8
12時56分
2つの道路でできた交差点へと続く通りでウィリアム・クロウドはPDWを連射し、銃弾を食らった二人の敵が地面に倒れるのを確認した。周囲を見回した。右の歩道には安そうなホテルが建っていた。銃弾の古い跡がいくつも壁に残っている。以前にもこの場所では銃撃戦があったことを物語っていた。二十メートル行ったところの交差点を渡った先の十時の方向にある建物は一部が崩れ、内部の壁が丸見えだった。テロリストのロケットランチャーでも食らったのだろう。
クロウドは歩き出し、二体の敵の死体を調べた。どちらもSCARを装備していた。主にアメリカの特殊部隊向けに製造されているものだ。クロウドもシールズにいた頃使っていた。照門にホロサイト、前部にフォアグリップが付いてた。弾が少なくなっていたPDWを地面に捨て、クロウドは死体からSCARとマガジンを回収した。5.56ミリ弾の入ったマガジンは10個あった。
ポーチにマガジンを入れながらクロウドは二体の死体に目を向けた。どちらも20代の白人だった。アメリカ人なのか?傭兵になって同じ傭兵を殺すことになるとはクロウドは思ってもいなかった。シールズ時代にはアメリカ国民を守るためにテロリストと戦ってきた。それが今ではアメリカ人らしき連中と戦っている。そのことには少し抵抗を感じた。クソったれ、とクロウドは思った。ディヴァイドがデルタ・フォース時代に何をやっていたかは少ししか知らないが、あの男なら誰であろうと殺すことができそうだ。それがシールズとデルタ・フォースの違いだ。
クロウドはSCARの銃床を肩で固定しながら動き始めた。2車線の道路には車の姿はなかった。代わりにターバンを巻いた死体が辺りに五体転がっていた。その周りにはAK―47。テロリストのようだ。何故かこの街にはテロリストもいるようだった。武装している人間には敵意をむき出しにして、向かってくる連中だ。
街はデルタ・ブレイド、他の傭兵、そしてテロリストによる三つ巴の戦いの戦場と成り果てていた。最も不利なのは俺たちだな、とクロウドは思った。レイナを守るブルック、ベルナー、ルドウを除けば銃を手にして戦っているのはクロウド、ソーヤ、ヨシノの3人だけだった。敵の傭兵たちやテロリストの数は不明で、数だけでデルタ・ブレイドの部隊は劣勢だった。
「何者だ?」
突然背後から声が聞こえた。クロウドが振り返ると、迷彩柄のヘルメットと戦闘服で顔以外の肌を隠していた五名の兵士が、横に並んで銃を向けていた。どうやらこの街にはもう一つの勢力がいたようだった。格好から駐留している多国籍軍だと思えるが、どこの国の兵士かわからなかった。まずいな、とクロウドは思った。イラクにいた証拠は残すな、とデルタ・ブレイドから言われていたからだ。それにも関わらず多国籍軍に囲まれることになってしまった。だが、証拠隠滅のために彼らを殺すことはクロウドにはできなかった。
「ウィリアム?」一人の兵士が言った。「お前、ウィリアム・クロウドか?」その兵士は銃を下げると、ヘルメットを外して続けた。「オレだよ。アレックス・ロドスだ」
クロウドには彼のことを知っていた。「驚いた、まさかこんなところで会うとわな」
アレックス・ロドスはクロウドの高校時代の友人だった。軍から大学の奨学金を得るために卒業後にアメリカ陸軍に入った男だった。その後、無事に大学を卒業したとクロウドは聞いていた。今頃は戦いとは無縁の生活を送っていてもおかしなかった男だ。
「陸軍にまだいたとは知らなかった」クロウドが言った。
「9.11のあと再入隊したんだよ」
親しく話す二人の様子を見て、残り兵士たちも銃を下ろした。
「そうか」クロウドが言った。
「お前、シールズに入ったんだってな。何してんだ?こんなところで」
クロウドが最も答えたくない質問だった
「シールズはもう抜けた。今は傭兵をやってる。ここには治安維持で派遣された」
とりあえずクロウドは真実と嘘を混ぜ合わせた。
「あそこの連中はお前の仲間か?」クロウドに殺された二名の傭兵の死体を見ながらロドスは言った。
「いや、知らん連中だ」
「そうなのか」ロドスが言った。「お前どこのPMCにいるんだ?」
クロウドにとってまた厄介な質問が出てきた。
「フリーランスだ。どこのPMCにも所属していない。イラク政府に直接雇われている。元シールズの腕を買われてな」
「軍を抜けても必要としてくれる政府がいるとは羨ましい」
クロウドの嘘を信じ込んだらしいロドスは、表情に旧友を敬う笑みを浮かべていた。高校時代も決して友には疑いを抱かなかった男で、友のためなら何だってしてくれた。そのため男女問わずに同級生たちからは人気があった。
「お前だってアメリカ政府が必要としてくれている。だから再入隊できたんだ」クロウドが言った。
「少尉」一人の兵士が言った。「そろそろ任務を」
「ああ、すまない」ロドスが言った。どうやらこのチームの隊長らしい。「ウィリアム、俺たちはこれから、あっちの方に向かう」ロドスが交差点から西の方向に人差し指を指した。「あっちでブラック・リヴァーの傭兵たちがテロリストと戦っている。俺たちは彼らを援護する」
ブラック・リヴァー。その名を聞いてクロウドは殺した男たちの死体を一瞬見た。なら奴らもブラック・リヴァーなのか?
