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第76話 斯くして黄昏の鐘は鳴る

 金曜日の授業が終わると、生徒達が揃って喜びの声を上げるのは、普通の高校でも特高でも同じであった。


「いやー、今週は楽で良かったわっ!」

「実質、四日しか授業してませんからね」


 教師達が何やら忙しかったらしく、月曜日は全学年の授業が実習だったのだ。

 まさか、日曜日に中国人転校生が担任を刺し殺そうとし、その報告や後始末に追われたり、特殊部隊が来るまで英雄の警護で忙しかったなど、生徒達は知る由もない。


「何より、CEの相手をせんで済んだしな」

「…………」


 嬉しそうな映助の横で、宗次は複雑な表情を浮かべる。

 今まで五日前後の周期で襲撃を繰り返してきたCEが、原子力発電所であの人間型と戦って以来、既に十日も経っているのに一度も攻めて来なかったからだ。


(名古屋方面に向かったという話も聞かない。偶然であればいいが……)


 その可能性はおそらく皆無。原発を狙うなんて知性を見せたCEが、何の理由もなしに今までの行動パターンを変えるなど有り得ない。


(新たな策を練っているのか、力を蓄えているのか)


 どちらであろうと、何のためにそんな事をするのかは、考えるまでもない。

 ピラーを破壊しCEを滅ぼせる唯一の存在、英雄・天道寺英人を排除するため。

 ただ、そんな推測を立てた所で、宗次に出来る事は変わらない。


(敵を貫き皆を守る。だが……)


 果たして守り切れるのか、微かな不安が胸に過ぎる。

 彼の責任ではないが、人型CEとの戦いで四十名以上が重傷を負うという、特高が開校して以来の大被害を出したばかりだ。

 もしも、あれを超えるほどの強敵が現れた時、果たして自分は勝てるのか。

 そんな危惧を抱いていると、背後から呼びかけられた。


「そ、宗次君っ!」


 声の主は剣道少女こと平坂陽向、緊張のためか声は上ずり、額には汗まで浮かべている。


「何だ?」

「あ、あのね、あし、明日……」

「陽向ちゃん、ファイトですよ~」

「が、頑張って……っ!」


 離れて見守っている親友達の声援を受け、陽向は勇気を振り絞って叫ぶ。


「明日、私と一緒にお出かけしないっ!」


 デートという単語を使えない辺りが、微妙にヘタレてはいたが、それでも彼女としては人生で最大の奮闘を見せたお誘い。

 それに対して、宗次は少し驚いたものの、悩みもせずに頷き返した。


「分かった」

「えっ、いいのっ!?」


 自分で言い出したくせに、信じられなくて確認してくる陽向に、宗次は微笑して再び頷く。


「あぁ、明日は陽向さんに一日付き合う」

「や、やったぁぁぁ―――っ!」


 陽向は両手を高く掲げ、剣道で全国大会出場が決まった時より、百倍以上も大喜びして飛び上がった。

 その姿に、見守っていた心々杏と神奈も、思わず駆け寄って抱き着いた。


「陽向ちゃん、ついにヘタレ脱却したですね~っ!」

「よ、よかったね……っ!」

「ありがとう、二人のおかげよっ!」


 感涙して親友達と抱き合いながら、陽向は一瞬だけ黒い表情を浮かべる。


「性悪ピンクツインテール、あんたにだけは負けないわよ……っ!」


 まだ誤解していたらしく、今頃は病院で寝ている誰かさんに対抗心を燃やす。

 宗次が彼女の誘いを直ぐに受けたのは、その誰かさんのお陰ともはつゆ知らず。


(頑張れと、言われたしな)


