十二巻 親切心は嵐を呼んで
「春人さん、わたくしの依頼、聞いてくださりますよね?」
頬を紅潮された俺をよそに、葉詩はいよいよ本題に入った。
くりくりとした文無月さんの瞳が、今はギラギラと獲物を狙う瞳になっている。
「はぁー…」
正直、聞きたくない。
とゆうか、まずここから逃げ出して一也に誤解を解きたい気分だ。
「いいですよね?
春人さん」
なおも首をたてに振らない俺に、痺れを切らした葉詩が話しかけた。怒りと焦りが混じった恐ろしい顔をしていて、それはもう化け物そのものだった。
「わかったよ…話せよ…」
最早逃げ場のないことに気づいた俺は、浅はかな気持ちで頷いた。
◆
「お分かりだと思いますが、わたくしの依頼は夢写しで視られた童を助けて頂くことです。」
廊下からカフェテラスに移動した俺たちは、コーヒーを飲みながら話していた。葉詩は文無月さんに化けるのを止め、どこかのクラスの男子に化けている。
「あの童は今、化のほとりにいます。
化のほとりは化け物たちの里。
あの童はそこに迷い込んだただの迷い子です。
自ら化のほとりから抜け出すことはできません。
だから、春人さんに助けて頂きたいのです。」
その顔に似合わない口調ですべてを話した葉詩は陰鬱そうに下を向いている。
それはただ哀しみに打ちひしがれた子供の顔で、とても化け物だとは思えなかった。
「で、どうすりゃいいの?」
協力する気なんてさらさらなかったが、葉詩があまりにも哀れに思えて、思わず口走っていた。
「承けてくださるのですね?!」
「あぁ…」
歓喜に満ちた葉詩はすぐさま今後の動きを話し出した。
やぁーとっ本題に入れました!ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!今後ともお願いいたします☆