表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄《しゅやく》になれない槍使い  作者: 笹木さくま(夏希のたね)
第1章・かませ犬は英雄のアクセサリー
3/125

第2話 遭遇

 前橋駅からバスで西に向かい利根川を越えると、急に建物の数が減り、荒れ果てた大地が姿を見せる。


「昔はここらにも人が住んでたんやろな」


 宗次の隣に座った映助も、神妙な面持ちでその光景を眺めている。

 所々に残る砲弾を受けて崩壊した住居や、焼かれて放置された田畑。

 それは、人類がCEに受けた傷跡のほんの一部であった。


「おっ、着いたようやな」


 足止めされる信号もないので、十分とかからず目的地に着き、宗次達を含め乗客は全員が立ち上がる。

 バスを降りた先に広がっていたのは、高い壁に囲まれた広大な敷地。

 茶色の乾いた大地が延々と続く、殺風景な光景。

 その中心に、無骨で角ばった建物がいくつも建っている。

 此処こそが、彼らがこれから学び、そして戦っていく場所。


「対クリスタル・エネミー特殊隊員養成高等学校か」

「みんな特高としか呼ばんらしいけどな」


 感慨深く立ち尽くす宗次達の横を、同じ制服を着た少年少女達が通り過ぎていく。


「おぉ! 宗次、あれ見てみ!」


 映助が歓声を上げて指をさすので、宗次は何事かと首を向けた。

 そこには、校門に背を預けて立つ一人の美少女がいた。

 染めているのか、薄い桜色の長い髪を、両脇で縛りツインテールにしている。

 子供っぽい髪型に反して、その四肢はスラリと長く伸び、胸は大きく膨らみながらも腰はキュッと引き締まり、全身から香るような色気を醸し出していた。


「ハイカラな子だな」

「激マブやん! ワテ、ちょっと声かけてこようかな」


 都会の子は流石に違うなと感心する宗次の横で、映助は瞳にハートマークを浮かべて身をよじる。

 そんな二人の様子に気づいたのか、美少女はふとこちらを見たかと思うと、パッと花咲くように笑顔を浮かべ、宗次達の方に向かって駆け出した。


「えっ?」

「ま、待つんや、まずは交換日記からで……」


 驚く宗次と、彼の背に隠れる映助に向かって、美少女は走り寄って――そのまま通り過ぎて、後ろを歩いていた少年に抱きついた。


「うわっ! 誰だお前っ!?」

「分からない? 音姫よ、千影沢音姫ちかげさわおとめ

「えっ、隣に住んでた、あの音姫ちゃん!?」

「うん、ずっと会いたかったよ英人あやと!」


 音姫と呼ばれた美少女は、抱きついた勢いのまま、英人と呼ばれた少年の唇に自らのそれを重ねた。


「なんでやぁぁぁ―――っ!」

「……都会の子は、凄いな」


 一瞬で失恋して絶叫する映助と、ただ呆気に取られる宗次。

 この時こそ、歴史における彼らの役割が、決定された瞬間だったのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