「お前も手伝ってくれないか?」ロドスが言った。「元シールズがいるなら心強い」
ロドスだけでなく他の兵士たちも期待するようにクロウドを見つめていた。だが、クロウドにとっては願い下げたい注文だった。クソ、わざわざ命を狙ってるかもしれない連中のもとへのこのこ行くなんて御免だ。こいつらの目の前で奴らが俺を撃ってきたらどうすりゃいいんだ?
「アレックス、悪いが―――」
クロウドは一発の銃声で言葉を遮られた。前方にいたロドスの部下の一人は目に風穴が空き、勢いよく血が吹き出しながら、後ろに倒れた。
「スナイパーだ!」兵士の一人が叫んだ!
クロウドは即座にホテルの方へと走った。その途中でAK―47を手にした、ターバンを巻いた男たちが交差点の十メートル先から走ってくるのが見えた。クロウドはホテルのドアを蹴り開けた。背中を内側に開いたドアに付けて隠れると、銃弾が近くの壁や地面にめり込み、破片が舞った。クロウドは銃弾を飛ばしてくるテロリストたちがいる方に向けて、引き金を引きながら左右にSCARを動かした。ロドスと二人の兵士も銃を撃ちながらホテルに入ってきた。もう一人の兵士は向かいの歩道の街路樹に張り付くように隠れていた。十時の方向にある半壊した建物の内部から太陽が反射した輝きが見え、クロウドは身を隠した。すぐ後に銃弾が目の前の壁に穴を開けた。輝きはスナイパーライフルのスコープに太陽が反射した光だった。これでスナイパーの位置はわかった。とは言え、AK―47の弾幕を浴びせられている現在の状況で対して役に立つ情報ではなかった。
「大丈夫か?」クロウドはロドスに言った。
ロドスは部下と一緒に床に膝をついてた。
「ああ大丈夫だ。クソ、あいつらよくもミゲルを!」
死んだ兵士はミゲルという男だった。死体の周りには血が輪っかを作り広がっていた。その上の空中で何かが高速で飛びすぎた。
「今の何だ?」ロドスが言った。
「クソ、プレデターだ」クロウドが言った。
「ならよかったじゃねえか」そばにいた兵士が言った。「あれでテロリスト野郎どもを撃ち殺してもらおうぜ」
あれが俺を狙っていなけりゃな、とクロウドは思いながら、自分が乗っていたヘリを墜落させた忌々しい殺人兵器がまだ近くを飛んでいたことに不快感を感じた。プレデターが通りで限りなく低空飛行していたことは、上空からは確認できない建物の影に隠れているターゲットを探していることを暗示していた。あれが戻ってくる前にクロウドはここを離れなければならなかった。だが地上にはテロリストがいて、逃げることも隠れていることも危険だった。
ロドスたちは床に膝をついたままだった。プレデターがテロリストを殺してくれることに期待していた。だが、一向にプレデターが戻ってくる気配はなかった。クロウドは近くの壁に付いていた鏡を割り、床に散らばった比較的に大きな破片を拾い上げた。そして、手にした破片だけを外に晒し、角度を調整しながら様子を伺った。テロリスト達は銃撃を止め、AK―47を構えながらゆっくりとこちらへ向かってきていた。空にプレデターの姿がないことは、クロウドにとって唯一喜ばしいことだった。どうやらクロウドの姿を確認することはできなかったらしい。未だに危険な状況であることに変わらなかった。街路樹に隠れていたロドスの部下は忍び寄るテロリスト達に怯え、震える手でM4をリロードしていた。
クロウドはSCARを壁に立て掛けて、ホルスタからUSPを左手で抜き取った。「プレデターは来ないようだな」
