十一巻 見破られた心の中
書きそびれましたが、
葉詩のかぎかっこが『』から「」になったのは、人間に化けているからです(^_^;)
もとの化け物に戻れば、『』に戻ります:
紛らわしくてすいません!
「放せよ…」
俺は葉詩に捕まれた腕をばっと突き離した。
「どうしましたか?」
葉詩はいつもの口調に戻り、のんびりと話した。
「どうしたじゃねぇよ。
なんでお前が学校にいるんだよっ」
イライラとした気持ちを必死に抑える。
何が楽しくて化け物と歩かなきゃいけないんだ…
このままだと頭がパンクしそうだ。
「まぁ…
先ほどと随分言葉遣いが、異なっておられますのね。面白いですわ、春人さん」
葉詩は文無月さんの顔で、くすくすといやらしい笑いをした。
「その顔で話すの止めてくれる?気持ち悪いんだけど」
「しょうがありませんわ、
ここは無人の集団の場ですもの。
無人の姿にならなければ、春人さんとお話しできないでしょう?」
確かにそうだ。
でも…だからって…
「だけどその姿でいる必要はないだろう」
そうだ。
よりによってなんで、文無月さんに化ける?
「春人さんがいけないんですわ。」
「は?」
堰を切ったように葉詩は話し出した。
「いきなりあの場から逃げてしまわれましたでしょう?
途方に暮れたわたくしは、春人のさんの言葉の記憶を読み取り、この姿に化けたのです。」
言葉の記憶…?
なんだ、それ。
「判らないようですね、言葉の記憶。
簡単に言ってしまえば言葉から頭に浮かんだものを読み取るんです。」
言葉から読み取る…
つまり夢見みたいなものか。
「春人さんが『学校』と口にされたとき、浮かんだのはこの娘の顔でした。
わたくしたちは無人について詳しく知りません。
だから、この娘に化けたのです。
もちろん春人さんの言葉の記憶を参考にして。」
葉詩はのんびりと先を続ける。
「そして学校とやらに向かった…それだけのことでごすわ。
何かございますか?」
「・・・なんで俺を『春人くん』と呼んだんだ?」
「はい?」
「文無月さんは俺を『春人くん』とは呼ばない。
言葉の記憶で彼女を詳しく知っていたのに、なぜ『春人くん』と呼んだ?」
細かいことだが、おかしいんだ。
さっきから気になってしょうがない。
「簡単なことですわ。春人さんがこの娘に呼ばれた記憶が見当たらなかったんです。」
え?
「だから、適当に呼んでみただけですわ。」
えぇ?
「何かございますか?」
パニックを起こした頭でよくよく考えてみると、文無月さんに名前を呼ばれた記憶がないことに気づいた。
いつも「あ。おはよう!」とか、「瑞ノ江いる?」とか、そんな会話ばかりだった。
なんつぅーことだ・・・
俺は勝手に文無月さんに呼ばれるところを想像してたのか・・・
とても痛い少年じゃないか・・・
悲壮にくれる俺を見て、葉詩はにやにやと顔を歪める。
「春人さんにとって学校は、この娘に会うための場なんですね…」
生徒の声が響く廊下の端で俺は顔を真っ赤にしながら、葉詩の話を聞いていた。
本題に入れませんでした。(+_+)次回こそ入ります! またよろしくお願いいたします♪