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幼女魔王の演武演劇  作者: ホッシー@VTuber
第2章 幼女魔王の召使黒狼
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 この機会にこの村の周囲の地形を説明しておこう。

 村――『サブメリ村』は270度、森に囲まれた村である。その森にはオーガやゴブリン、ポイズンバットなど、様々な魔獣が住んでおり、村人は決して森に近づかない。もし、一歩でも森に入れば魔獣の獲物になってしまうからである。だが、そのおかげか森から魔獣は一切、出て来ない。何故ならば森の中で食物連鎖が完成しているからだ。そのことにより、外部からの介入がない限り、森に住む魔獣たちが森の外に出る必要性がない。食料は森の中にあるのだから。まぁ、たまに気が触れた魔獣が森の外に出て村を襲うのだが、常に村には冒険者がいるのですぐに倒されてしまう。

 では、残りの90度は何か? もちろん、山である。この村が出来たきっかけはその山で鉱物が大量に採掘できるからだ。炭鉱夫たちが寝泊まりしていた場所が繁栄し、今のコルド村が出来たのである。

 因みに、270度、森におおわれていると言ったが、一部だけ木が生えておらず、道が整備されている箇所がある。そこはコルド村と他の街を繋ぐ街道であり、村に出入りする人々はここを通るのだ。魔雪たちもここを通ってサブメリ村に入った。

「――ですが、現在、この街道はオーガたちによって占拠されている状況です。このままでは、村から出ることが出来ず、助けを呼べません。そして、いずれ食料がなくなって全滅してしまいます」

 そう青い顔のまま村長が報告する。今、村長の家で緊急会議が開かれていた。そこには村の中でも比較的、戦える人や村を守るために住んでいた冒険者たちが集まっている。もちろん、魔雪、ルフィア、狼もいた。まぁ、狼は床に伏せて眠っているが。

「そこで、ルフィア様にはこの街道にいるオーガたちを殲滅して欲しいのです」

「わ、私ですか?」

 まさか名指しでお願いされるとは思わなかったのか、ルフィアは目を丸くして聞き返した。

「はい……本来ならばここにいる全員で街道を取り返しに行くのですが実は街道の他に森からオーガたちがこの村に向かっているのです。街道にばかり戦力を投入すれば側面や背後からオーガたちに攻撃されてしまいます。なので、申し訳ないのですが、ルフィア様に街道を任せたいのです。あ、もちろん、1人ではありません。この中でも腕の立つ冒険者を数名、同行させますので」

 1人で街道を取り返しに行くのかと面倒に思っていた(ルフィアぐらいならばオーガなど一瞬で消滅出来る。更に上級級魔法もあるのでルフィアからしたら相手が固まっていた方がやりやすいのだ)のが表情に出ていたようで、村長はすぐにフォローする。

「じゃあ、マユちゃんも――」

「街道は本当に危険です。例え、ルフィア様のお弟子様でも厳しいかと。それにこんなに小さい子を戦わせるのも気が引けますのでお弟子様は村で待機していてください」

 ルフィアの言葉を遮ったことはおろか、魔雪に戦力外通達を言い渡した村長をルフィアが睨む。

「ちょっ! マユちゃんは――いたっ!?」

「わかりました。私はここで待機してますね」

 思わず、反論しそうになったルフィアの足を思いっきり踏んで止めた魔雪は村長に頷いて見せた。村長は安心したようで口を緩ませる。それから他の人たちに指示を出し始めた。

「ま、マユちゃん……いきなり何ですか?」

 涙目になりながらルフィアが魔雪に質問する。もちろん、村長たちに聞こえないように小さな声で、だ。

「ルフィア、落ち着いて。ここで俺が強いことを言っても信じてくれないよ」

「ですが!」

「それにもし、信じたらもっとマズい。どうして、こんなに小さいのに強いのか追究されて魔王だとばれたら面倒になる」

 まぁ、それだけで魔王だと気付く人などいないと思うけど、と魔雪はため息交じりに呟く。

「とにかく、ルフィアは街道のオーガを殲滅して。そうすれば、村の人たちも避難できるから」

「その間、マユちゃんは何を? 村長の言ったように村で待機してますか?」

「いいや、俺は俺で勝手に動くよ。ざっと見てもここにいる冒険者たちってレベルが低いからオーガ1体に対して複数で挑まなきゃ駄目だからね。絶対にオーガが村に攻めて来る。そうなる前に見つからないように移動してオーガたちを倒して行く。それにこの子がいるから移動も楽に出来るし」

 そう言いながら床で寝ている狼の頭を撫でる魔雪。狼は頭を撫でられて気持ちいいのか小さく声を漏らした。

「……ものすごく、心配ですが仕方ありませんね。わかりました。街道はこちらに任せてください。狼、いいですか? マユちゃんが怪我をしないように守ってくださいね? それとマユちゃんを襲っちゃ駄目ですよ?」

