【聖剣の英雄伝説・第3章・37ページより】
「オラオラ、さっさとくたばれやっ!」
卑劣な槍使いの拳を、英人は棒立ちで受け続ける。
「ぐっ……!」
「おっ、生意気な目だな? そんな態度を取っていると、竜宮がどうなるかな、くくくっ」
「貴様っ!」
クラスメート、竜宮都子を人質に取られた英人は、黙って殴られるしかなかった。
しかし、そこに救いの女神が現れる。
「英人、もう大丈夫よっ!」
卑劣な企みに気づいた音姫が、一人で槍使いの手下共を撃退し、竜宮都子を助け出したのだ。
「英人君、負けないでくださいっ」
「へっ、もう遅いんだよ!」
これでトドメだと離れた拳が、虚しく空を切る。
「野郎、どこに行きやがったっ!?」
「ここだっ!」
慌てふためく槍使いに、蒼穹の空から声が降りかかる。
見上げれば、白銀の翼を背中から生やした英人が、太陽を背に空を飛んでいた。
「な、何だとっ!?」
「俺の事はいい……だが、竜宮にした仕打ちを俺は許さない」
悪を憎む正義の心が、英人の聖剣に集まっていく。
「ま、待ってくれ、俺の負けだ、謝るから――」
「反省は病室で言え、唸れ、エクスカリバァァァ―――ッ!」
シュゴオオオオオォォォォ―――――ッ!
「ぎゃあああぁぁぁ―――っ!」
聖なる光が、無様に逃げようとした悪しき槍使いを吹き飛ばす。
「やれやれ、世話を焼かせるんだから」
音姫は幸せそうに愚痴りながら、空を翔ける天使のごとき幼馴染に向けて、大きく手を振るのであった。