 性悪な少女に答えた通り、戦いが続く以上は恋人を作りたいとは思えない。

 ただ、曖昧な己の心を見詰め直し、慕ってくれる陽向達にどう応えるのか、答えだけは出しておきたい。

 それが、彼女を振った自分なりのケジメだと、宗次は決めていたのだ。


「それで、出かける先だけどね」


 親友達とひとしきり喜び合った陽向が、眩い笑顔を浮かべて明日の予定を話し出す。

 宗次も笑顔を浮かべ、それに耳を傾ける。


「兄弟、幸せになるんやで……なんて言うと思うたかっ!」

「皆、準備は出来ているな?」

「「「モテ男に死をっ!」」」


 クラスの男子達から浴びせられる黒い殺気に、体術でどう応えるか考えながら。





 そしてデートの当日、陽向は己がロマンスの神様に見捨てられている事を改めて悟った。


「何で、貴方がここに居るの?」

「それはこちらの台詞だよ、子猫ちゃん」


 ばったりと出くわしたイケメンの先輩、先山麗華と火花を散らして睨み合う。

 陽向と宗次の二人が向かったのは、沢山の犬と触れ合う事ができる、郊外に建てられたドッグカフェ・名犬牧場。

 遊園地や映画館のような場所で二人きりになると、陽向が緊張感に耐えられないだろうから、可愛いペットを交えて和めばどうかという、心々杏達と三時間も作戦会議して決めた場所であった。

