どう思うよ?」


「いいではないか、収まるところに収まってしまえ」


「魔王!この野郎!!」


 再び2人が睨み合う。

 全く、次 戦ったら出禁だって言ってるのに懲りないなぁ。というより人の話聞いてたのかな?


「ということで私はこのギルドに依頼したい。先代も異世界の強者と共に魔王を討ったと聞く。だから私も力を借りたい」


「そんな事を言われてもねぇ・・・」


「金なら幾らでも払おう。だから力を貸してくれ!」


「異世界の金を貰ってもな・・・・」


「マスターソルはあなたの体を求めて居るみたいよ」

 

 はい!? いやいやいや、ちょっとユウカさん!?


 ユウカの『心読眼しんどくがん』という心を読む能力に俺の考えていることを読まれ、物凄くダメな・・・というか、色々と問題のある言い方で勇者に伝える。


 勇者は顔を真っ赤にしながら立ち上がり、剣を握ってこちらを睨む。


「き、貴様もあのデブ野郎と同じなのか!?」


「違うから! ユウカの言い方が悪いだけだから!」


「じゃあ何だと言うのだ!? 返答によってはその首が繋がっていると思うなよ!」


「俺はお前にギルドメンバーになって欲しい、それだけだ」


「ギルドメンバーに? 何故だ?」


 警戒しているのか 勇者ことシュナさんはいつでも抜刀出来るように剣を握っている。


「普通に戦力が欲しい。 特に俺より強い人。

 見ての通り、ここは異世界支部だからあまり人が来ない。 ギルドメンバーも常連客も最近は増えているが やはり集まりが悪い。

 今のギルドメンバーの強さもユウカ以上はもちろん、俺以上の強さの人も居ない。

 だから戦力が欲しいって訳だ」



「だ、だからと言って私をギルドメンバーにする必要はないだろ?

 それに、私には勇者という立場がある。

 王宮を守るという役目もそう簡単に辞められるものではないのだ」


「なにを言っておるのだ、勇者?

 王宮の警備と言っておきながら セントレリウス四世(あのブタ)はお前を側に置いておきたいだけだぞ?」


「ま、魔王! どういうことだ?」


「どういうことだ?ウラノ」


 飲んでいたエールを一気に飲み干し、満足そうに息を吐くと ウラノは話し始めた。


先代の魔王(お父さん)を勇者が倒した後、私に何もせず勇者達は帰ったのだ。

 その後、数十年くらい経ってから『魔王に娘が居た』って噂になって、討伐軍が編成されていたのだ。

 私は先代の魔王(お父さん)みたいな人間撲滅派じゃないから、人間と不可侵条約を結んで、友好関係を築いた」


「ちょっと、待て。 魔物と人間の不可侵条約って確かに60年以上の話だぞ? 魔王、お前何歳なんだ?」


「それは今関係ないだろう?

 その後、条約更新の為に王宮に行ったのだが、先代の勇者の盟友の息子達が警備をしていたのだ。

 だがその数年後に別件で王宮に訪れたときは勇者しかいなかったのだ。

 強さも先代の勇者の盟友の息子達の1人の半分くらいの強さだったのにな」


「それはただ、息子達がもう亡くなっていただけじゃないのか?」


「いや、私を勇者として育てたのがその息子達だ。 まだ生きているぞ」


セントレリウス四世(あのブタ)は勇者を勇者として王宮に招き入れていた訳ではなく、自分の婚約者にする為に招き入れていたのだ。

 そんな男を守る価値なんてあるのか?」


 その話を聞くとシュナは黙り、『ふぅ』と溜め息を吐いた。

 その時シュナの目には怒りが宿っていた。

 先ほどまでの表面だけの怒りだけではない。

 本気だ。本気で怒っているのだ。


『シュナに怒神の加護が付きました』


 ん? なんだこの声? 誰の声だ?


「ちょっと行ってくる」


 そういうとシュナは立ち上がり、走ってドアまで行く。


「おい、何処に行くんだよ?」


「ちょっとデブの所までね。

 あと、マスター、いやマスターソル。 今回のクエストが達成できたらギルドメンバーに必ず入れてよね!」


 それだけを伝えるとそのままギルドを出る。


「ど、どうしたんだ?」


「さてと、マスターソル 一緒に勇者を追うよ!」


「マスターソルって、お前ギルドメンバーじゃないだろう。 俺は構わないが呼び方を重要視するギルドもあるから気をつけろよ」


「マスターソル、やっぱり鈍いのね」


「えっ?」


「本当に鈍い! せっかく私もギルドに入ってあげようと思ってるのに!」


「ど、どういうことだ??」


「いっ、いいから!はやく勇者を追うよ!

 早く行かないと置いて行かれちゃうよ!」


 そう言い、ドアまで走って向かう魔王ウラノを俺とユウカが急いで追いかけ、初めて異世界へと足を踏み入れるのだった。

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