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十九巻 嵐の前の平和な一時

「あれ、兄ちゃん。

体調いいの?」


リビングに降りると、野球アニメを見ていた陽一と、数学を解く一也がいた。


「凄い汗だな…

また夢にでもうなされたか?」


少々笑みを含み、だが、心配そうに一也が俺を眺めた。


「や、起きたら汗かいてぐっしょりだったから、別にうなされた訳じゃない。

風呂入ろうと思って降りてきた」



「なら、いいけど。

そろそろ文無月が来るから早く入っちゃえよ」



ふなづき…?



俺の頭が爆発しそうになった。



「なんでうちに文無月さんが来るんだよっ」



血相を変える俺に、一也は涼しげに答えた。



「生徒会の仕事」



「俺にちゃんと言えよな!

馬鹿一也!」



「…いちいちハルに言う必要ねぇーだろう…俺んちだし、ここ」



めんどくさそうに答える一也に少々、怒りを感じながら、本来の目的を思い出した俺は急いで風呂場に向かった。


葉詩を探すんだった…


やべぇ、やべぇ。



「十分程度で上がるけど、文無月さん、来ると不味いから、服だしといて」


頼みかける俺に、冷たく一言。



「…やだ。裸でうろついてろ」



ぽんっとバスタオルを投げかける一也に、溜め息をつきながら、俺は二階の自室に服を取りに行った。



     ◆



あのあと風呂に入った俺はさっぱりとした気持ちで四つ角に足を運んでいた。


風呂を上がった数分に文無月さんがうちに来て、

「あ。豊城くん。早退したんだって?体調大丈夫?」なんて声をかけてくれたもんだから、嬉しくって仕方がない。


今の俺なら、きっとなんでも出来るはずだ。



「おーい…葉詩ぃぃー

俺が悪かった出て来いよー」



四つ角の壁に向かって声を上げる。

はたから見ればかなりの変人だが、しょうがない。

葉詩が居そうな場所と言ったら、ここぐらいしか思い付かない。



「おーい…出て来いよー」



努力虚しく、葉詩は見当たらない。

朝と言い、昼と言い、突然現れるくせして、なんで必要なときには出て来ないんだよ…


全く…


そういえば…

一也は文無月さんのことで何も言って来なかったな…

あいつの性格からして、絶対、問い詰めてくるはずなのになぜだろう…?


朝の俺、消失事件と言い、探求心の強い一也がおかしいなぁー…



『当たり前ですわ!』



いきなり耳を貫く程の甲高い声が響いた。



『春人さんに不備が生じないようにと、あそこにいた無人の余計な記憶を排除しましたもの!』



前方を見ると、ふわふわと宙に浮くライトグリーンの飛行物体が目に入った。



「あっ…葉…」



『それと、春人さん?

代わり身が消えたのは、わたくしの妖力が弱いからではありませんからね!

間抜けな無人が彼に大きな球をぶつけた上に、水を撒き散らし、汚れと一緒に流してしまったんですわ!

葉で出来たものは、強い衝撃に弱いんですわ!

決してわたくしの妖力のせいではございませんっ!』


怒り狂う化け物を呆然と眺める俺に、彼女は、行きますわよ、と妖力をかけて、四つ角の中へと連れて行った。

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