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スキルの確認を完了?した魔雪とルフィアは早速、ギルドで依頼を受けるためにまた、ギルドに向かった。
「そう言えば、魔法ってどうやって使うの? 魔力は流せるけど呪文とかあるのかな?」
その道の途中でふと魔雪は気になったことを聞いてみる。
「基本的に魔法を使う時に呪文はいりません。ですが、一々魔法の形を思い浮かべるのは大変なのでワードを使う人が多いですね。私もそうですし」
「魔法の形? ワード?」
聞き覚えのない単語が出て来たので幼女は不思議そうに首を傾げてルフィアを見上げる。
(か、可愛い……で、でもここで暴走してしまったらまた怒られちゃう……)
くりくりとした可愛らしい瞳で見つめられたロリコンエルフはあまりの可愛らしさに抱きしめたくなる衝動に駆られるも何とか、抑えて(息遣いは抑えられなかった)説明するために口を開いた。
「抱きしめてもいいですか?」
「殴るよ?」
「あ、すみません。思わず……」
欲望も抑えられていなかったようだ。
「では、改めまして……まず、魔法の形はですね。これは実際に見て貰った方がわかりやすいかもです。よっと」
ルフィアは右手の平を空に向けてその手の上に水の弾を出現させる。
「おお!!」
それだけでも魔法を知らない彼のテンションが上がった。
「先ほども言いましたが、魔法と言うのは魔力を消費して現象を起こす技術です。このように魔力を元にして水を作り出すことも出来れば――」
そこで、水の弾を細長くして剣のような形を作る。
「――形を変えるなど、操ることも出来るのです。更に、この水の剣を振動させてっと」
ルフィアの持つ水の剣から『ブイーン』と振動音が聞こえ始める。目には見えないが凄まじいほど剣は振動していた。
「そうですね……あの岩でいいですかね」
カルテンは比較的、田舎である。そのため、ルフィアの家からギルドまでの道は田舎道のように何もなければ、大きな岩が散乱していたりする。その一つに近づいたルフィアは軽く剣を振るう。
――スパッ!
そんな擬音が聞えそうなほど、岩は簡単に真っ二つに斬れた。
「すごっ……」
「こんな感じですね。つまり、どんな魔法を使うのか頭の中で思い浮かべれば呪文を唱えなくても魔法が使えるのです」
水の剣を消してルフィアは再び、歩き始めた。それに魔雪も続く。
「でも、それって普段はいいけど戦闘中とか難しくない?」
敵の攻撃を躱しながら次に使う魔法の形を思い浮かべるなど出来そうにない。右手でお箸を使いながらラーメンを食べると同時に左手のお箸で煮物を食べるような感覚だ。
「だからこそ、ワードを使うのです。この技術は登録しておいた魔法の形をワード……まぁ、呪文ですね。それを言うことで頭に思い浮かべなくても簡単に魔法を発動できるのです」
そこでやっと、カルテンの中でも栄えている場所に入った2人はそれを気にする事無く話し続ける。
「じゃあ、そのワードを登録しておけばいつでも魔法を使えるんだね」
「ですね。魔力の残量とかありますが、基本的に使えますよ」
納得した魔雪だったがすぐにはてな顔に戻った。
「でも、そのワードってどうやって登録するの?」
「人によって色々ですよ。私は杖に登録していますね。他にも適当な紙に登録したり、自分の体に登録したり」
「自分の体!?」
「刺青ですよ。自分の体にワードを刻んでそれを発動すれば呪文を唱えなくても発動出来ます。まぁ、魔法の形を思い浮かべれば誰でも無詠唱魔法を使えるのでそこまでするのはほとんどいませんが」
しかし、ワードを唱える時間もそうだが、ワードを登録した対象がワードを認識して魔法を発動する時間があるのだ。それに比べて無詠唱魔法はワードよりも断然、速い。ロスが少ないからだ。
「だから、刺青ワードは偉い人がしていることが多いですね。偉い人が魔法を使うのって暗殺されそうな時とか国が滅ぼされそうになってる時ですし」
「じゃあ、刺青をした人は偉い人なんだね?」
「可能性が高いだけですよ。それにそう簡単に会えるものでもありませんし」
「へぇ……ワードかぁ。見てみたいなぁ」
魔法の形は見せて貰ったのでワードも見たかった彼は自然とルフィアの方を見上げる。
「きゅんっ……わっかりました!! このルフィアがワードを使って見せましょう!」
魔雪の上目使いを見たルフィアはすぐさま、異空間から杖を取り出して叫ぶ。
「おお!!」
「行きますよ!! ≪ウィンディ≫!!」
ワードを使って風魔法を発動したルフィアだったが、はりきっていたため手加減が出来ていなかった。そのせいか、本来の≪ウィンディ≫は風で相手を吹き飛ばす魔法なのに今回の魔法は上昇気流となってしまい、あろうことか魔雪を襲う。
「うわっ!?」
突然、下から突風が吹き荒れ、魔雪のローブが思い切り、捲れる。
「あ……」
実はギルドで依頼を受けた後、ルフィアは服屋に行くつもりだった。もちろん、魔雪の服を買うためである。しかし、普段着はローブがあれば十分だ。では、ルフィアは服屋で何を買うつもりだったのか。
「……ひっ」
もちろん、下着である。
突然、吹き荒れた突風。周りに人がいれば何事かとそちらを見るだろう。
更に、ここはカルテンでも栄えている場所。人も多い。
つまり、多くの人に魔雪のローブの下を見られたのだ。
そして、魔雪のローブの下は――。
「うわああああああああああああああん!!」
――何も着ていなかった。
「ルフィアのバカあああああああああああああああ!!」
幼女の姿とはいえ、こんな大勢の人に自分の裸を見られた彼は涙を流しながら全速力で走り去ってしまう。
「あっ! 待ってよ! マユちゃん! わざとじゃ――」
「とうとうやりやがったぞ! あのロリコンエルフ!」
「誰か! 誰か、いないの!? ここに変態がいるわ!!」
「さっきの子供のフォローに向かえッ! きっと、すごく傷ついてるはずだ! 急げッ! 何か食べさせてあげろッ!!」
「大声が聞えましたが、犯罪者はどこですか!? やっぱり、あの変態エルフですか!?」
その日、カルテンの町に『変態ロリコンエルフが大衆の前で子供を裸にした』という事件の噂が広まった。
後悔はしていない。