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2010年8月17日、11時10分、イラク、メヌード郊外

 正面に陽炎に揺らめくメヌードの街並みのシルエットが薄く見え、周りに米軍が爆撃した家屋の瓦礫が広がった場所で、ユウナ・ブルックはイーシャ・ルドウと共に相手を待っていた。ブルックはチャードルというイスラム圏の衣装に身を包んでいた。普段は男たちの目を引く彼女の体のラインは、肩幅ぐらいに広がった布で隠されていた。頭部にはルーサリー(スカーフ)を巻くことで、ブロンドであることを隠し、露出している部分は(まぶた)から顎まで。ブラックのカラー・コンタクトでブルーの目を偽装し、濃いメイクを施すことで、白人であることをバレないようにした。

 隣にいるルドウはイラン人なので、ブルックほどの偽装は必要なかった。ルドウは衣装をしているだけで、ブルックと同じくセクシーな体を隠しているだけだった。

 ブルックは衣装の下に隠した腰にあるサプレッサーを装着したベレッタを右手で確認し、なぜ私がこんな役回りを、と思った。

「来たわよ」ルドウが言った。

 ブルックは街の方向から歩いてくる2人組の男を確認すると、右耳の中に指を当てて言った。

「テロリストが来た。2人組。車やほかの人間は確認できない」

『了解。時間通りだな。待機しろ』耳の中で聞こえた声が言った。ソーヤだ。

 いつでもベレッタを抜けるようにしながらブルックは、こちらに向かってくる2人のテロリストを見つめた。


4時間前

「テロリストのアジトはある程度絞れている」マクドナーが言った。スクリーンにレーザー・ポインターを当てながら続けた。

「テロリスト達がいるのは、メヌードの中央の広場にあるこの3件の住宅のうちのひとつだ」

 スクリーンはメヌード街の中央区の上空写真を映していた。扇状に建物が並んでおり、その中で西、北、東に緑色で表示された家が1戸ずつあった。

「どうやって居場所を絞り込んだんですか?」ベルナーが言った。

「仲介者からの情報でテロリストのアジトはこの広場のどこかにあると聞いたからだ」

 マクドナーの説明中にソーヤーは椅子から立ちあがり、部屋の窓際に行き、タバコを吸い始めた。

「ディヴァイド、吸うなら窓を開けてくれよ」とマクドナーから言われ、ソーヤーは窓を開けて、煙を外に吐いた。

「それで、その3つの家どれかがテロリストのアジトだって根拠は?」ベルナーが更に疑問を言った。

「太陽光だよ」ソーヤが答えた。彼は外に向いたままだった。

「なるほど」ソーヤを見つめていたブルックはそう言って、スクリーンに目線を移した。

「レイナの映っている映像には壁に太陽光が当たっているわね」

「その通り」マクドナーはそう言うと、上空写真の映っていたスクリーンに、中央区の地上写真を映し変えた。

「これは我々の偵察員が中央区にある建物の全てを撮影したものだ」

 撮影された建物のほとんどは1階建てで密接し合い、太陽光が当たる窓はなかった。だが、スクリーンに緑で表示されていた3戸は2階建てで太陽の当たる窓があった。

「幸運だな」クロウドが言った。「太陽光の差し込む家が3つだけで、そのどれかをテロリストがアジトに選らんだんだからな」

「そうか!」ベルナーが言った。ようやく状況を理解したのだ。

「撮影している時の時間がわからないが、太陽が出ている朝から夕方に撮影されてることは間違いない。そして日差しが室内に入る3つの家のどれかにレイナがいるってわけか」

「その通りだ」マクドナーが言った。

「だが」ヨシノが言った。彼は腕を組んでいた。「その3つの家にレイナがいると推測できるのは、仲介者の情報が正しいことが前提だ。その仲介者は信用できるのか?」

