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【聖剣の英雄伝説・第3章・12ページより】
「てめえ、もう一度言ってみやがれっ!」
激高して首を絞めてきた槍使いに、音姫は気丈に言い返す。
「何度でも言ってやるわ、英人に比べれば、あんたなんかミジンコ以下の腰抜けだって」
「この糞アマっ!」
音姫の顔面に向かって容赦なく繰り出される拳。
それを、横から延びた手が掴み止める。
「お前、俺の音姫に何してやがるっ!」
「英人っ!」
愛する王子様の登場に、音姫は一瞬前の恐怖も忘れて歓喜の声を上げる。
「ちっ、出やがったなインチキ野郎が」
「インチキだと?」
「そうだ、あんなのはインチキだ。そうでなけりゃ俺が負けるはずがねえ」
まだ力の差を認めようとしない愚かな槍使いに、英人は真向から立ち向かう。
「いいだろう、ならもう一度勝負してやる。ただし、俺が勝ったら今の無礼を、音姫に謝ってもらう!」
「はっ、上等じゃねえか。勝てるもんならな」
ニヤリと邪悪に笑う槍使いの罠を、この時の英人は知る由もなかった。