 しかし、運悪くそこにはライバルが居たのである。それも一人ではない。


「おぉ、奇遇でありますな宗次殿っ!」


 ブロンドの英国美少女ことシャロが、満面の笑みを浮かべて宗次の腕に抱き着く。

 豊かな胸を押し付けられて、流石の槍使いも照れている姿に、体の一部が平らな猪娘とイケメン先輩は揃って歯軋りするのであった。

 そんな彼女達を見て、最後の一人がとても気まずい顔で謝罪する。


「申し訳ありませんわ、まさかこのような事になるとは思わず……」


 ドリル上の黒髪を揺らしながら頭を下げたのは、生徒会長こと神近愛璃。

 犬が大好きな彼女は、前から休日にはよく名犬牧場に通っており、麗華は親友である彼女の付き添いで来ていたのだ。


「シャロも生徒会長達と一緒に?」

「はい、前にお話を聞いて、是非来てみたかったでありますよっ!」


 宗次の質問に、シャロは笑顔で頷いた。

 強力だが集団戦闘では扱い辛い、彼女の幻想兵器・グルファクシス。

 それを活用する方法として、愛璃を筆頭とした三年A組を乗せて運ぶ事になったため、共に訓練する内に仲良くなり誘われたのだ。


「どうして、こんな事に……」


 せっかく勇気を振り絞ったデート先で、最大のライバル二人と遭遇するという不幸に、陽向は心を折られてさめざめと泣いた。

 しかし、悲しんでいる余裕はない。


「宗次殿、こっちのチワワが凄くプリティーでありますよっ!」

「宗次君は犬が好きかい? ボクは月並みだけれど、結婚したら一軒家で犬を飼いたくてね」


 他人の不幸は蜜の味と、思わぬ幸運の出会いに感謝したライバル達が、彼女から奪うように宗次の腕を引っ張りだしたからだ。


「あんたら、ちょっとは遠慮しなさいよっ!」

「本当に申し訳ありませんわっ!」


 負けてたまるかと復活した陽向に、愛璃は再び謝るのであった。

 ただ、空気が険悪だったのも最初だけの事、園内の愛らしい犬達に触れ合って、少女達の心は直ぐに和むのであった。


「はわぁ~、可愛いでありますな~」

「散歩が大変そうだけど、飼うならやはり大型犬かな」

「宗次君、あれ、フリスビー投げるのやろうっ!」


 小型のダックスフントから大型のレトリバーまで、様々な犬が人懐っこく寄ってくきて、陽向達は夢中になって遊ぶ。

 宗次はそれに一時間ほど付き合ってから、少し疲れて一人カフェの席に座った。

 そこへ、愛璃が二人分の飲み物を手にやってくる。


「槍と違って、女の子の相手は苦手かしら?」

「小さい子の相手なら慣れているんですが……」


 宗次は苦笑しつつ、ありがたく飲み物を受け取って口をつけた。


「しかし、最前線の前橋に、こういう施設が残っていたのも不思議ですね」


 犬好き達の前で失礼だとは思うが、CEとの戦争で物資が不足し、物価上昇が続いているなか、テーマ―パーク等は真っ先に経営が悪化して潰れそうなものであったが。

 そう言うと、愛璃は苦笑しつつ答えた。


「実際、経営は苦しいそうですけれども、終わらない戦争で心の癒しを求めた方が多いのでしょう、客足はあまり減らず、どうにか続けられているそうですわ」


 二年間、通い詰めて仲良くなったスタッフから聞いたのだろう。

 愛璃の言う通り、土曜日という事を差し引いても結構な人が訪れていた。


「ただ、遊園地など幾つかの施設は閉まってしまいましたわね」


 彼女達三年生がこの前橋市に来たのは二年前、CEとの戦争が膠着状態に入って長い頃合いである。

 人々の恐怖は自衛隊で迎撃できていた敵よりも、高まる税金や商品の高騰による不安の方が大きかっただろう。

 真綿で首を絞められるような、閉塞した日常。

 だがそれも、ようやく終わりが見えてきた。


「この戦いが終われば、街も元の活気を取り戻すでしょう。そう思えば頑張る活力が湧きますわ」


 愛璃はそう言って、カフェの端に置かれたテレビに目を向ける。

 そこでは、この戦いを終わらせる英雄・天道寺英人の活躍を称える番組が流れていた。


『この動画をご覧ください、まるで映画のような光景ですが、間違いなく現実です。長野市に現れた巨大なCEを、天道寺英人さんが幻想兵器を使って打ち倒したのです!』


 防衛省のサイトにも掲載された、巨大CEを倒す瞬間の映像を流して、彼がいかに凄いか、彼ならばCEを滅ぼせると煽り立てる。

 それを眺め、宗次は少し不安な気持ちを抱く。


 今から四カ月ほど前、彼が特高に入学する以前は、幻想兵器やそれを使うエース隊員の事は、ここまで世間に浸透してはいなかった。

 ネットを使いこなして情報収集を行い、天道寺刹那を知って憧れた若い世代はともかく、テレビや新聞しか見ない中高年層などは、存在自体は知っていても、どこか遠い世界のように関心を抱いていなかった。