「仲介者が何者か知らないが」クロウドが言った。「ヘッジファンドを運営する父親、その娘の救出、多額の報酬。こんな仕事を仲介する人間が偽情報を流すとは考えにくい」

 窓から外を見つめいたはソーヤはクロウドの説明に拍手を送った。

「妥当な考えだな。仲介者が俺を知っている奴なら、テロリスト共の大まかな位置を特定するのは朝飯前さ。おそらくそいつはCIAか国防総省ペンタゴンの人間なんだろう」

 ソーヤは窓の外からマクドナーに目を向けた。「どうなんだ?マクドナー君」

 マクドナーは黙ったままで、ソーヤを見ずに足元に置いていたスーツケースをテーブルの上に置いた。


11時5分 メヌード中央区広場の路地裏

 路地裏に停車していた1台の黒いバンの中にはマックス・ベルナーとジン・ヨシノが乗っていた。運転席にベルナーが、助手席にはヨシノが座っていた。後部には座席はなく、その代わりにデコボコした大きなバッグが5つ積んであった。右手でハンドルを握り、左手に顎を載せながら、窓から外にいる野良犬を眺めていたベルナーは横から煙が漂ってきたことに気づいた。ヨシノが咥えていたセブンスターから出ていた煙だった。閉まりきった車内で煙が充満していた。

 全くこいつもかよ、とベルナーは思った。今回の作戦に参加している傭兵には喫煙者ばかりで、非喫煙者はベルナーとクロウドだけだった。ブリーフィングが終了したあと、それぞれの持ち場に向かいながら兵士たちは一斉にタバコに火を付けた。その中にブルックもいたことが、ベルナーには多少ショックだった。傭兵たちの中でもまともに見えたブルックが他の傭兵たちと同じ嗜好を持っていたからだ。それにしてもこの作戦、一番危険な役割を果たしているのはユウナとイーシャだな。だいたい<デンジャラス・ビッチ作戦>ってなんだよ?本当に大丈夫なのか?

「ユウナ」ベルナーが言った。

 何度も聞いたセリフに、狭い車内で大型の愛銃のアンチ・マテリアルを組み立てていたヨシノは、一瞬視線をベルナーに向けたが、すぐにライフルに戻した。

「20回目だぞ」ヨシノが言った。「何回ユウナと言えば気が済むんだ?」

「あんた、数えてたのか?」

「ああ、この2時間お前から出てくるのはあの女の名前だからな。惚れたのか?」

「いや、そういうわけじゃない。ユウナとイーシャのことが心配なだけだ」

「そうかい。その割にはイーシャの名前が出てきたのは今ので1度目だけどな」

 ヨシノはライフルを完成し、弾倉を込めた。

「いいか、1つ言っておくぞ。あの女はやめとけ。姉妹揃って戦い好きで、いつ死ぬかわからない奴だ。そんな女よりも戦場にいない女を求めた方がいいぞ」

「だから惚れてないって!」

「そうか。ま、あいつは男に構ってる暇はないだろがな」

「どういうことだ?」

「アメリカでは、あいつの姉のアシュリー・ブルックの息子の面倒を見るので忙しいのさ」

「何でユウナが甥の面倒を見てるんだ?」

「ユニオン・フォース解体後にアシュリーが壊れて、薬中のストリッパーに落ちぶれたからさ。あの様子じゃ元に戻るのには数年かかるだろうな」

「あんた、アシュリーに会ったことがあるのか?」

「ああ」

「どこで?」

「ストリップクラブさ」

 予想外の単語が出てきたことで、ベルナーは言葉を失った。女には興味なさそうな男から出てきたからだ。

「意外だな。あんたもそんなとこに行くんだな」

「勘違いするなよ。上司の命令で、アシュリーに傭兵として適正が回復しているかを確かめに行っただけだ。無駄足だったがね。それに見たくもないおぞましい光景も見てしまって後悔してる」

