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「……おはよう」
「おはよっ! マユたん、今日も可愛いね!」
「……ねぇ、そろそろ降ろしてくれない?」
あの可愛らしいパジャマ姿で魔雪はルフィアに抱っこされていた。目が覚めたらいつの間にかルフィアの膝の上に座っていたのだ。
「駄目! マユちゃんと一緒に朝ごはん、食べるんだから!」
「……だから、目の前にご飯があるんだね」
目の前のテーブルにはルフィアが作ったご飯が並べられていた。
「はい、マユちゃん。あーん!」
「……あーん」
「きゃあああああああ!! 可愛い!!」
「……美味しいよ」
「んっもう!! そんな嬉しいこと、言われちゃったらもっとあげたくなっちゃう! はい、あーん!」
そんなことを繰り返しながらようやく、朝ごはんを食べ終わる。
「ご馳走様でした」
「はい、お粗末様でした。さて、お昼寝でも――」
「しないよっ!!」
どうやら、ルフィアは魔雪を抱っこしながら寝ることにハマってしまったらしい。
「えー……」
「そんなことより!! 昨日の話の続き! 勇者が世界を支配してるのはわかったけど、どうやって世界を救えばいいの?」
「……あ、ああ!! その話ですね」
ロリコンエルフは魔雪のことで頭が一杯でそのことを忘れていたようだ。
「一言で言えば、勇者を倒してってこと」
「でも、勇者はめちゃくちゃ強いんでしょ? 俺、戦ったことないよ?」
もちろん、演技では何度も戦闘シーンを演じたことがある。だが、本当の戦闘となればそんなもの、役に立たないに決まっている。そう判断して魔雪はそう言った。
「大丈夫です! マユちゃんは魔王だから!」
「……何で、魔王なの?」
「それがこの世界の願い……勇者から世界を救って欲しいと皆、願ってるからです」
「だから、何でそこで魔王になるの?」
「魔王を倒すのが勇者と同じように……勇者を倒せるのは魔王だけだと言われてるからですよ。初代勇者は何度も、魔王に殺されかけたと言われています。その伝説が残っているので、今でも勇者を倒せるのは魔王のみと言われているのです」
それを聞いて魔雪は不思議と納得出来た。勇者と魔王はライバル関係とも言える。魔王を倒せるのは勇者であると同時に勇者を倒せるのは魔王だけ。物語では最終的に勇者が勝っているが、世界はハッピーエンドだけではない。きっと、魔王に負ける勇者の話もあるはずだ。
「つまり……勇者を倒せるのが魔王だけだと言われてるから、俺は人間から魔王になったってこと?」
「多分、そうだと思います。私も『世界の願い』と聞いてすぐに『魔王の召喚』だと思いましたから」
「んー……でも、魔王になったからってそう簡単に勇者を倒せるのかな?」
戦闘経験なし。魔王になっただけの元人間に勇者を倒せるのだろうか、と彼は少しだけ不安になった。
「それをこれから調べに行くんですよ」
「……え? どうやって」
「もちろん! 冒険者ギルドです!」
その言葉を聞いて魔雪は改めて異世界に来たのだと実感した。