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話の長さが違うのはキリがいいところで切っているからです。
長い時もあれば短い時もありますので、ご了承ください。
「……」
「ご、ごめんなさい。まさかあのタイミングで魔法が暴走するなんて思わなくて……」
「もういいよ」
もう少しで豚箱に入れられそうになっていたルフィアだったが、さすがにそこまではされては逆に困る、と魔雪が許したことにより何とか犯罪者になることはなかった。しかし、カルテンではルフィアは犯罪予備軍。そして、魔雪は可哀そうな可愛らしいローブの子として有名になりつつあった。ルフィアに関してはこの事件の前から『いつかやる』と密かに囁かれていたのでカルテンの住民は納得していたりもするが知らないのは加害者と被害者だけである。
「……じゃあ、ギルドに向かおっか。何か依頼を受けるんでしょ?」
「は、はい! そうです。すでに良さそうな物は見つけてありますので安心してください」
「どんなの?」
「それは後のお楽しみですよ」
その時のルフィアの顔は少しだけ怖かった。だが、彼にはその原因はわからない。
そして、この時にもっと依頼の内容を聞いておけばよかったと魔雪は後悔することになる。
「まずは必要な物を買いましょうか」
ルフィアとパーティー登録を済ませ、依頼を受け取った魔雪に彼女は言った。
「必要な物?」
「はい、そうですね……まずは、下着を買いますか」
「……もうちょっと早く買っておいてよ」
「その点に関しては本当にすみませんでした!!」
それから服屋に言って色々なサイズを計って貰い、手頃の下着(もちろん、ブラではない。そこまでの胸がない)を手に入れて着こみ、その上にTシャツのような物を着た。これで、いつ上昇気流が起きても裸を晒すことはないだろう。
「後は何が必要なの?」
「本来ならば、鞄などが必要ですね。マユちゃんの世界の鞄はどうだったかわかりませんが、見た目よりもたくさん入るんですよ。まぁ、私がいるので鞄は必要ありませんが」
「時空魔法の異空間収納だね。他には?」
「防具……も必要ないかもです。剣士などは鎧などを着ますがマユちゃんの戦闘スキルは闇魔法しかないので後方支援だと思います。杖も……要らないかと」
「どうして? 魔法を使うなら杖も必要なんじゃ?」
魔法使いと言えば杖。魔雪の中ではそんな方程式が出来ていた。
「……マユちゃんの体格に合う杖がないんですよ」
実はルフィアが使っている杖がこの世界で最も小さいサイズの杖なのだ。でも、魔雪にはその杖でも大きすぎる。運ぶ為に抱えてなければならないのだ。
「……ああ」
魔雪の目が死んだ。
「あ、ああ! だ、大丈夫ですよ! ワードの登録は紙にも出来ますから!! 杖がなくても魔法は使えますよ!」
「……でも、その魔法もどんなことが出来るかわからないんでしょ?」
更に魔雪の目から光が奪われる。
「うぐっ……こ、ここで!! 魔法講座を開きたいと思います!!」
重苦しい空気を吹き飛ばすようにルフィアがそう宣言した。
「魔法講座?」
「マユちゃんはまだ魔法初心者。先ほど、魔法の形とワードについて知ったばかりです。もっと魔法の知識を深めれば自然と闇魔法も使えるようになると思うのです!」
「……で? 今度はどんなことをしでかすの?」
彼の脳内には下着ごと風で吹き飛ばすルフィアの姿が再生されている。
「しでかしませんよ! ちょっとここは危ないので森の方へ向かいながら説明します!」
「森?」
「今回はマユちゃんに軽く戦って貰おうと思いまして討伐依頼にしました。森に住む魔獣を倒して貰います。そのためにも魔法について知りましょう!」
そう言いながらルフィアは魔雪の手を握って森の方へ向かった。
この時、カルテンの住人はいつルフィアが魔雪を押し倒してもいいように警戒していたことを2人は知らなかった。