「何を見たんだ?」

 ヨシノは半年前のことを思い出した。ラスベガスのストリップクラブでヨシノはアシュリーの様子を確かめ、適正無しと判断を下すと、酒や裸の女を注文せずに足早に帰宅するために駐車場に向かった。車に乗りかけると、遠くから何かが揺れる音が聞こえてきた。音のする方向へヨシノが目を向けると、1台の車が激しく揺れていた。窓から運転席で裸のブロンドの女が男にまたがるように上下に体を動かしていた。窓が空いているのか、女の喘ぎ声が聞こえていた。女が体を売っている男の顔を見て、ヨシノはその場で嘔吐した。レングランだった。

 ヨシノから半年前の話を聞いたベルナーは眉をしかめながら聞いた。

「もしかして、そのブロンドの女って・・・」

「ただの商売女さ」

「よ、よかった・・・」

「何がだ?」

 顔をハンドルに押し付けているベルナーと彼を眺めているヨシノの耳の中で声が聞こえた。ソーヤの声だった。

『ジン、マックス。ユウナたちがテロリストたちの姿を確認した。車を出す準備をしろ』

 ソーヤの声を聞いて、車のエンジンをかけたベルナーの隣でヨシノはハンドガンをベレッタを取り出し、スライドを引いた。


4時間前

 マクドナーはスーツケースを机に置くと、傭兵たちに机の近くに集まるように言った。ただ、机から離れていたのはソーヤだけだったが。ソーヤは窓の外にタバコを弾き飛ばして、マクドナーの指示に従った。ソーヤ以外の者達は椅子から立ち上がり、スーツケースが開くのを待った。

 開けられたスーツケースの中にはたけのこのような形をした小さなプラスチックの塊が9つ入っていた。

「こりゃ何だ?」レングランが聞いた。口の中に入っているガムを噛む音を鳴らしていた。その音をヨシノは気になったが、プラスチックの塊の方に目を向けた。

「通信機だ」マクドナーが答えた。「耳に入れるだけでいい。それで音声も聞けるし、会話もできる。もちろん敵の近くでは声を出すなよ。運が良ければイカれた奴だと思われるだけで済むだろうが、普通に考えればほぼ間違いなく命取りになる」

 傭兵たちは耳に通信機を入れた。軽くて、違和感がない。任務中に不快感がわくことはなさそうだった。マクドナーも通信機を耳に入れた。

「どうだ?諸君、聞こえるか?」

「ああ、バッチリだ」ソーヤが言った。「で、マクドナー、何でお前まで付けてるんだ?お前も戦場に参加するのか?」

「まさか。テストで付けてるだけだ。この会議が終わったらアメリカに帰るよ。結婚記念日なので」

「はん」レングランが首を斜めに傾けて言った。「俺らが命を賭ける最中にあんたはカミさんの機嫌取りかよ」

 マクドナーは無視して腕を組みながら言った。

「ここから作戦の進め方を説明する」

 傭兵たちは席に座った。

「まず、この作戦で最も重要な役割はブルックとルドウ、君たちがすることになる」

 そう言ったマクドナーをルドウは無表情で見つめていた。テーブルに右肘をつけた手にアゴを乗せたブルックは眉間にシワを寄せていた。<デンジャラス・ビッチ作戦>という作戦名から自分の役割がある程度推測できたからだ。

