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幼女魔王の演武演劇  作者: ホッシー@VTuber
第1章 幼女魔王の演武演劇
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「……」

 ゆっくりと意識が浮上して行く。そして、目を開けた魔雪の視界にはルフィアの家の天井が映った。

「……あれ?」

 いつの間にか寝ていた魔雪は体を起こして辺りを見渡す。窓を見ると今は夜らしい。寝室には自分しかないようだ。

「よっと……」

 ベッドから降りてやっと気付いた。




 魔雪はまた幼女に戻っていた。




「……はぁ」

 それに気付いてため息を吐いてしまう。

(そりゃ、そうだよな)

 男の姿は最終形態というユニークスキルを発動させた時にしかなれない。つまり、普段は幼女のままなのだ。

「待てよ?」

 じゃあ、最終形態を発動させれば男の姿に戻れるのでは、と考えに行きつき発動して見る。

「おお?」

 すると、魔雪の体は黒い瘴気に包まれて男の姿に戻った。ローブもピッタリサイズになっている。

「よっしゃ!! これで、幼女にならなくて――」

「マユちゃーん? 起きたんですかー?」

 彼が喜んでいると物音に気付いたのか、ルフィアがドアを開けて部屋を覗いた。

「あ、ルフィ! 見ろよ! 俺、いつで――」




 ――ボスンッ。




「……へ?」

 いつの間にか魔雪はベッドに押し倒されていた。もちろん、ルフィアによって。

「え、えっと? ルフィ?」

「ま、マユちゃん……いいえ、魔王様……」

「え? あ、はい」

 頬を紅く染めてジッと見つめて来るルフィアに魔雪は思考を停止させられてしまう。

「魔王様……魔王様ああああああああああ!!」

「ぎゃ、ぎゃあああああああああああああ!?」

 良い感じのムードだったのに、ルフィアは涎を垂らして魔雪の服を脱がしにかかる。

「ちょ、何!? ルフィ、落ち着けっての!!」

「魔王様ぁ!! あの勇者って魔王様の孫なんですよねぇ!?」

 すぐにローブを脱がされてしまい、制服姿になってしまう。その制服すらも脱がそうとする変態エルフだったが、制服を初めて見たので上手く脱がせないようだ。

「そ、そうみたいだけど!?」

「だったら、もしかしたら私と魔王様の孫かもしれません!! なので……なので、子作りしましょう!!」

「はあっ!? 何言ってんだよ?!」

「さぁ、さぁさぁさぁ!!」

 実は――首を絞められて気絶してしまった魔雪(気絶した途端、幼女に戻った)をルフィアとギルドマスターが協力してここまで運んだのだ。その道中で、勇者を倒したこと、そして、勇者が魔雪の孫だったことをルフィアはギルドマスターに話したのだ。

『もしかしたらー、マユちゃんとルフィアのー、孫かもー。なんちゃってー』

 ギルドマスターは冗談だったのだろう。だが、ルフィアはそれを真剣に受け止めてしまった。

(ほ、本当に……マユちゃんと私の、孫……で、でも、私はいいの? マユちゃんでいいの?)

 そう自問自答した結果――。

「……あ」

 気付いたのだ、自分の気持ちに。

 その後、崖から落ちる勢いでルフィアは恋に落ちた。

 思い出されるのは魔雪が最終形態を発動して黒い瘴気から現れた時の顔。

 その顔はとても男らしく、自分を抱きしめている腕は逞しく、とても頼りになった。自分がお姫様で、魔雪が王子様。お姫様のピンチに颯爽と現れ、ピンチを救ってしまう王子様。

 妄想は美化され、美化された妄想を更に美化することを繰り返している内に魔雪のことが大好きになっていた。変態は思い込みが激しいのである。

「はぁはぁ……魔王様ぁ」

 さすがに幼女の魔雪には普段通りに接することが出来た。何故ならばルフィアが好きなのは男の魔雪だからである。もちろん、幼女な魔雪も好きだ。しかし、異性として好きなのは男の魔雪なのである。

 だが、男の魔雪を見られるのは最終形態を発動――つまり、ピンチになった時だけだ。そのため、ルフィアは男の魔雪に会えるのはしばらくないだろうと落ち込んだ。その間に幼女な魔雪をペロペロしようと思いもした。結局、ルフィアは幼女な魔雪も男の魔雪も大好きなのである。

 そこで寝室から物音がした。魔雪が起きたのだろうと見に行けば愛しの魔王様の姿。【超弩級変態エルフ】の称号を持つほどの変態な彼女は一発で理性が吹っ飛び、性的な意味で襲ったのだった。

