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英雄《しゅやく》になれない槍使い  作者: 笹木さくま(夏希のたね)
第5章・天を舞う竜は、地を這う獣の心を知らない
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第25話 初陣

「つ、ついにワテらも実戦デビューか、腕が鳴るわ」


 装甲車の中で、宗次の隣に座った映助の声は、勇ましい台詞に反して微かに震えていた。

 それも当然であろう、まだ二ヶ月は先だと思っていた戦場に、いきなり放り込まれるのだから。

 しかも、実戦経験豊富な二、三年生の手助けもなく、未熟な一年生だけで向かうのだ。


「ひ、ひぅ……」

「大丈夫、ちゃんと無事に帰れるわよ」


 今にも泣きそうな神奈を慰める陽向も、手が微かに震えている。


「みんな、緊張したら力が出せないぞ、深呼吸してリラックスだ!」

「すーはー、すーはー」


 ロリコンの優太はこんな時も優等生ぶりを発揮して、一樹に深呼吸をさせているが、本人の膝はカクカクと震えている。

 他の乗員達も同じような様子で、落ち着いているのは不良時代の修羅場で慣れた心々杏と、頭に装着したヘッドセットを弄る宗次くらいであった。


「あーあー、これ聞こえているのか?」

「指揮所の先生達には聞こえているみたいですよ~」

「皆の声は聞こえないのか?」

『ごめんね、本当は生徒同士でも通信できるんだけど、分隊も決めていないのに通信を可能にすると、逆に混乱すると思って止めているのよ』

「むっ、京子先生?」


 急に耳元から京子の声が響いて、宗次は少しだけ驚く。

 周りを見れば、皆も驚いた顔をしており、保健医の声は全員に聞こえていたようだ。


『その装甲車に乗っている、君達十二名への指示は私が担当します。いいわね?』

「「「は、はい」」」

『よい返事ね。では、今から作戦内容を説明します』


 京子の声に応じて、ヘッドセットの左目を覆う透明なディスプレイに、前橋市の周辺地図が映し出される。


『黒檜山に出現したCEは県道四号線沿いにゆっくりと南下中、これを畜産試験場前の交差点で待ち受け、三クラス全員で迎撃します』


 周辺が田畑で視界が開けており、敵の進行速度と合わせても、そこが一番戦いやすいのだ。

 しかし、地図を見ていた陽向が思わず立ち上がって叫ぶ。


「ま、待って下さい、この先にも沢山民家があります、そこに住んでいる人達はどうするんですかっ!?」

『避難勧告は既に出してあります』


 普段の優しい保健医のものとは違う、冷たく事務的な声で言い切る。

 仮に逃げ遅れている者がいたとしても、救いには行かない、その余裕は無いのだと。


「……っ」


 その意味を理解して、陽向は唇を噛んで座り込む。

 全ての人を救う絶対的な力が、大軍すら薙ぎ払う無敵の能力が、非力な彼女にはない。

 だから、京子の冷徹な判断に反論する資格は無いのだと、痛いほど分かってしまった。


「悔しい、何で私は……」

「…………」


 他の皆も陽向と同じ気持ちなのだろう、暗い顔で俯いてしまう。


「あのスケコマシなら、何とかしたんかな」


 ポツリと漏れた映助の呟きが、皆の胸に突き刺さる。

 ――ボク達は英雄に成れない。

 先山麗華の告げた言葉が、今になって実感となり心を蝕んでくる。


(まずいわね……)