「君たちを今回の任務に参加させたのは戦闘能力も考慮してるが、何よりも君たちが・・・」

「エロい体をしていて、あばずれ役にピッタリだからだろ」

 マクドナーの説明を遮ったレングランが言った。ニヤけた目を線ができたブルックの胸の谷間に向けていた。

「まあ露骨な言い方をすれば」マクドナーが言った。「その通りだ。君たち2人は美人でセクシーで、男の気を引きやすい。それが今回の作戦で使えるわけだ」

 言葉を選ぶマクドナーの様子にソーヤは目をつぶりながら口を斜めに吊り上げ、鼻で笑った。その瞬間テーブルが強く殴る音が聞こえた。ブルックが鳴らした音だった。

「ふざけてんの?私にスパイ映画でありきたりなお色気作戦をさせるつもり!?」

「そんな作戦なら俺も嵌められたいぜ!」レングランが言った。「できればムスコも一緒にハメて欲しいぜ!」

 金属音がした。レングランの額にベレッタの銃口が狙いを定めた音であった。銃を構えていたのはブルックだった。

「冗談言って死にたいの?」

 レングランの眉間にシワができ、目つきが厳しくなった。彼も愛銃の1つであるデザート・イーグルをブルックに向けた。

「俺に銃を向けんじゃねえよ!アバズレが!」

 ソーヤとクロウドは黙って2人の様子を見ていたが、ヨシノは目をつぶっていた。

「おいおい」両手を前に出しながらベルナーが言った。「やめろよ、あんたら。銃を向ける相手はテロリストたちだろ。味方同士で何してんだよ?」

「気にするな」ヨシノが言った。「いつものことだよ。犬と猿のケンカ程度だよ」

「俺が猿だと!?ジャップ野郎!」レングランが言った。

「はいそこまでだ」マクドナーが言った。「銃を向け合ういながらで結構だから、私の説明を聞いてくれよ」

 そう言うと、マクドナーが作戦の詳細を説明しはじめた。

 <デンジャラス・ビッチ作戦>は、3チームによって進行するものであった。ブルックとルドウは売春婦役だった。デルタ・ブレイド側が仲介者から得た情報によると、レイナを拉致したテログループが売春婦をこの日の午前11時に買うことがわかった。仲介者がテログループと売春業者の通話を盗聴してわかったことだった。そして、デルタ・ブレイド側は本来テログループのアジトに向かうはずだった売春婦を拉致し、ブルックとルドウを売春婦に変装させ、テロリストたちと接近させる準備を整えていた。

 その話を聞いたソーヤには仲介者が軍か諜報機関の人間だと予想でき、更に今回の任務への疑問を大きくした。マクドナーの説明が続いた。


11時5分 メヌード中央区広場

 広場では屋台がいくつかあり、車よりも歩行者が多かった。歩行者の中にはアメリカ兵が5人おり、この地区の治安の警備を行っていた。彼らはサングラスをして、その目に恐怖心があるのを隠していた。兵士である以上、どこから狙撃されるかわからない。それがイラクだった。

 広場にいる外国人はアメリカ兵だけではなかった。黒い半袖シャツの上に防弾ベストを重ねたディヴァイド・ソーヤ、ウィリアム・クロウド、スコット・レングランはアメリカ兵たちにはこの地区の警備を行なっているイラク政府に雇われている傭兵だと説明しておいた。もちろんそれは偽装であった。今回の作戦をデルタ・ブレイド側は極秘に行うように仲介者に命じられていた。それはソーヤ達がテロ組織に捕まったとしても会社による救出は期待できないことを意味していた。

 3人はパンを販売している屋台の前に立っていた。レングランはガムを噛みながらラスベガスでの思い出を語っていたが、ソーヤとクロウドは全く話を聞かずに50メートル離れた場所にあるテロリストのアジトだと目星のついた3つの建物を眺めていた。

「どれだと思う?」クロウドが言った。

「さあな」ソーヤが答えた。「いずれわかるさ。わかったとしても俺たちがそこにたどり着くのをテロリストが気づかずにいてくれるといいんだがな」

 広場にいるイラク人たちは3人に視線を向ける者たちが多かった。アメリカ兵とは違った格好をしている3人は珍しく映っていた。見ている人間の中にテロリストがいてもおかしくない状況でソーヤとクロウドはブルックたちからの連絡を待っていた。レングランは相変わらず思い出話を続けていた。

『テロリストが来た。2人組。車やほかの人間は確認できない』

 3人は通信機から流れたブルックの声を聞いた。ソーヤはブルックに言った。

「了解。時間通りだな。待機しろ」

 次はテロリストたちがブルックとルドウをアジトへ連れて行くのを待つだけだった。だが、ソーヤはそのことがバカバカしく思えた。女を拉致している場所に売春婦を連れて行くなんて、このテロリスト共はどんな神経してんだ?そのことだけでなく、仲介者がテロリスト達と売春業者の通話をどうやって盗聴したのかもソーヤには気になった。この仲介者は明らかにテロ組織の正体を掴んでいるように思えた。素人のようなテロ組織、情報を多く持つ仲介者、多額の報酬を用意している依頼人のヘッジファンドマネジャー、事件解決に動かないアメリカ軍、なぜ自分たちにこの救出作戦が依頼されたのか。疑問の多い任務だった。

