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評価を付けて貰いました!
やはり、文章の点数が低いですね。普段は一人称で書いていますので、三人称は慣れていませんから当たり前なのですが……。
ですが、練習のためにこのまま三人称で書きたいと思います。
限界を感じるか、場面によっては一人称になるかもしれませんがご了承ください。
「それで、そんな練習をするの?」
練習場の真ん中で魔雪がルフィアに質問する。
練習場には色々な物があった。剣を叩き付けるための丸太。魔法をぶつけるための的。他にも練習用の剣や防具、杖もあった。しかし、ルフィアはそれらに目を向けず、グラウンドの真ん中まで来たのだ。
「では、私と模擬戦をして貰います」
「……は?」
「マユちゃんは気付いていなかったかもしれませんが、実はすでにマユちゃんは闇魔法を使っていました。先ほど言った紫色の靄です」
「え、えっと……それとルフィアとの模擬戦に何の関係が?」
「どうやら、マユちゃんは闇魔法を無意識に使ってるようなので戦闘しながらの方がいいと思いましたので」
オークキングを倒したと言っても魔雪の戦闘経験は皆無に等しい。それなのにいきなり模擬戦なんか出来るわけがない。
「では、行きますよ!!」
「え!? ちょ、ちょっと待って!」
「≪ウィンディ≫!!」
バックステップして距離を取ったルフィアが突然、凄まじい風を放つ。いつの間にか異空間から杖を取り出していたようで、ワードを使用して魔法を発動させたのだ。
「うわっ!?」
魔雪の体は小さい。もちろん、体重も軽い。そのため、簡単に吹き飛ばされてしまった。
「マユちゃん!! 貴女はオークキングの棍棒を躱した時、爆風に吹き飛ばされていませんでした! それは闇魔法を使っていたからです!」
「そ、そんなこと言われても!!」
ゴロゴロと地面を転がりながら魔雪は文句を言う。
(し、仕方ないッ!)
「こ、これから勇崎 魔雪による演劇を始めさせていただきます!!」
演技を使ってすぐに立ち上がり、重心を前に傾けて何とか風に飛ばされないように踏ん張り始めた。
「闇魔法です! あの時のことを思い出してください!!」
「そんなこと言ったって……」
ルフィアは言っていた。『あの時、魔雪は爆風に煽られることなく、立っていた』と。魔雪でもそれがおかしいことはわかっていた。一度、彼はその爆風に煽られて転んでいるのだ。しかも、それなりの距離を取っていたのに、だ。
(本当だ……吹き飛ばされてない……)
ならば、どうやってあの爆風を攻略したのだろうか。
答えは簡単である。闇魔法だ。
「闇は……何だ?」
魔雪は自問自答する。闇とは何か?
闇と言えば、暗闇。暗黒。真っ暗な存在。
そう、それこそブラックホールのように光を引き寄せ、脱出させないようにする。全てを引き寄せる物。
「……」
気付けば、魔雪の両足に紫色の靄が纏わり付いていた。すると、魔雪の体は安定し、踏ん張らなくても吹き飛ばされることはなかった。
「やった……やりましたよ! マユちゃん! 闇魔法、使ってますよ!」
ルフィアは自分のことのように喜ぶ。しかし、すぐに口を噤んだ。
「それでは……模擬戦と行きますか……」
そう、魔雪が突然、ルフィアに向かって突進し始めたのだ。強風をもろともせず。
「え? ええ!?」
彼女は闇魔法が使えるようになっていることを自覚させるために模擬戦という形にしたのだ。その目的は達成された時点で止めようと思っていた。だが、彼はそのことを知らない。そのため、攻撃を仕掛けたのだ。
「おらっ!!」
戸惑っているルフィアの懐に潜り込んだ魔雪は靄を纏わせた右拳を思い切り、突き出す。
(そんな攻撃っ!)
真正面からの攻撃。さすがに困惑しているとはいえ、ルフィアからしたら躱してくださいと言っているようなものだ。彼女はすかさず、魔雪の拳を回避しようとする。
「ッ――」
だが、突然、何かに引き寄せられた。もちろん、魔雪の拳にである。
「≪アクアバレット≫!」
咄嗟に水の弾を1つ、射出。水と衝突した魔雪の拳はわずかに右にずれる。その隙を見逃さずに次の魔法を唱えた。
「≪フライ≫!」
地面を蹴るよりも飛んで逃げた方が速い。両足を宙に浮かせたルフィアは何かに引き寄せられながらも何とか、魔雪の拳を躱すことに成功した。
「もういっちょ!」
しかし、魔雪の攻撃は終わらない。今度は左回し蹴りをルフィアの顔面目掛けで放つ。その足には例の靄が纏わり付いている。
「またっ……」
魔雪の左足が近づいて来るにつれ、引き寄せられる力が強くなる。飛びながら姿勢を低くして回し蹴りを躱す。
「≪サンダー≫!」
≪フライ≫で距離を取りながら雷撃を撃つルフィア。≪サンダー≫はルフィアが使える魔法の中でもトップクラスの威力とスピードを持つ。まぁ、中級級の魔法の中では、だが。
魔法には初級級、中級級、上級級、特級級にわけられる。何故、初級や中級じゃないかというと人によって魔法の形が違うため初級や中級と言ったように階級を付けられないのだ。なので、初級“級”の魔法、中級“級”の魔法のような呼ばれ方をする。もちろん、初級級よりも中級級、中級級よりも上級級、上級級よりも特級級の方が複雑で威力も高い。
初級級は人に傷を付ける程度の魔法。
中級級は人に怪我を負わせる、最悪、死亡させる程度の魔法。
上級級は一度で大勢を攻撃し、殲滅できる程度の魔法。
特級級は国を滅ぼせる程度の魔法。
ルフィアはこの時、冷静さを失っていた。初心者に≪サンダー≫はやりすぎにもほどがある。下手したら怪我だけでは済まされないからだ。
「ふんっ!」
そんな中級級の魔法を魔雪は裏拳で弾き飛ばした。意図も簡単に。
「嘘ッ!?」
「へっへ! やるじゃねーかっ!!」
……演技を使って戦っている時は覚えている戦闘シーンから使える部分を抽出して戦っているため、時々、そのシーンにあった台詞が出て来てしまったりする。しかも、色々なシーンを使っているからか強気な性格になったり、冷徹な性格になるのだ。今は狂戦士の性格が出て来ている。すぐに変わるが。
「今度はこちらから行かせていただきます!!」
そう言いながら魔雪は地面を蹴った。
――ドンッ!!