 明らかに戦意が落ちていくのを感じ取り、通信機の向こうで京子は軽く爪を噛む。

 恐怖でパニックを起こすよりはマシだが、低下した精神状態ではCEとの戦闘に支障が出てしまう。

 幻想兵器の元となる幻子は、人の感情によってエネルギーを発生させる謎の粒子。

 つまり、精神の活力が低下すれば、幻想兵器や幻子装甲の性能も低下してしまう。


 特高のエース隊員達が、特殊部隊にしては温い訓練しか課せられないのも、この性質が原因であった。

 過酷な訓練によって培われた、忠実に任務を遂行する強靭な精神では、優秀な兵士には成れても、感情の起伏が少なくなって幻想兵器が使えなくなるからだ。

 そもそも、高校生の子供達を戦わせているのとて、大人は感情の揺れ幅が少ないからか、幻想兵器を上手く発現できないからである。

 無論、その他にも理由は有るし、例外は存在するのだが。


『皆、よく聞いて――』

「先生」


 何とか生徒達を鼓舞しようとした京子の声を、宗次の静かな声が遮る。


『何かしら?』

「敵の数はいくつですか」

『……約二百体よ』

「そうですか」


 さらに士気を下げないかと、僅かに逡巡してから告げられた数に、宗次は小さく笑みを浮かべた。


「一人が二体ずつ倒せばいいんですね」

「えっ……」


 あまりにも単純明快な計算に、俯いていた皆も顔を上げる。

 たった二体倒せばいい。

 その明確な目標は、無数のCEという漠然とした恐怖を、手の届く希望へと変えてくれた。


 皆の顔色が戻ってくるのを見て、心々杏も便乗する。


「先生~、この辺の人口ってどれくらいですか~?」

『えっ? 今は三十万人くらいだったかしら』


 京子が驚きながらも答えると、ロリの皮を被った元不良は、ニヤリと不敵に笑みを浮かべた。


「じゃあ、私達って三十万人を救う英雄ですよね~、報酬はいくら貰えるでしょうか~?」

『危険手当が少しは支払われるけど、特別な報酬は――』

「はい、京子先生のおごりで焼肉パーティー決定です~っ!」

『何でっ!?』

「大馬先生にも払って貰いますよ~」

『ふっ、分かったからちゃんと帰ってこい』


 急に話を振られた大馬も、苦笑して通信に混ざる。

 そんな普段の授業風景を思わせるやり取りに、皆も一斉に吹き出した。


「心々杏、女子が焼肉をたかるのは無いんじゃない?」

「せ、せめてスイーツで……」

「僕、駅前のカフェで行ってみたい所があるんです」

「どうせおごりなら、ここは風――」

「やめろ映助君、戦闘前に死にたいのか」


 明るく笑い合うその態度は、己の恐怖や無力感を隠す空元気でしかない。

 だが、見栄や意地であろうと無気力よりは遥かにいい。


『二人とも、助かったわ』

「そうですか?」

「貸し一ですよ~」


 宗次と心々杏の二人だけに聞こえるよう、京子はお礼の通信を送る。

 そうして、士気が回復してきた所で、装甲車が停止した。


「…………」


 皆が無言で固唾を呑み、後部扉から外に出る。

 四方が畑で遠くまでよく見える十字路の先に、まだ結晶体の姿は無い。

 しかし、確実に直ぐ近くまで迫っていた。


『あと五分ほどで視界に入るはずよ、まずは幻想兵器の準備を』

「「「武装化っ!」」」」


 気合を入れるため、全員が大声で己の武器を呼び出す。

 幻子の光が形を変え、生み出された剣や槍は、普段よりも強い輝きを放っていた。


『実戦に伴い制限を解除しているわ。それが本来の幻想兵器よ』

「これが……」

『間違っても味方には当てないように、下手をすれば一発で幻子装甲を貫通するわよ』

「……っ」


 練習用に何十分の一にも力を抑えた、普段の物とは全く違う。

