◇あとがき◇
小説家になろう読者の皆様、こんにちは。
携帯電話の進化が早すぎて、2031年の未来にどうなっているのか、正直に言って予想がつかない夏希のたねです。
本作に最後までお付き合い頂きまして、誠にありがとうございます。
まだ、ピラーの破壊後に世界がどうなったのか、そして聖剣使いの英雄がどんな最期を迎えたのか、後日談が少しだけ残っていますが、英雄になれない槍使い・空知宗次の物語はここで幕引きという事で、あとがきを書かせて頂きました。
そんな訳で、本編の中で書き切れなかった設定や、うっかり説明し忘れた事などを、いくつか紹介していこうと思います。
【ピラーの正体】
遥か昔に宇宙から飛来したのか、それとも地球内部で自然発生したのかは謎ですが、地中に生まれた結晶生命体がピラーです。
元々は一つの巨大な塊だったのですが、大陸の分断などに合わせて100個以上に分かれました。
(パンゲア大陸のwikiを見て頂けると、分断の流れが分かりやすいかと)
地中には天敵もおらず、食事(捕食行動)も必要でなかったため、知能を得るなど進化をする必要もなく、生命と言っても殆ど鉱物と変わらず、ずっと眠っているような状態でした。
それが地表にいた二足歩行の生物・人間が、爆発的に増加した事で変わります。
約200前の産業革命以前はせいぜい10億人だったのが、2011年には70億人を超えました。
さらに科学が発展した事で、『非科学的なモノは存在しない』という認識が定着していきます。
この認識が無意識のエネルギーを生み出して、地中で眠っている結晶生命体という、科学的にありえない存在・ピラーを攻撃し始めたのです。
ピラーは何億年ぶりに目覚めて、生きようとする生物の本能に従い行動を開始。
まずは自分達を攻撃するエネルギーの謎を探るため、自分達の一部を地表に露出させます。
(これと接触して生まれたのが、影山を始めとしたピラー人間です)
観測の結果、ピラーは自分達を攻撃しているのが人間だと知り、一斉に攻撃する事に決めます。
(元々は一つの塊なので、テレパシーのような意思疎通が可能です。また、人間の観測を始めたこの辺りでは、まだ個体ごとの差はありませんでした)
そうして2025年、ピラーは生き残るために一斉反撃を始めました。
己の手下としてCEを生み出し、自分達を攻撃してきた認識力、その発生源である人間の精神と記憶を奪うという方法で。
しかし、あれだけピラーを滅ぼそうとしていた認識力が、この時から消えてしまいます。
地表に現れた巨大なピラー、そしてCEの大軍を目にした事で、人間が『ピラーやCEは実在する』『非科学的で予想もつかないような事が、この世には起きる』と認識を改めたためです。
(こうして世界の認識が変わった事が、後々に幻想兵器を生み出せる下地となります)
ピラー達は突然の事に困惑しつつ、自分達を攻撃していたエネルギーは何だったのか、それを生み出す人間は何なのか、詳しく探るためにも散発的な攻撃を繰り返します。
その後、米露中が原子爆弾を使用していくつかのピラーを破壊。
他のピラー達は核兵器という別の力にまた困惑しつつ、とりあえず最初の敵である認識力の解明に没頭したり、自分は関係ないからと静観を決め込んでいました。
(何百万人もの精神を蓄積したため、この辺りから各ピラーに個性が生まれ始めます)
そんな中、どれも同じようなモノだった人間の中に、ひときわ巨大なエネルギーを放つ個体(刹那)が現れます。
何故か同じ人間の手で殺された彼女に、長野ピラーは興味を抱き、遺体を回収して分解吸収。
幻想変換器を通して感情や認識をエネルギーとして操っていた彼女は、サンプルとして最高だったために研究は加速、長野ピラーは他の仲間達に比べて飛躍的な進化を遂げます。
そして5年が経ち、「人間の精神を奪うのって、ひょっとして悪い事だった?」と分かるくらい、知恵が発達して人間の事を理解してきた辺りで、ピラーの殲滅者・聖剣使いの英雄が誕生して本編へと繋がります。
つまりピラーとは「殺されそうになったから正当防衛で反撃したら、皆殺しにあったでござる」という、ちょっと可哀想な連中でした。
