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幼女魔王の演武演劇  作者: ホッシー@VTuber
第2章 幼女魔王の召使黒狼
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「すみませーん」

 宿に戻ってすぐカウンターに立ち寄った。狼を部屋に入れてもいいか許可を取るためである。因みに狼は宿の外でお座りして待機している。

「はーい、何かな?」

 奥から店主が来て魔雪を見下ろす。

「えっと、実は狼も一緒に部屋に連れて行きたいのですがいいですか?」

「狼? どうして、狼を?」

「森の中で迷子になってしまって……そこを助けてくれたんです。そしたら、お……私について来ちゃって。助けれくれたから何だか拒むことも出来なくて……出来れば一緒に寝たいなって」

 森に入って狼を倒したら仲間になりたいと言っても幼女の魔雪を見ても信じてくれなさそうなので、少しだけ嘘を吐いた。

「森の中に?! そんな危ないことしちゃ駄目だろ!」

「す、すみません……」

「しっかし……狼かぁ。他の人に攻撃しないかい?」

「多分。私に酷いことするような人がいなければ大丈夫だと思います。今も宿の前でお座りして待っていますよ」

「お座り!? へぇ……野生の狼が……よし、それならいいよ。あ、でも、ちゃんと綺麗にしてね。宿の外にお風呂があるからそこで洗ってからなら」

 この宿は少し狭いようでお風呂は別の場所に作ったらしい。

「わかりました。ありがとうございます」

 丁寧にお辞儀をした後、魔雪は宿を出て狼と一緒にお風呂に向かった。お風呂に到着し、中を調べると大きな個室が5つほどあり、その個室の中にシャワーがあるようだ。しかも、浴槽もあるらしい。