 彼らの手にあるのは、まさに幻想の世界から抜け出した、怪物すら狩るほどの兵器。


『攻撃の手順は上級生達の戦いで知っているわね? まずは射撃武器で遠距離から攻撃』

「は、はいっ!」


 スリング紐を手にした一樹が、緊張しながら応える。


『撃ち終わったら、盾役を先頭に距離を詰める』

「わ、分かりました……」


 神奈が大きな盾に隠れつつも頷く。


『あとは近接武器で叩くだけ。ねっ、簡単でしょ?』

「おう、やったるで!」


 映助は棍棒を振り回し、必死に自分を奮い立たせる。


『行動の合図はこちらで出すわ。けど、次からは君達自身で判断する事になる、よく勉強しておくのよ』

「はいっ!」


 クラスの委員長かつ小隊長を目指している優太が、弓を手に深く頷く。

 そうして手順の確認も終わり、ただ敵の到着を待つ数分は、まるで何時間にも感じられるほど長かった。


「はぁ、はぁ……」


 緊張のあまり、戦いの前から息が荒くなる陽向の肩に、そっと宗次の手が乗せられる。


「怖いか?」

「……うん、やっぱり怖い。全国大会の時だって、こんなに怖くなかったのに」

「そうだな」


 見栄を張らず頷く陽向に、宗次も同意する。

 命を落とす、死の恐怖がある戦いは、彼とて初めてなのだから。


「ただ、俺は嬉しい」

「えっ……?」

「ずっと無駄だと言われてきた槍術で、誰かの役に立てる。こんなに嬉しい事はない」


 ――銃弾が飛び交うこのご時世に、槍なんてまさに無用の長物。

 師匠である祖父自らがそう言い、彼も反論できなかった事実。

 ――平和なこのご時世に、武術なんて覚えて何の役に立つ。

 六年前までは常識として、何度もかけられた心無い言葉。

 それが幻想によって覆り、振るうべき槍を得て、倒すべき敵が前にいる。


「戦えるという事が、ただ純粋に嬉しい……野蛮かな?」

「男の子だね」


 宗次の子供っぽい一面を垣間見て、陽向は優しく笑う。

 彼女も剣道を習っていたから、共感できる部分があったからだ。

 ただ、やはり女と男は違う。


「こんな時は『俺が守ってやる!』とか言うものだよ」

「できる保証がない、嘘を吐くのは嫌だな」

「も~、君はロマンがないんだから」

「でも、そんな真面目なところに惹かれたんですよね~」

「うひゃおっ!」


 耳元でいきなり心々杏の声が響き、陽向は奇声を上げて飛び上がった。


「ちょ、な、聞いてたのっ!?」

「この距離で聞こえないと思っていた事が驚きなんですけど~、ねぇ~?」


 心々杏が周囲に同意を求めると、D組の男子生徒達は一斉に舌打ちした。


「こんな時にイチャついてんじゃねえよ!」

「将校の何割が背後からの銃弾で倒れたか知ってるか?」

「うぎぎぎっ、兄弟、ワテら非モテ同盟を裏切るとは……っ!」

「宗次さんは最初から参加してないと思いますけど」


 一樹以外のほぼ全員が、CEへの敵意を超えた殺意の視線を送っていた。

 そこへ落ち着けと、心々杏がさらなる爆弾を投げる。


「喧嘩しなくても、これが終わったら先生がキスしてくれるそうですよ~」

『えっ?』

「皆、この一戦にワテらの全てをぶつけるんやっ!」

「「「おぉーっ!」」」


 驚く京子の声も聞こえぬ様子で、D組のアホ達は雄叫びを上げる。


『ちょっと、小向井さんっ!?』


 慌てふためく京子に、心々杏は心底邪悪な笑みで応じる。


「京子先生、私は『先生』としか言っていない……分かりますよね~?」

「悪魔か、あんたは」

「お、大馬先生のブラザーで大乱闘、でゅふふふ……」


 呆れ果てる陽向の後ろで、神奈は必死に鼻血を堪えていた。

 そんな風に緊張が解けたところで、視界に輝く結晶体の群れが現れる。