 だが、今は違う。愛犬を遊ばせに来た老人や、母親に手を引かれた幼稚園児くらいの子供まで、テレビ画面に映る天道寺英人の活躍を見て、心からの笑顔を浮かべている。

 彼ならピラーを破壊できる、この閉塞した戦争を終わらせられる、増税や物価、失業率の上昇など、あらゆる問題の元凶を打ち砕き、我々を救ってくれると。


 そこにあるのは願い、そして思い込み。

 自分達は何もせず、何も払わずとも、平和は与えられて当然という傲慢な認識。

 英雄を求めながら、自らが英雄になろうとはしない、怠惰で無責任な『一般人』という名の特権階級。


「…………」

「顔色が悪いですけれど、体調が優れませんの?」

「いえ、大丈夫です」


 心配した愛璃に顔を覗き込れ、宗次は頭を振って否定しながら、同時に嫌な思考を振り払う。

 彼は祖父母や故郷の人々といった『一般人』を救うために、エース隊員となって戦う道を選んだのだ。

 その事に後悔はなく、平和が訪れる事を心から望んでいる。

 だが、たった一人の少年に英雄や救世主という十字架を背負わせ、CEと戦わせるような風潮は、はたして正しいのだろうか。

 考えても答えは出ない。そして、今はもっと考えるべき切実な問題がある。


「生徒会長、お付き合いしている男性はいますか?」

「げほっ!」


 宗次の突然すぎる質問に、愛璃は思わず飲みかけのオレンジジュースを吹き出してしまう。


「貴方、何のつもりですのっ!?」

「お付き合いしているのでしたら、その経緯などを聞かせて欲しかったのですが」

「あぁ、そういう事ですの……」


 宗次の説明を聞いて、愛璃は自分が早とちりしていたと知って、赤面しつつも胸を撫で下ろす。

 この場で愛の告白などされたら、嬉しくないとは言わないが、親友含め三人の少女達から袋叩きにされる所であった。


「残念ながらお付き合いしている男性はいませけれど、その手の相談はよく受けていますから、参考程度のお話ならできますわよ」


 そう言って促され、宗次は素直に聞いてみた。


「恋愛的な意味で、人を好きになるとは、どんな感情ですか?」

「これはまた、哲学的で難しい命題ですわね……」


 愛璃は質問に驚きつつも、別の所で納得する。

 麗華達から分かりやすく好意を向けられている彼が、どうしてその想いに応えていなかったのか。

 目の見えぬ者に空の青さを伝えるような難しい問題に、愛璃は少し考えてから、実に単純な答えを口にした。


「特に恋愛だから友情だからと、『好き』を分けて考える必要はないと思いますわ」

「そうですか?」

「えぇ、こんな事を言うと、世界中の恋愛小説家の皆様からお叱りを受けそうですけれども」


 そう冗談を言って微笑し、悩める後輩に先輩らしく助言する。


「夢に見るほど恋い焦がれたり、命を散らすほど深い愛でなくとも、ずっと共に居たいと思える方に出会えたのなら、それは恋愛よりもずっと素敵な『好き』だと思いますわ」

「ふむ……」

「例えばですけれど、特高を卒業して皆と分かれる事になった時、貴方はどう思いますかしら?」

「えっ……」


 思いもよらなかった指摘に、宗次は一瞬愕然とした。

 CEとの戦いはもう直ぐ終わる。人々の望んだ英雄が終わらせる、そうなると世界中の人間が思い込んだから。

 そうして戦いが終結すれば、もはやエース隊員は存在する意義を失い、特高も閉鎖されるだろう。

 一年D組の仲間達と過ごした短くも濃厚な日々は、平和の訪れと共に終わるのだ。


「卒業が決まった時、別れたくない、ずっと一緒に居たいと思った、誰かの顔が浮かびませんかしら?」

「…………」


 返事も出来ず黙り込む宗次の脳裏には、確かに様々な人の顔が浮かんでいた。

 この群馬県前橋市で最初に出会った親友・映助の顔に始まり、一樹、心々杏、神奈……クラスメートだけでなく、京子や大馬といった教師達の顔も浮かぶ。

 だが、その中で一番強く鮮やかに輝いていたのは――


「願わくば、私の親友を選んで欲しいのですけれどもね」


 考え込む宗次には聞こえないよう、愛璃は小さく呟いた。

 そこへ、ようやく子犬達の魅了から解放された、三人の少女達が駆け寄ってくる。


「愛璃、これはいったい何の真似かな?」

「お姉様だけ宗次殿と一緒にお茶なんて、ずるいでありますっ!」

「宗次君、ドリル髪お嬢様が好きなの……?」

「私、貴方達の手助けをしていましたのよ?」


 なのに酷い言いぐさだと憤慨する愛璃と、誤解して騒ぐ陽向達を見て、宗次は物思いから抜け出して微笑した。

 一応の答えを掴み、迷いが消えた彼が知る由はない。

 この面々で集まって、屈託なく笑い合えたのは、今この時が最後だったなどと。





 名犬牧場の後もボウリングやカラオケに行ったのだが、結局は五人で行動する事になってしまい、陽向がデートに失敗して落ち込んだりしつつ、休みが明けた月曜日。

 授業が終わって生徒達が寮に帰り始めた頃になって、それは起こった。


 ウゥーッ、ウゥーッ!