 デルタ・フォース時代に軍から与えられた任務には疑問が少なかった。疑問が少ないほど任務は成功しやすかったからだ。今回のように疑問の多い任務もソーヤは行っていた。その多くがCIAから与えられたものだった。そんな任務は他の隊員なら失敗することが多かったが、ソーヤは違った。失敗とは無縁だということで彼を多くの傭兵派遣会社が欲しがったものだった。

 過去のことを思い出していたソーヤには自分よりも実力が同等かそれ以上であると思えた2人の存在が浮かんだ。傭兵への道を選び、デルタ・フォースを去った自分とは違い、かつての自分と同じ古巣にいることを選び、後に伝説の対テロ特殊部隊<ユニオン・フォース>を率いることになったジャック・ハーディングとレクター・フォードのことだ。自分もデルタ・フォースに残っていればユニオン・フォースに入れられたかもしれない。だが、ハーディングとフォードの結末がわかる現在では傭兵になったのは正解だったのかもしれない。少なくとも戦死したり、刑務所に入ったりしていないからだ。

「ジン、マックス。ユウナたちがテロリストたちの姿を確認した。車を出す準備をしろ」 

 ソーヤはヨシノとベルナーにそう指示すると、クロウドとレングランと目を合わせた。

「いよいよだな」クロウドが言った。

「たく、やっとかよ」レングランが言った。「話のネタも尽きてきてたんだぜ。お前らは聞いてなくて、俺独り言を言ってるみたいだったけどな」

 発信機を付けたブルックとルドウがアジトに到着すればレイナの居場所が判明する。その建物の前にベルナー達がバンを止め、中にある自動小銃を取り出し、ソーヤとクロウドとレングランがアジトを急襲し、レイナを救出する。それがこの作戦の全貌であった。仮にレイナがそこにいないとしても、居場所はテロリストを拷問して聞き出すまでことだった。


 イーシャ・ルドウは無表情で通したが、ユウナ・ブルックはそうすることに苦労した。目の前に現れたテロリストだと思われる2人の男は英語を話しているだけでなく、白人だったからだ。どう見ても過激派のイスラム教徒に見えなかった。

「いいね」男の1人が言った。「こんな美女2人が相手をしてくれるとは思わなかったよ」

 2人の男はにやけていた。見た目から20代であることがブルックにはわかった。それよりもこの2人がテロリストであるかがわからなかった。まさか、偽情報に踊らせたの?相手にテロリストであるのかを確認するわけにもいかなった。

「あなたたち」ブルックが言った。「アメリカ人?それともイギリス人かしら?」


「おい、様子がおかしいぞ」

 ソーヤはブルックが話している内容を奇妙に思った。クロウドとレングランも同じだった。


「どういうことだ?」ベルナーが言った。

「さっぱりさ」ヨシノが答えた。「まずいぞ。ユウナの奴何聞いてんだよ!?」


「何でそんなこと気にするんだい?白人がイラクにいちゃいけないのかい?」

「ごめんさーい」ルドウが言った。「この子、まだ新人で緊張してるのよー」

 ブルックはこれまで口数の少なかったルドウが見事に売春婦を演じていることに関心した。

「それよりも早く楽しめる場所に連れて行ってくれない?」

「そうだね」もう1人の男が手を腰に入れながら言った。「けどその前に」

 男たちは銃を構えた。2人が手にしていたのはH&K MARK 23。アメリカ軍の特殊部隊などが採用している軍用自動拳銃だった。

「教えてもらう」男の1人が続けた。「発信機はどこにある?」

 何でバレてるの!?ブルックは状況が掴めず、ルドウとともに両手を上げるしかなかった。太陽の日差しと砂しかない場所で2人は絶望的な状況に追い詰められた。

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