『射撃部隊、前に出て』

「は、はい!」


 三クラスの射撃装備持ち、二十名あまりが前列に出た。


『CEは大勢の人がいる方に向けて移動する性質があるの。だから焦らなくてもこちらに寄ってくる、十分に引き付けるのよ』


 今にも攻撃を始めようとする生徒達を、京子は静かな声で諫める。

 三百m、二百mと徐々に大きく見えてきた敵が、百五十mの距離まで近付いた所で、張り詰めた弓を解き放つ。


『撃てっ!』

「「「うおぉぉぉ―――っ!」」」


 雄叫びを上げて放たれる二十の矢と弾丸。

 それは狙い違わず、最前列の結晶を次々と撃つ砕く。


「当たったっ!」

『良くやったわ、でも次弾急いで』

「はいっ!」


 自分達の攻撃がCEに通じて、自信を得た生徒達は次々と飛び道具を放つ。

 それを褒めて鼓舞する京子の横で、指揮官である綾子は敵に与えた損害を冷静に計測していた。


「全弾命中、だがコアの破壊率は五割といったところか」

「『必ず急所に当たる』という能力の幻想兵器は少ないですから」

「そうだな、むしろ良く当てている方か」


 オペレータの言葉に、綾子は頷いて同意する。

 その間に幾度も射撃が繰り返され、六十体も倒したところで限界が訪れた。


「はぁはぁ……体が、凄く怠い……」


 息を荒げた一樹がいくら念じても、次のスリング石が形成されない。


「何でだ、訓練の時はもっと撃てたのに」


 優太も矢は作り出せたが、弓の弦が急に重くなって引けなくなってしまう。


『よく頑張ったわね、あとは皆に任せて下がりなさい』

「は、はい……」

「すまない、皆頼んだぞ」


 射撃部隊は装甲車の傍まで下がり、ついに九十名の近接部隊の出番となる。


『盾隊、前に出て』

「ひ、ひぅ……」


 悲鳴交じりに頷く神奈を含む、九名の盾持ちが最前列に出る。

 贅沢を言えばこの倍ほど盾役が欲しいのだが、そもそも幻想兵器は武器、特に白兵武器が出る割合が多いので、ない物ねだりをしても仕方がない。

 この九名で残るCE・百四十体の攻撃を受け止めねばならないのだ。


『合図と共に全員突撃するけど、これが成功するかどうかは貴方達に掛かっているわ』

「ひぃ、ひぃ……」


 神奈はプレッシャーのあまり、過呼吸気味になってしまう。

 転んだらどうしよう、攻撃を防げなかったらどうしよう……。

 嫌なイメージが頭の中をグルグルと回り、今にも倒れそうな彼女の肩が、両側から支えられた。


「神奈、失敗しても大丈夫よ、私達がなんとかするから」

「ただ前に走ればいいだけですよ~」

「ひ、陽向ちゃん、こ、心々杏ちゃん……」


 二人の手から伝わる温もりに、神奈の呼吸も静まっていく。

 それを見計らったように、京子がカウントダウンを始めた。


『皆、準備はいいわね? 五、四、三、二、一……全員、突撃っ!』

「「「うおおおぉぉぉ―――っ!」」」

「わ、わぁーっ!」


 雄叫びを上げて突撃する皆の前を、神奈は精一杯の声を上げて走る。

 怖くて前が見れず、盾で隠した彼女達が、三十mの距離を切った瞬間、今まで味方が倒されても無言の行進を続けていたCE達が、一斉にコアから赤い光線を放った。

 味方に射線が塞がれていない、前方のCEだけとはいえ、六十を超える光線が一度に放たれる光景は、これが戦場でなければ美しいレーザーショーであっただろう。


「ひ、ひぃっ!」


 盾越しでも目を潰されそうな凄まじい光が、最強の盾に当たって弾ける衝撃に、神奈は悲鳴を上げて尻餅を付いてしまう。

 しかし、彼女は初撃から仲間を守り切るという、盾の役目を立派に果たしたのだ。


「グッジョブですよ~」

「後は任せて!」