ですが、所詮この世は弱肉強食、勝てば官軍、負ければ賊軍ですので、仕方のない話であります。
【千影沢音姫の本名】
『彼女』こと千影沢音姫の本名は、実のところ作者の私も決めていません。
ただし、表ヒロインが『陽向』と太陽や昼を表す名前なので、裏ヒロインである彼女は『夜』や『月』といった漢字の名前になる事だけは決まっています。
例えば「月子」「月夜」「咲夜」「夜宵」といった感じです。
ただ、どれが本名と断定はしません。最後まで謎を明かさず読者をモヤッとさせる方が、性格の悪い彼女に似合っていると思いますので。
【各ヒロインのルート】
本作は恋愛AVGの5+1個あるルートのうち、一つを描くような感じで書かせて頂きました。
各ヒロインのエンディングは次のようになります。
・陽向:本編通り、特別な英雄として戦い続ける聖剣使いとは逆に、宗次は陽向と共に普通だけど平和な日常に戻る。
・麗華:特別な英雄にはなれなかった彼女だが、宗次の妻になれて、子供達に囲まれた平凡だけど幸せな生活を送る。
・シャロ:まだCEに苦しめられているイギリスの援軍に向かう、私達の戦いはこれからでありますっ!
・音姫:ピラー破壊から一年後、姿を消していた彼女が、故郷に戻っていた宗次の元に本来の姿で現れ、月光の下で二人は抱き合って唇を重ねる。
・京子:幻想変換器にピラー、まだ多くの謎が残るそれを解明するため、宗次は科学者の道を目指し、CE被害者を救うために京子と共に研究を始める。
といった感じで、『宗次が誰を選ぶか』『その結果、他のヒロインがどうなるか』は変わってくるのですが、英雄がピラーを破壊して世界を救うという歴史の流れには変化がありません。
ただし、+1にあたる刹那ルートだけは全く違う物語になります。
【刹那ルート】
刹那と結ばれるルートは、ずばり『ピラーとの和解&共存』を目指す話です。
CEとなった彼女を通して長野ピラーと接触、犠牲となった200万人の精神がピラーの中で生きている事を知り、これを守るために戦う事を決意します。
本編ラスボスであった影山が仲間になり、最後の敵が『CEを滅ぼすために作りだされた英雄』こと天道寺英人になるという、なかなか熱い展開になります。
簡単にまとめると、以下のような流れとなります。
1・刹那CE戦、コアを破壊せずピラーの呪縛を断ち切り、刹那の正気を取り戻させる。
2・京子や綾子達と相談し、刹那を空き家で匿うが、教師の一人が自衛隊と政府に内通、抹殺に現れた特戦から、宗次は刹那を連れて逃亡。
3・追い詰められた大ピンチに影山が登場、特戦を追い払ってそのまま長野ピラーに向かう。
4・宗次は刹那を通して長野ピラーの意識に接触、彼女に人類への敵対心はなく、ただ生きていたいだけという事と、ピラー内部で犠牲者達の精神が今も生きている事を知る。
5・犠牲者達の精神を救うためにも、ピラーとの共存を模索し、そのために影山があれこれと暗躍を開始。
(『第44話 生贄』で戦死した草壁洋太に精神と記憶を返し、目覚めた彼に抱き着いて泣く恋人・雨宮水樹や両親の姿をネットで全世界中継するなど)
6・ピラーとの共存などありえないと、憎しみに駆られた者達の思念に突き動かされ、長野ピラーの破壊に現れた聖剣使いの英雄・天道寺英人に、宗次は刹那と共に挑む。
といった感じです。
被害者の内、肉体の残っていた者は全員、精神と記憶を戻され元通りとなります。
既に風化して肉体を失っていた人達も、長野ピラーに触れれば意思疎通が可能ですし、望んだ何人かは人型CEとなって体を得ます。
(無数の意識が混じったピラーの中は、まるで天国のように気持ち良いらしく、出てこない人の方が多いです)
この後、多くのピラーは人間との共存に賛成しますが、何本かは敵対を示します。
また、「精神は生きている? そんなので納得できるか!」「戦争の混乱で人間に殺された奴らは、もう帰って来ないんだよ!」といった感じで、憎しみを捨てられる筈もなく、ピラーとの戦争を続けようとする国や人は大勢残ります。
