七巻 早る心は裏腹に
「で、あんた何?」
『ですから…ご依頼を…』
「そうじゃなくて。
何が化けてんのか聞いてんの。」
ライトグリーンはきょとんと俺を見つめると、またくすくすと笑い出した。
『わたくしが何であっても貴方様には関係ないでしょう。聞いてどうするのですか?』
その瞳は怪しげに揺れ、
俺の解答を弄ぶのを楽しみにしている化け物の顔だ。
「依頼を承けるか承けないか決める。」
怯むことなく言う俺をライトグリーンは鼻で笑った。
「まぁ、お偉いこと。
罪人の身で大したことをおっしゃるんですね。」
「罪人なんて関係ないさ。俺のポリシーだ。
あんたたちが人間を『醜人』と呼ぶように、俺だって醜いものは扱わない。」
堂々と言う俺をライトグリーンは一別し、今度は花のように笑った。
「面白い童だこと。
いいでしょう、教えてあげますわ」
そして細長い指を宙に立てた。
そこからは妖気が漏れ出て、同時に美しい新緑の葉がくるりくるりと飛び散った。
『わたくしは葉でございまする。
生まれたての初々しい葉。
貴方達を包む、夏の妖精。
醜いものなどではございませんよ、春人さん』
「あぁ・・・
…綺麗なものだよな。」
瞳を大きく開き、ライトグリーンは頬を赤らめた。
『ありがとうございまする。では…』
「まだ。
あと一つ教えてくれ」
にっこりと笑う俺にライトグリーンは首をかしげた。
『春人さんは質問がお好きなこと。何でございましょう?』
「どうやって信号機から、ここまで来た?
妖気を使ってもあんな短時間では来れないだろう?」
『よくお分かりになっているのですね、わたくし達の事を。』
「まぁー…ね」
『場のお蔭でございまする。四つ角はわたくし達の通り道。
春人さんがここに来られたから、素早く道を通って参りましたわ』
ライトグリーンは後ろの壁をとんとんと叩く。
すると紫煙が出てきた。
紫煙は化け物が残す足跡のようなものだ。
「なるほど…」
これから気を付けよう…
こっそりと呟いた。
『では、お話を聞いてくださいまするね?』
念を押すライトグリーンにこっくりとうなずいた。
『安心しましたわ。
今頃ですが、わたくし葉のもの葉詩と申します。
貴方さまについては、虹煙より拝聴致しました。』
あぁ。
この前来た虹の化け物か。鬼ぽっいやつだったなぁ。確か。
『貴方さまにご依頼したいことは、夢でごらんになった童を助けて頂きたいのです。』
あれ…?
やっぱり今回は可笑しい。化け物が人間を助けるなんて。
『今宵の晩、夢であちらに渡って頂けま…』
キーンコーン
カーンコーン…
ん?
どこからか聞き慣れた音がする。
『何の知らせでございましょうかねぇ。』
葉詩は呑気に空を見上げる。
「ん?!」
腕時計を見て思わず叫んでしまった。
「ちっ遅刻だー!!」
『ちこく?』
呟く葉詩を残して、
俺は全力疾走で学校に向かう。
『…はっ春人さぁーん!!』
葉詩の声が俺の背中で
響いていた。
今回はいつもより長くなりました(^^ゞ
読むのに時間がかかりますね〜それとライトグリーンは葉詩さんでした。(^_^)
この名前けっこう気に入っています。
次回から豊穣学園が舞台になります。
またよろしくお願い致しますねっ(*^^*)