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十四巻 当たり前の食物連鎖

そもそも『異界』とは、どのような場所なのだろう?


化け物の棲処?


化け物の溜まり場?


化け物と人との架け渡しの場?


正直、すべてが当てはまるような気がして、すべてが当てはまらないような気がする。


空想の世界でしかなかった場所を、いざ現実として見ろと言うのは非常に難しいことだ。


特に俺のように化け物や異界を、否定してきた者にとっては。


「どうしても行かなきゃならないのか?」


「はい…

童が餌にされてしまうのは時間の問題です。

あれらはそろそろ音を上げて、あのこを食い尽くしてしまうでしょう。」


「食い尽くす?」


俺の頭に浮かんだのは、残酷な血み泥の描写だった。

まさか…あの子を…


俺の顔は真っ青になった。身体中にぐっしょりと汗をかき、嫌な悪寒が胸を焦がす。


葉詩はそれを見て、眉根一つ動かさず自然に答えた。


「お考えの通りです。

魂も身体もあれらの血となり、肉となってしまうことでしょう。

貴方たちが生き物を喰らうのと同じように。」


葉詩は淡々と答えた。

感情は一欠片もなく、まるで機械のようだった。

凍ったような冷たい声が耳に痛い。


「だっ…だけど…」


全身から血の気が失せた俺はまともに話すことすら出来ない。

頭の中に想像した残像が、植え付けられ、気持ち悪くて仕方がない。


あの子が…



あの子が……



あの子が………餌になる…


そんなことあり得てたまるか…!


「何を驚いていらっしゃるのですか?

当たり前のことでしょう。

貴殿方が食事をするように、わたくし達も食事をします。

三食きっちりと好きなものを頂きます。

それが人間であって何が可笑しいのですか?

人間は食物にならないとでもお考えですか?


これも一つの食物連鎖なのです。」


食物連鎖…?



今まで考えたことがなかった。



人を喰らう化け物は悪いモンスターで人の敵。

だからやっつけなければ、ならない。



子供心に思った化け物に対する強い恐怖と憎しみ…



だけど…


当たり前の自然現象だったのか?


「春人さんがどのようにお考えかは存じませんが、異界はわたくしたちにとって空想などではありません。

わたくしたちが生きるための世界。現実の艶やかな場所。


人間がこの世を現実だと思うように、化け物も異界を現実だと思っておりまする。


そして、この世を空想だとも。」



葉詩の言葉を全て聞きたくない…

全て理解することが出来ない…



俺は理解したくないんだ。


聞きたくもない。



俺はここを必要としているから。



「現実なんて所詮、嘘の塊。

視るものによって変わり、視るものによって創られる。

それを否定し、抹消することなど誰にも…いえ世に生きる物になど出来やしません。」



そこでふっと葉詩は息を吐き、歌うように呟いた。



「出来るとすれば、それは神と呼ばれる幾多の世界の創造者だけ。」



最後まで読んでくださってありがとうございました。次あたりから、春人が異界に行くはずです…またよろしくお願い致します☆

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