これに対抗する形で、「やはりピラー様は神っ!」「ピラー様の中で永遠に生きるのだっ!」といったCE教が世界中で勢力を増し、反ピラー派と人間同士で血を流し始めます。
こんな感じで、世界を大混乱に陥れてしまった責任として、宗次は平和のために戦い続ける事を決意します。
そんな彼に責任を感じ、刹那はまた「ごめんね」と謝りますが、宗次は笑って「どうせなら、別の言葉を聞きたい」と言います。
それに、刹那は笑顔を浮かべて「ありがとう」と告げ、二人がキスをした所で終幕となります。
(『第90話 「ありがとう」を聞けなくて』を解消するエンディングですね)
このように、世界全体でみると手放しで幸福とは言い難いのですが、主要な登場キャラクター達が全員幸せになれるという意味では、完全無欠のハッピーエンドを迎えます。
音姫は怪我をせず最後まで登場し、本性を晒して宗次に協力するので、陽向達とも少しだけ和解します。
影山は刹那との再会で改心し、ピラーとの共存に尽力するので、三年生の反乱事件はそもそも起きません。
そして天道寺英人も『英雄』から解放されます。
(あと、原爆でピラーを破壊した(つまり内部の何千万人を殺した)米露中が、国内外から盛大に非難されて「m9(^Д^)ざまあww」状態となります)
で、これだけ構成が固まっているのに、どうして書かなかったのかと言いますと。
・散々殺し合いをしておいて、今さら和平&共存はリアリティに欠ける。
・死者の復活など、ご都合臭が強い。
・終盤のポッと出ヒロインに主人公を盗られると、序盤からのヒロイン達が可哀想。
これらに加えて、刹那ルートだと宗次が『戦争を終わらせた英雄』であり『既存の社会を終わらせた破壊者』であり『CEを嫁にした人類初の男』として歴史に刻まれてしまい、「英雄になってんじゃんっ!」と盛大にタイトル詐欺になってしまうからです。
ぶっちゃけた話、小説という一本道の媒体には向いていないストーリーでしょう。
それこそ、恋愛AVGで全ルート制覇後に現れて、今までの不幸を全て吹き飛ばす、完全無欠のグランドフィナーレとしてなら許せるかも?というくらいで。
それと、異種生命体との共存という展開が『劇場版00ガン○ム』ともろに被る、というのも書くのを止めた理由の一つです。
そもそも、CEは「生物との殺し合いだと悲壮感&グロ度が増すから却下」という理由で結晶生命体にしたのですが、その時の参考としてフェス○ゥムや第六○徒などと共に、E○Sも参考にしていたので、敵が似れば展開が似るのも当然の話でして。
そんな訳で、共存ルートだと00と被るため、本編では殲滅ルートになったというのもあります。
あと単純に、刹那ルートを書くとなると、また2~3ヶ月は掛かってしんどいですし、それだけの時間があれば新作を書きたいので、構想のみ発表とさせて頂きます。
【二重連結機構】
京子の話で少しだけ出てきた、強力な幻想兵器を出せる二重連結機構ですが、シャロルートだと使い過ぎで彼女が倒れ、看病するイベントから発覚したりと出番があります。
また、刹那ルートだと仲間になった影山の手で、宗次のベルト型変換器にも組み込まれ、さらに長野ピラーとの接触時にパワーアップし、心を繋いだ仲間の幻想兵器も使えるようになります。
つまり最終決戦は『仲間達の絆を束ねた槍使い』&『ピラーと二百万人の命を背負った聖女』VS『顔も知らない大勢の願望を叶える道具となった英雄』という構図になる予定でした。
とりあえず、書きそこなった設定はこれくらいでしょうか。
私が気付いていない、回収し忘れた伏線へのツッコミや、疑問点などがございましたら感想欄でご質問下さい。
それでは最後にもう一度、こんな趣味全開の小説にお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
投げ出さず最後まで書き終えられたのも、本作を読んでくれた皆様のおかげです。
心からの感謝を述べて、締めの言葉に代えさせて頂きます。
追記・故郷の幼女(美緒ちゃん・9歳)ルートはノーマルEND扱いです。