「……バウ」

 ルフィアの忠告を聞いて狼が渋々、右前脚を突き出す。どうやら、隙あらば襲うつもりだったらしい。

「全く、油断もあったもんじゃないですね。マユちゃんも気を付けてくださいね。狼に」

「……仲間なんだから信用してもいいんじゃないかな?」

 現在進行形で睨み合っている(狼は見つめているだけだが)ルフィアと狼を見て魔雪は思わず、ため息交じりにそう呟いた。








「さてと」

 作戦会議も終わってルフィアと別行動している魔雪は一度、宿に戻った。すぐ森に向かってしまうと他の冒険者と鉢合わせしてしまう可能性があるからである。

「狼、いい? 作戦はとにかく攻撃。お互いの戦況を確かめつつ、フォローできるところはフォローし合おう」

「バウ」

「それで、最初はその背中に乗せて貰えないかな? 自分の足で移動するよりずっと早いから」

「バウ」

 2回連続で右前足を突き出す狼を見て彼はうんうんと頷く。今まで、ルフィアと共闘する時はいつも魔雪1人で突っ込んでルフィアが魔法で魔雪に迫る敵を攻撃するというものだった。しかし、今日は初めてルフィア以外の仲間との共闘。最近、戦うこと(魔雪にとって戦うこと自体、演技することと同じなのだが)が好きになって来た魔王様は隣に仲間がいる戦闘が楽しみだったりする。

「森に着いたら男の姿に戻るけど男の状態でも背中に乗れそう?」

「バウ」

 狼は自信満々で右前足を突き出した。大丈夫らしい。

「よし。作戦も決めたことだし、そろそろ行こうか」

「バウ」

 緊張感など全くない2人はピクニックに行くような足取りで宿の窓から脱出し、森へ向かった。







「最終形態!」

 森に到着し、周りに誰もいないことを確認した魔雪は早速、男に戻った。体の調子を確かめて狼の背中をポンポンと叩く。それは出発の合図。狼はすぐに走り始めた。

(気持ちいいな)

 森を凄まじい速度で駆け抜ける狼。その背中に乗る魔雪の頬を風が撫でる。

「っ……右だ」

「バウ」

 そんな中、闇魔法で匂いを引き寄せていると右側から血の匂いがしたのですぐにそちらに向かう。

「がああああああああああああああ!」

 ちょっとした広場に出るとそこにはオーガが3体、暴れていた。その足元には今にも死にそうになっている冒険者が2人。装備を見るからにまだ冒険者になって日が浅そうだった。そんな2人でオーガ3体を相手にするのは少々、荷が重い。その結果がこれだ。

(きっと、先輩冒険者に偵察に行って来いって命令されたんだろうな……)

 その証拠にここから少し離れた場所から人間の匂いがする。その数は4。その匂いはこちらに向かっている。オーガの暴れる音を聞き付けて慌ててこの2人を助けようとしているのだろう。

「なら最初から一緒にいてやれって、の!」

 狼から降りてそう呟く魔雪。そして、『の』と言うと同時にオーガの懐に潜り込み、その顎目掛けてアッパーカットを打つ。もちろん、その拳には闇の靄。

「ッ――」

 冒険者をいじめるのに夢中になっていたオーガはもろに魔雪の拳を喰らって頭を失くした。文字通り。

「「っ!?」」

 突然、頭部が吹き飛んだ仲間を見て残ったオーガたちも魔雪に気付く。しかし、その刹那、1体のオーガの首は狼によって食い千切られていた。

「がうううううううう!」

 1分と経たずに仲間を2人も殺されたオーガはその顔を真っ赤にして雄叫びを上げる。これがルフィアの言っていたオーガのスキル――『仇討』だ。目の前で仲間が殺されるほどオーガの能力が上昇する厄介なスキルである。そのため、オーガを倒す時はまず、オーガをバラバラに誘導し、1体ずつ撃破していくのが主流だ。『仇討』が仲間が殺された瞬間を見ないと発動しない。それを利用している。

 だが――。

「ほいっと」

 ――そんなの魔王(魔雪)には関係のないことだった。

 怒り狂うオーガの真上までジャンプし軽くその頭を踏みつける。

 ――パンッ!

 たったそれだけで、オーガは死ぬのだ。誘導する必要などない。

「これでよしっと。それじゃ、ここに向かってる冒険者に見つかる前に移動するか」

「バウ」

 素早く狼の背に乗った魔雪はすぐに森の中に姿を消す。







 それから10分後、森の中にいた全てのオーガは倒された。森の中にいた冒険者の証言によると2つの黒い影が一瞬にしてオーガを倒し、すぐに消えたそうだ。


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