 神奈にエールを送りながら、その横を心々杏や陽向が駆け抜けていく。

 次の攻撃に向けてチャージを開始するCE達。

 そこへ一番槍を突きたてたのは、意外にも宗次ではなく、罰で一番グラウンドを走らされていた男、映助であった。


「我がモテ道のために死ねやっ!」


 どこまでも低俗で正直な雄叫びと共に、オリーブの棍棒が振り下ろされる。

 仮令相手がライオンでなく、幻想兵器の特殊能力が発動せずとも、その一撃はCEの透明な体を砕くのに十分な重さであった。


「よっしゃあっ!」

「まだだ、コアが残っている」


 歓声を上げる映助の横から蜻蛉切が伸び、結晶を砕かれ剥き出しとなった赤い球体を貫いた。


「あっ、ずるいで兄弟!」

「そんな事を言っている場合じゃないでしょ!」


 手柄を奪われたと騒ぐ映助の横で、陽向も見事な唐竹割で、目の前の敵を一刀両断にしながら叫ぶ。

 約五秒のチャージを終えたCE達が、赤く光らせたコアをこちらに向けていたのだ。


「あ、あかんてっ!?」

「――っ!」


 コアの輝きが限界に達した瞬間、宗次は槍で映助の足を払いながら、自らも地面に深く伏せた。

 間髪を入れず放たれた無数の赤い光線が、彼らの上を通り過ぎる。


「助かったで、兄弟」

「礼は後だ」


 宗次は起き上がる勢いに乗せて、下から蜻蛉切を突き上げる。

 槍は見事にコアを貫き、CEはボロボロと崩れ落ちていく。

 だが、目の前の壁が消えた事で、後列でチャージを終えていた別のCEが、コアを赤く光らせる。


「くっ!」


 宗次は咄嗟に横へ飛び、辛くもこれを回避するが、流れ弾が当たったらしく、背後から「ぎゃっ!」と短い悲鳴が上がる。


(しまった、これが集団戦か)


 場合によっては敵の攻撃が見えていても、あえて受け止めるべきかもしれない。

 そう考えながらも、宗次の体は無意識レベルまで刻み込まれた技を繰り出し、CEのコアを貫いていく。


 結晶体の砕ける甲高い音、攻撃を受けた味方の上げる悲鳴、限界を知らせるアラームと、危ない生徒を下がらせようとするヘッドセットからの通信。

 そういった音の洪水も、戦いに集中するうちに宗次の耳から消えていく。

 有るのは蜻蛉切の確かな重みと、目に映る倒すべき敵の姿。

 突き、避けて、叩いてから突き、また避ける。

 己が槍と同化して、一つの機械となるような感覚。

 祖父と何千回と繰り返した練習試合の中では、一度も辿り着けなかった、真剣の死合だからこそ踏み込めた領域。


 永遠に感じられたそれも、現実の時間では僅か三分にも満たない。

 気が付けば、宗次の目に映るのは無数の結晶で埋め尽くされた畑と、雲一つなく澄み渡った青空だった。


「……終わった?」

「勝った、ワテら勝ったんやっ!」


 実感が湧かず気の抜けた顔をする宗次の横で、転んで土まみれの映助が歓声を上げた。

 それは徐々に他の生徒達にも広がっていき、地を揺るがすほどの大声に変わる。


「私、ちゃんと戦えた、皆を守れたんだ」

「ひ、陽向ちゃん、怖かったよ……っ!」


 肩で息をしながらも、無事に生き残った陽向に、緊張が切れて震え出した神奈が抱きつく。

 その横で地面に転がる心々杏の腕からは、ビービーと不吉なアラームが鳴り響いていた。


「あ~、やっぱり喧嘩みたいにはいかないですね~」


 何発かCEの光線を受け、幻子装甲は限界寸前であるが、それでも廃人にならず生きている。

 他の生徒達も変換器がうるさく鳴り響き、息を切らせ体力も擦り減ってはいたが、誰一人欠ける事なく目を輝かせていた。


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