まるで、ロケットのように跳んだ。魔雪が蹴った地面が抉れる。
「ッ!?」
急いで≪フライ≫を使い、右へ逃げるルフィアだったが、それを見た魔雪は一度、地面に着地してすぐにジャンプする。
――ドンッ!!
軌道を調節して逃げるルフィアと距離を縮める魔雪。
(地面を抉るほどの脚力ってッ?!)
「そいっ!」
混乱しているルフィアに魔雪はまた右ストレートを放った。躱せないと悟った彼女は両腕をクロスしてガード。
――ドンッ!!
「ぐっ!?」
右拳が腕に当たった瞬間、凄まじい衝撃を受けてルフィアは吹き飛ばされてしまった。その衝撃はドラゴンにタックルされた時と類似していた。
「きゃっ!」
地面に叩き付けられて悲鳴を上げてしまう。
「≪カッター≫!」
だが、すぐに態勢を立て直して(≪フライ≫を使っているから立ち上がらなくてもいい)風の刃を何発も撃つ。
「――ッ」
それを見た魔雪は躱せるものは躱し、躱せないものは両手で全て、弾いてしまった。
「≪エレクトリックボール≫!」
攻撃が通用していないとわかって魔法を切り替える。今度は雷球をいくつも魔雪に向かって放つ。この雷球は何かにぶつかった瞬間、弾けて敵を痺れさせる技だ。この雷球に触れたら魔雪でも攻撃を喰らってしまうだろう。
「よっと」
じゃあ、当たらなければいい。
――ズドンッ!!
魔雪は両足に力を入れて10メートルほどの高さまでジャンプした。雷球はそのまま、魔雪がいた場所を素通りする。
「え!?」
跳んだ魔雪を見てルフィアは目を点にしてしまう。そりゃ、幼女が突然、10メートルも飛べば驚くに決まっている。
「こっちに来い」
空中で両手をルフィアに向けて彼はボソッと呟いた。
「ッ!?」
すると、ルフィアの体が魔雪の方へ引き寄せられ始める。≪フライ≫のせいで、踏ん張ることが出来ず、ルフィアはそのまま魔雪の傍まで来てしまった。
「よいしょっと!!」
そして、向かって来るルフィアに向かって思い切り、右腕を突き出す。
「≪アクアウォール≫!」
杖を前に突き出して、魔雪とルフィアの間に水の壁を作り出した。この壁は上から下に水が流れているため、触れた瞬間、地面に叩き付けられるという魔法。空中なので、地面はないがパンチの軌道を変えることは出来る。
それが魔雪でなければの話だが。
魔雪の拳が水の壁に当たった刹那――。
――パンッ!
水の壁は弾け飛び、その穴を潜り抜けて魔雪がルフィアの懐に潜り込んだ。
「え……」
「どーん」
呆然とするルフィアのお腹に軽くポンと掌を当てた。たったそれだけで。
「ガッ……」
ルフィアの体はくの字に折れ曲がり、そのまま地面に叩き付けられてしまった。
「とどめだあああああああ!!」
ルフィアに向かって落ちて来た魔雪は踵に靄を集めて踵落としの姿勢になる。
(ま、まずッ……)
地面に倒れていたルフィアは迫り来る魔雪の踵に命の危険を感じた。今でも闇魔法についてよくわかっていないが、あれをまともに喰らえば怪我で済まされない。だからだろう。
「≪サンダーストーム≫!!」
上級級魔法を使ってしまったのだ。
ルフィアを中心に風が吹き荒れ、その中で雷が何度も落ちる。本来、≪サンダーストーム≫は敵が密集している場所に撃ち込んで殲滅する魔法である。しかし、今回の場合、魔雪はルフィアの真上――しかも、本能的に発動したのでルフィアがいる場所に撃ち込んでしまったのだ。
「きゃああああああああっ!?」「うわあああああああああああっ!?」
そのせいで、2人は風に吹き飛ばされ、雷に打たれ、もみくちゃにされる。まぁ、ルフィアの杖には予めセフティーがかけられていたので(上級級と特級級の威力を弱める効果がある)死ぬことはないだろう。
≪サンダーストーム≫が消えて魔雪とルフィアは地面に落ちて来た。プスプスと黒い煙を体から立ち上らせている。満身創痍である。
「ま、マユちゃん……大丈夫ですか?」
「う、うん……何とか」
そんな会話のすぐ後に、2人はほぼ同時に気絶してしまい、アルが様子を見に来るまで地面に伏し続けるのだった。
今回の話で闇魔法についてだいたいわかったと思いますが、次回、詳しく説明します。多分……。




