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幼女魔王の演武演劇  作者: ホッシー@VTuber
第1章 幼女魔王の演武演劇
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報告するのが遅れましたが、10万字を超えるまで書き終わり次第、投稿して行きます。

「すみませんでした……」

 魔雪の目の前で深々と頭を下げるルフィア。

「全く……ただの演技だって言ったのに」

 そう言っている魔雪だったが、ルフィアに抱っこされながら寝ていてとても気持ちよかったのでそこまで怒っていない。心のどこかでは『また一緒に寝てくれないかな?』と思っているも、本人ですらそれに気付いていなかったりする。

「それにしても……」

 魔雪は今、自分がいる場所――ルフィア家のリビングをもう一度、見渡す。

 そこには冷蔵庫やガスコンロ、ましてやテレビまであった。家の作りは日本のそれとは違うもののそこまで違和感を覚えない。実際、魔雪はルフィアと一緒にソファに座っている。

「……ねぇ、ルフィア」

「何? マユちゃん」

 因みに魔雪は何度も『マユちゃん』と呼ばれるのを拒否したが、ルフィアは聞く耳を持たなかったので諦めてしまった。

「俺の勘だとここって俺からしたら異世界だと思うんだ」

「え? 違いますよ」

「何……だと……」

「だって、マユちゃんは儀式召喚魔法で召喚しましたし」

 聞き慣れない単語に首を傾げる魔雪。

「儀式、召喚魔法? それって、ただの召喚魔法とは違うの?」

「全く違います!」

 何故か、ルフィアが力強く立ち上がった。あまりの剣幕に幼女はビクッとしてしまう。

「いいですか? 儀式召喚魔法と召喚魔法は召喚する対象が違います」

 彼女はそこまで言うと何もない場所から1冊の本を取り出して、魔雪に渡した。それを受け取ってタイトルを見ると見たこともない字が書かれている。

(召喚、魔法?)

 彼は見たこともない字なのにそう読めたのだ。

「まず、召喚魔法から説明しましょうか。召喚魔法は色々な条件を設定してその条件に合致した物を召喚する魔法です」

「条件?」

「例えば、場所は陸。食べ物。黄色い果物。このように色々な条件を設定するのです。まぁ、召喚する対象が大きすぎたり、あまりにも遠かったら失敗する可能性もあります」

「ふーん。じゃあ、儀式召喚魔法の方は?」

「そちらは儀式によって封印されていた物を召喚する魔法です」

 そう言いながらルフィアが魔雪の持っている本を指さす。

「言ってしまえば、その本に封印されていたマユちゃんを召喚した、というわけですね」

 召喚魔法は条件。儀式召喚魔法は封印。そう、魔雪は解釈した。

「……ねぇ、ルフィア」

 そして、もう一つ、気になっていた事を聞いてみる。

「何ですか?」

「その本……召喚魔法って書いてあるけど?」

「……は?」

「ほら、タイトルに召喚魔法って書いてあるんだよ」

「……いや、そんなはず」

 戸惑っているルフィアの手から本を奪った彼は中身を読んでみる。

≪この書物は、召喚魔法の基礎について記してある。まず、儀式召喚魔法との違いを――≫

「ルフィア、ここ」

「え?」

「ここに召喚魔法って書いてあるでしょ?」

 魔雪は文章を指さしながら言う。

「そ、そうなんですか?」

「……読めないの?」

「……実は、この本ってかなり昔の本なんですよ。今、使われている言語ではないのです。自己流で何とか訳してみたのですが……その時に作った単語帳がないとすぐには読めません」

 『しかも、その単語帳……失くしちゃって』と肩を落として彼女はため息を吐いた。

「んー、とりあえず、ここに召喚魔法って書いてあるんだ。そして、タイトルに書かれた文字と比べると」

「……あ! 全く、同じです!」

「でしょ? で、こっちが儀式召喚魔法って書いてあるの」

「ん? タイトルに書かれた文字の前に文字がありますね」

「そこが“儀式”。つまり、この本は儀式召喚魔法について書かれた本じゃなくて、召喚魔法について書かれた本なんだよ」

 なるほど、と何度も頷く彼女だったが、何かに気付いて魔雪に向き直る。

「じゃあ、マユちゃんは……異世界から召喚されたってことですか?」

「そうみたいだね」

「で、でも……何も条件を付けてないのに……」

「どのページの召喚魔法を使ったの?」

「え、えっと、こことここを組み合わせて……ここのも使いましたね」

 ページを捲りながら使った術式を報告する。途中で彼女から紙とペン(羽ペンだった)を借りて、メモを取った。

「……あ」

「え? どうしたんですか?」

「ルフィアが使った術式って全部、単語を表してたんだよ」

「単語、ですか?」

「つまり、この召喚魔法は召喚する時に使う単語を書き記した単語帳なわけ。ここに使われているのは……マセキ? これは、蟹かな? こんな感じで条件を単語で付け足す魔法なんだ」

 魔雪は演劇部だ。そして、台本や小説を読むことが習慣になっている。そのため、本を読み進めるのも速いし、読解力もあるのだ。それは召喚魔法を記した本にも適応することで一瞬にしてこの本の本質を読み解いた。

「こんな短時間で……」

 それはルフィアからしたら異常なことだった。古代文字を読めることはもちろんのこと、異世界から召喚――しかも、魔法のない世界から召喚された魔雪が短時間で本を読み解いてしまったこと自体、あり得ないことなのだ。

「そして、ルフィアが使った単語は……男、若者、幼女、人間、→、→、異世界、世界、願い。こんなものかな」

「あの、ほとんどの単語はわかるのですが……この『→』は何でしょう?」

「召喚した後、その召喚対象を変化させる術式だって……つまり、俺の場合、若者・男→幼女。若者の男を幼女にして召喚する。使った術式の順番がわかれば合ってるかどうかわかるけど……」

「あ、あります!!」

 叫んだルフィアはリビングを出て行った。

「これです!」

「これは?」

「今回の魔法で使った術式です。これを見ればわかるんじゃないんですか?」

「ちょっと貸して」

 ルフィアから紙の束を受け取り、パラパラと流し読みする。

「異世界……若者・男……→……幼女……人間……→……世界・願い」

 箇条書きで術式の順番を書いて行く魔雪。

「異世界はマユちゃんの世界ですよね? そして、若い男……それが幼女に変換されて召喚。その後の、『人間→世界・願い』ってのは何でしょう?」

「人間から……世界の願いに変換されるんじゃない? でも、世界の願いって何だろう?」

「……」

「ん? どうしたのルフィア」

「マユちゃんが人間から魔王になった理由がわかったかもしれません」

 黙り込んでいたルフィアが答えに行きついたようだ。

「え!? 本当!?」

 驚きのあまり魔雪は立ち上がって聞いた。

「……マユちゃん」

 そんな彼の手をギュッと握ってルフィアはこう、言い放った。



「この世界を救ってください」


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