「い、い加減に……しろっ!!」

 我慢できなくなった魔雪は紫色の靄を纏った左腕で裏拳を放ち、ルフィアの顔面をぶん殴った。

「ガハッ!?」

 手加減など出来るわけなく、ルフィアの体は壁に叩き付けられてそのまま床に転がった。

「はぁ……はぁ……死ぬかと、思った」

 あと少し遅かったら、全裸にされていたと、トランクス姿の魔雪はため息を吐く。そして、決意した。

(幼女のままでいよ……)

 ルフィアに脱がされた制服を着て(そうしなければ、次に最終形態になった時、トランクス姿になるかもしれないから)最終形態を解除する。すると、幼女の姿になり、幼女の時にローブの下に着ていた服になっていることに気付く。

「よいしょ」

 寝るのにローブは邪魔になるので床でのびている変態にかけてやり、そのままベッドに入って眠りについた。






 翌日。

「あれ? マユちゃん? 魔王様は?」

「魔王様? もしかして、最終形態の話? あれ、俺がピンチにならないと発動出来ないよ? それより、どうして床で寝てるの?」

「え? じゃあ、あれは夢? 私の願望が見せた夢なの?」

 何とか、誤魔化せたようだ。














 勇者を倒してから1週間が過ぎた。その間で魔雪たちにも色々変化があった。

 一番大きいのはルフィアの冒険者ランクがSSSになったことだろう。

 何故、魔雪はランクSSSになれなかったのか。

 なれなかったのではなく、ならなかったのだ。

 実はランクS以上になると国にギルドカードの情報を報告しなくてはならないのだ。普段は個人でしか確認できないが、この時ばかりは色々な人に見られる。

 そして、魔雪の場合、ギルドカードの中身を見られてしまったら魔王だとばれてしまう。だから、勇者はルフィア一人で倒したことにして彼女のみランクSSSになったのだ。もちろん、ギルドマスターが細工を施した。

 だが、カルテンの住人は皆、魔雪こそが勇者を倒したと知っていた。他の人に言わないと約束(破った人はギルドマスターに血を全て吸われると脅した)し、契約も交わした。

 この契約はギルドマスターのみ(他の街のギルドマスターも使える)が使える権限であり、契約を破棄――または破った者がいた場合、すぐに知らせが届くという仕掛けだ。これで、ギルドマスターに知らせが届いた時、破った者の情報も一緒に届くので血を吸いに行けるのだ。

 普通ならば、こんな契約など交わさないだろう。しかし、カルテンの住人全員が快く受け入れた。すでにカルテンの住人達は魔雪のファンになっていたのだ。

 これも魔王のカリスマだと言える。

「ルフィ、準備出来た?」

「はい、必要な物は全て異空間に収納しましたよ」

 そして――勇者を倒した2人は、チャーリーに乗ってルフィアの家を見上げていた。

「まさか、この家を売り払うことになるとは思いませんでしたよ」

「嫌だった?」

「嫌なわけないじゃないですか! 私はマユちゃんの傍にいます! いさせてください! そして、ピンチになって男になって子作りしてください!」

「……まぁ、忘れ物もないみたいだし、行こうか」

 そう、2人は旅に出ることにしたのだ。そもそも、ルフィアがカルテンに住んでいたのはエルガにもっとも近いガルガの街だったからだ。いつでもエルガに戻れるように、と。しかし、魔広の話ではエルガはずっと平和だった。もうカルテンにいる必要がなくなったのだ。

「はい、行きましょう! さて、どこに行きましょうかね?」

「本当にエルガに行かなくていいの?」

 魔雪はルフィアにエルガに行くと提案したのだ。平和だとわかっても帰りたいに決まっている。

「いえいえ、大丈夫ですよー。まだ戻らなくてもいいです……既成事実を作るまでは」

 この変態、孕んでからエルガに帰るつもりである。とんだ変態だ。

「ん? 何か言った?」

「いえー、何も言ってませんよ?」

「そう? まぁ、とりあえず、エルガに行かないなら東に行く?」

「そうですねー。東に行ってガルガの中央にでも着いてから行き先を決めましょうか」

「了解。それじゃ、出発!」

「おー!」

 荷台に座っているルフィアが魔雪の胸にしがみ付こうとしてそれを眼力だけで阻止した後、魔雪はペダルを漕ぎ出した。




 こうして、幼女魔王と超弩級変態エルフの旅が始まったのだった。


これにて、第1章は完結です。

この後、あとがきを書きますので興味のある方はお読みください。

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