「お? 丁度、一つ空いてるね。あそこにいこっか」

 空いていた個室に入り、鍵を閉める。

「それじゃ、脱ぐから待ってて」

 狼にそう言ってから魔雪は衣服を全て脱ぎ捨て、置いてあった籠に仕舞う。そして、浴室に狼と一緒に入った。

「おっと……忘れてた。最終形態」

 旅の間、魔雪は唯一、お風呂の時間だけ男の姿で過ごしていた。理由はもちろん、幼女のまま、お風呂に入るより元の体の方が気楽だからだ。

「バウッ?!」

 突然、男になったのを見て狼が声を上げて驚愕する。

「ん? ああ、実はこっちの姿は本当なんだ。ちょっと訳あって、幼女のままだけどな」

 狼相手に説明しながら魔雪はテキパキと髪や体を洗っていく。

「よし、それじゃお前も洗うからなー」

 魔雪の後は狼の番だ。少し、シャワーの温度を下げてから狼にかける。

「キャンッ!?」

 狼はシャワーが怖いのか少しだけ震えながら耐えていた。その姿はとても狼とは思えないほど可愛らしかった。

「お前、可愛いなぁ。それに、毛も綺麗だし。黒くてかっこいいぞ?」

 シャンプーを狼の体に吹きかけながら魔雪が感想を漏らす。今は濡れてしまったが、狼の毛並みはとても綺麗でフカフカだった。枕にしたらさぞ寝心地が良いだろう。

「ッ……」

 それを聞いた狼は目を見開いて魔雪を見つめる。とても意外だったようだ。

「ん? どうした?」

 わしゃわしゃと洗いながら彼は首を傾げるも狼はすぐに目を瞑ってその場に伏せた。

「お? 気持ちいいのか? ほれほれー」

「クゥン……」

「そうかそうか。気持ちいいか。それじゃ、お腹もやるぞー。こっちにお腹見せろー」

「バウ」

「それじゃ、洗うぞー。あ、お前、メスなのか。それじゃ、かっこいいじゃなくて綺麗だって言った方がいいかな?」

「……バウ」

 何だか、楽しくなって来た魔雪は手際よく、狼の体を洗っていく。狼も身を委ねる。泡を全て落とし、魔雪は浴槽に狼はその場で伏せてしばらく、ゆっくりした。










 お風呂で汗を流し、幼女に戻った魔雪と洗ったことによって更に毛並みが綺麗になった狼は宿に入る。

「すみませーん」

「はいはーい! おお? それが例の狼かい?」

「そうです。ほら、お前がこの宿に入れたのは店主が快く許可してくれたからだよ? お礼を言って」

「バウ」

 魔雪がそう言うと狼は頭を下げた。これは店主にこの狼は賢くて暴れないと思わせるためのパフォーマンスだ。

「おー、本当に賢いねぇ。うん、大丈夫そうだ。それじゃ、くれぐれも問題は起こさないように」

「はい、ありがとうございました」

「バウ」

 部屋の鍵を貰って魔雪たちはもう一度、お礼を言った後、部屋に入る。

「さて、今日はもう寝よっか」

「バウ」

 魔雪がベッドに入ると狼もベッドに飛び乗った。

「ん? 一緒に寝たいの?」

「バウ(肯定)」

「はいはい。それじゃ、こっちにおいで」

 狼が魔雪の横で伏せるとその体に抱き着く魔雪。

「おぉー、やっぱり、フカフカだぁ。ねぇ、このまま寝ていい?」

「バウ(肯定)」

「ありがと。それじゃおやすみー」

 フカフカの抱き枕のおかげか魔雪はすぐに眠ってしまった。










「……ん」

 翌日。窓から差し込む日差しに目が眩んで起きた。しかし、さすがの魔雪もすぐに起きることは出来ず、狼の毛に顔を埋めるために腕に力を入れる。




 ――むに。




 しかし、フカフカとは違った感触が魔雪の顔に伝わった。

「……ん?」

 その時点で、魔雪は混乱していた。フカフカの毛がなくなり、ツルツルになっている。そして、昨日とは別の温もりがあった。

「……おはよ」

 そこに、聞き覚えのない声が聞こえる。それもものすごく近い場所から。

「……ん!?」

 やっと覚醒した魔雪が飛び起きて、狼がいるであろう方向を見た。だが、そこには狼はいなかった。

「……どうしたの?」

 そこに、裸の女性が寝ていた。とても美しいストレートの黒髪。体つきは良く、出るところは出ていて、引っ込んでいるところは引っ込んでいるというスタイルだった。顔も凛としており、可愛いよりも綺麗系の女性だった。

 そんな女性が眠たそうな目で驚愕している魔雪を見つめ、首を傾げている。

「え、えっと……?」

 困惑する中、魔雪はやっと彼女の容姿に普通の人とは違う部分を発見した。

「獣耳……それに、尻尾も?」

 そう、女性には黒い獣耳と黒いふさふさの尻尾が生えているのだ。

「……尻尾、見たいの?」

 魔雪の視線で尻尾を見られていることに気付いたのか女性はそう問いかけた後、魔雪にお尻を突き出す。

「ぶっ!?」

 さすがに魔雪も顔を紅くして噴き出してしまった。魔雪は確かに、恋愛に興味はない。だが、女の体には興味津々な健全な男の子なのだ。

「……これで、見える?」

 首だけで振り返りながら質問する女性だったが、今の魔雪に答える余裕はない。何故ならば、尻尾の他にも色々と見えてはいけない部分も見えているのだから。

「マユちゃーん!! ごめんなさああああい! やっと、開放されて今帰って来ましたあああああ……あ?」

 バン、と扉を開けてルフィアが帰宅。しかし、魔雪たちを見て硬直してしまった。

「な、なななな!! 何やってるんですかあああああああああああああああああ!!」

 そして、ルフィアも顔を紅くして絶叫する。

「る、ルフィ! こ、これは違うぞ!?」

「何が違うんですか!? 女性にお尻を突き出させて色々と観察してたくせに何が違うんですか?!」

「俺だって、わけわかんないんだって!!」

「言い訳無用! 死になさああああああああああああああいい!!」

「魔法は駄目だあああああああああああああ!!」

 ルフィアが杖を取り出して魔法を使おうとするが、闇魔法の靄を使って魔力を吸収し、それを邪魔する魔雪。

「……ん?」

 それを見て女性は首を傾げ続けるだけだった。


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