プロローグ ギルドに捨てられた
「ソル、お前はギルドを抜けてもらう」
突然の宣告に俺は不思議と納得していた。
「残念だ、今までありがとう」
「元気でね」
「お世話になりました」
「さようなら」
ここ数年でパーティメンバーとの実力が開きすぎてしまったのだ。
そんな弱い奴が居れば、他の国から依頼がくるような有名ギルドの看板パーティの名前に傷が付く。
妥当な判断だ。
このパーティメンバーの力は、俺と違って修行で手に入れた力ではなく、禁忌を犯して手に入れた偽物の力だ。
しかし、実力の差は実力の差であり、どのような力であれ、覆りようのない事実だ。
俺はギルドをメンバーと元パーティメンバーに深く頭を下げるとギルドを去る。必要な物だけを持ち、街も去る事にした。
街の外へ出て、少し行ったところで後ろから声がかけられる。
声をかけてきたのは、酒場やクエスト中に何度か顔を合わせた方のある Aランクのラルムだった。
「聞いたぞ、もう既に街では君がギルドを辞めた理由の噂で持ちきりだ。何があったんだ?」
当然だろう。
有名ギルドの看板パーティの一員だったのに、脱退をするだけでなくギルド自体を辞めたのだ。
『なにかあったに違いない!』と思うのも分からなくもない。
「俺の実力がなさすぎただけのことだ。
実力の伴わない人間は必要がない、ということだ」
「何処か行くアテはあるのか? ないのなら俺たちのギルドに入って、俺たちのパーティ来ないか?」
「遠慮しておくよ。 実力不足で追い出されたのに、もっとランクの上のパーティで何か出来るとは思えないしな」
そう言うと、ラルムは目を少し逸らし、うつむいた後こちらを真っ直ぐみて話を始めた
「・・・実はな…」
俺はラルムの話を聞き、驚愕した。
そして静かに怒いかった。
許さない。
パーティメンバーもギルドマスターも。
『称号を獲得しました』
そんな声が聞こえた気がしたが俺は気に留めていない。
「……だから俺たちのギルドにきて俺たちパーティに入らないか?」
途中から話を全く聞いていなかったことに気がついて自分でも少し驚いた。
「悪いな。 俺はしばらく修行の旅に出ようと思う。
また何かあったらよろしくな」
そう言って俺は他の街へと歩いて行った。
「気が向いたら『ライゼフォールズ』の本部に来てくれ。歓迎するよ!」
後ろから聞こえる声に手を振り、そのまま歩いて行った。
ライゼフォールズか、覚えておこう。
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「ここがローザか」
ギルドを抜けてから1年以上が経ったある日、俺はラルムが所属するライゼフォールズの支部があるローザという街へと訪れた。
ここは平和だ。
周りには魔物はほとんど湧くことがなく、東の森では湧くことがあるらしいが森から魔物が出てくることはないらしい。
「邪魔します」
カウンターには受付の銀髪で白い肌で尖った耳を持つ、可愛いエルフが居た。
「いらっしゃい! ライゼフォールズへようこそ!」
受付のエルフは他の全ての生物の全てを凌駕するであろう微笑みで俺を出迎えてくれた。
「ギルドに入りに来たんですけど、マスターは居ますか?」
そう言うと受付のエルフは少し首を傾げ驚きの言葉を先ほどの微笑みと共に発した。
「マスターは私ですが?」
俺はこの瞬間、このギルドに永久に所属しよう。
そう心で誓った。
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