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あ! やせいのシカがとびだしてきた!

作者: 藤田大腸

一度ジビエを食ってみたいです。

 私の職場は車が無ければ通勤ができないような辺鄙なところにあります。そのために上司からは交通事故や交通違反を起こさないように口酸っぱく言われているのですが、もう一つ注意されることがあります。


 それはシカとの遭遇です。


 実は職場の周辺はシカの出没スポットになっており、よく接触事故が起こるので地域では少々問題になっております。実際、私も車を走らせていると何度かシカに出くわしました。時間帯は夜中が多く、夜勤帰りは細心の注意を払わないといきなり茂みから出てきてぶつかる、なんてことになりかねません。あいつらは車を見ても逃げようとはしないのです。


 つい先日の夜も、シカが堂々と道路の上にいやがりました。相手はビビるどころか「何だこいつ」みたいな感じで私の車を見てきました。ただし、この場合は慌てずに一旦停止して何回かパッシングとクラクションをかませばどいてくれます。


 一番厄介なのは死んだシカです。


 通勤路は田舎道とはいえ渋滞しやすい国道の迂回路になっていて、そのせいでトラックの通行量がやたらと多い。こいつに轢かれてミンチと化したあわれなシカが車線を塞いでいることがあり、もう気持ち悪いことこの上無いので精神的に参ってしまいますし、何よりも交通の妨げになってかなり危ない。朝昼だと保健所がすぐ駆けつけて死体を片付けてくれるのですが、夜間だとそうはいきません。グロい死体をなるべく目に入れぬよう、うまく避けて通る技量が運転手に求められます。


 轢いた運転手が勇敢にも死体に触れて道脇にどける場合もありますが、感染症の恐れがあるので素手で触らざるを得ない場合はやめた方がいいでしょう。ちなみに私は半年前、あきらかに人の手によって側溝に詰め込まれた哀れなシカの死体を目の当たりにして何とも言えない気持ちになりました。まだ原型を留めていただけ幸いでしたが。


 さて、シカは図体がでかいので接触事故を起こしてしまえば車にもそれなりのダメージがあります。この場合は物損事故扱いになるので車両保険で支払われることになります。ただしエコノミー型の保険の対象外です。私の同僚がシカにぶつかって車体をベコッと凹ませてしまったことがありましたが(シカは死なずにそのまま逃げました)、加入していた車両保険がエコノミー型だったために諭吉を何人も使って修理するハメになりました。車通勤を余儀なくされるためにだだでさえ維持費がかかるのに、シカとの事故で修理代を払うとなると薄給の身にとっては相当な痛手です。


 事故防止のために自治体も専門部署を設けてシカの駆除に当っていますが、何せ四方が山だらけの場所なのでそこに住むシカの頭数も当然多く、なかなか仕事が追いついてないのが現状です。


 たまに夜勤が終わって車に乗ろうとする時に、遠くから「ピィィー……」という鳴き声が聞こえてくることがあります。「これから俺たちが夜道を歩くから気をつけろよ」というシカなりの警告なのかもしれません。こちらとしては大人しく山にこもっていただきたいのですが。

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― 新着の感想 ―
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