 CE出現の聞き慣れたサイレン、しかし、この時間帯である事に皆が驚きの表情を浮かべる。

 人の意識が夢から覚める頃合いを狙ったように、早朝から昼頃にかけて襲撃してくる事が多いCEが夕方に攻めてくるなど、一年生は初めての経験であり、上級生でも直ぐには思い出せないほど久しぶりであったからだ。


「授業で疲れ切った後に襲撃とか、勘弁して欲しいわ……」


 映助でなくとも愚痴を零したくなる話であったが、皆は疲れた体を走らせて装甲車に乗り込んだ。

 そうして慣れ親しんだ長野県御代田町に到着し、一時間ほどしてCEの姿が見えてくる。

 夕日を受けて赤く染まったCEの姿は、見慣れた六角柱型ばかり。

 前に出現した長距離狙撃を行ってくる協力型を警戒し、双眼鏡を使って何人もで調べるが、巨大なコアを持ったタイプは見当たらない。


 それでもエース隊員達は警戒を怠らなかったが、危機感を抱いてはいなかった。

 何故なら、陣形の中央では九名に減った美少女を従えた、日本を救う英雄が控えていたからだ。

 どんなに嫌おうと、どれほど妬ましく思おうと、英雄・天道寺英人はCEに絶対負けないと、エース隊員達さえも思っていたから。


 例外が居るとすれば、英雄に全てを背負わす事に疑問を抱いた槍使いくらいであろう。

 だが、彼一人の認識では、世界中の何十億人という意識の大海には抗えない。

 人々が信じる限り、英雄は世界を救う。

 ならば、世界を滅ぼせるのもまた、英雄だけではないだろうか。


 キイイイィィィ―――ンッ!


 荒れ果てた代田町の大地に、突如として甲高い音が鳴り響く。

 聞き覚えのある耳障りな高音、一人の少年が死ぬ事となった、あの悪夢を招いた音色。

 怖気を覚えるエース隊員達の前で、突如として地面から結晶の柱がそびえ立つ。

 七色の不気味な光を放つCEの拠点・ピラー。

 それも、今まで三度現れた小型の物とは違う、五十mを超える中型ピラーとでも言うべき代物。


 西日を受けて大地に長い影を落とすその柱に、誰もが驚きの表情を浮かべる。

 だが、真の驚愕と恐怖はここからであった。

 ピラーの全面から放たれる七色の光が、付け根の一点に集まっていく。

 それと同時に、光を失った部分が灰のように黒ずみながら、深いひび割れが生まれたのだ。


 ピシピシッ、パリィィィ―――ンッ!


 まるで内部で爆発でも起きたように、ピラーは自ら粉々に砕け散る。


「えっ……!?」


 皆は唖然としながら、降り注ぐ結晶の雨に見入る。

 粉雪のように舞い散り、夕日を受けて赤い輝きを放つその光景は、どこまでも幻想的で美しい。

 だが、もっと美しいモノが、砕けたピラーの根元に立っていた。


「そんな……」


 真っ先に気付いたのは、双眼鏡を覗いてた数人。

 続いて、生徒達のヘッドセットカメラが捉えた映像を拡大した、指揮所の教員達が気付く。

 そして、肉眼で見ていた残りの生徒達も、ほんの数秒でそれが何か理解した。


 手足は甲冑のような結晶体に覆われており、一目で人間ではないと分かっても。

 トレードマークであった黒い長髪が、透き通る青い輝きに変わっていても。

 その美しく整った顔立ちを、巨大な剣を手に立つその雄姿を、誰であろうと見間違うはずなどなかった。

 最初の幻想兵器使い、救国の英雄、剣の聖女、その名は――



「……天道寺、刹那」



 英雄を殺せるのは英雄だけ。

 そう宣言するように、死せる少女の姿をしたCEの英雄は、人間の英雄達に向けて輝く結晶の大剣を構えた。








挿絵(By みてみん)


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