「クソ、俺たちだけでやるしかないか」ロドスが言った。
「代わりにテロリストたちが近寄って来ているぞ」クロウドが行った。鏡の破片に映った十人のテロリスト達が交差点を渡ろうとしていた。その位置を確認して、クロウドはUSPの銃口を外に出して引き金を引いた。一発、二発と銃弾を放ち、五発目でようやくテロリストの一人に命中し、地面に崩れるように倒れたのが破片で確認できた。クロウドに銃撃に反応してテロリストたちも撃ち返してきた。相手の弾幕におくすることなく、クロウドは発泡を続けた。六発目から十二発目の間に四人のテロリストが倒れていった。あと五人。残りの三発は命中しなかった。
「五人は倒した」クロウドが言った。そのまま仲間の死に動揺して散開したテロリストたちを破片で見た。そのとき、クロウドは目を大きく見開いた。クソ、あれは―――。そして、右手にかすかな痛みが走った。持っていた破片にテロリストたちの銃弾が命中し、破片が粉々に砕け散った。親指の関節に赤い線の切り傷が入った。
「大丈夫か」ロドスが言った。
「ただの切り傷だ。だが、クソなんてことだ!」
「おい、どうした?鏡ならまだあるぞ」
クロウドはロドスを見た。「そうじゃない!子供がいたんだ。まだ幼い」
銃弾で砕ける寸前に鏡の破片には交差点の手前にある建物の角から泣きながら出てきた五歳ぐらいの少女が映っていた。テロリストたちとはそんなに離れていない距離だった。戦場に巻き込まれた子供をクロウドはこれまでに何度も見てきた。銃を持つ大人は誰であろうと、そんな幼い目には恐ろしく映るものだった。
「援護してくれ」クロウドはそう言うと、壁に立て掛けていたSCARを手にした。そのあとに再び床にある鏡の破片を取り、外に向け、テロリストの位置を確かめた。
「お前、まさか」ロドスが言った。
「あの娘を助ける」
「よせよ、お前が蜂の巣になるだけだぞ!」
「お前らが援護してくれればそうはならない。ほっとけばあの娘が流れ弾を喰らうかもしれない。」
ロドスはため息をついたが、すぐに手を使って街路樹に隠れた部下にこれから援護射撃をすることを伝えた。ロドス本人が自覚していたかは不明だったが、クロウドが敵に姿を晒すことは囮になるのも同然でアメリカ兵たちには好都合だった。
クロウドは開いたドアに背をつけてゆっくりと深呼吸をした。その後に銃撃を受けづらいように体をドアに密着させ、テロリストたちの方へSCARを構えた。ちょうど良くホロサイトのレーザーがそのうち一人の額を捉えていた。弾を3発撃ち込んで殺したあとに外へ出た。クロウドは残りのテロリストたちからの弾幕を避けるために斜めに走り出した。避けた弾は建物の壁や街路樹に当たった。
後方ではロドスと二人の部下は外へ出て、片膝を地面につけながら援護射撃を始めた。彼らが放った弾の一発が一人のテロリストの太腿に命中し、地面に崩れた。その男は脚を引きずるようにして、遮蔽物に隠れようとした。
少女の方へ走っていたクロウドは弾幕の対象がロドスたちに変わったことがわかった。この隙に少女を保護し、この区画から脱出する。それがクロウドの計画だった。敵の注意をロドスたちに向けるのは多少抵抗を感じたが、彼らならばうまく切り抜けるだろうと思った。それに敵の数も最初よりは少なくなっている。
少女まであと少しの距離だった。表情が怯えているのもわかるくらいだ。銃を持った大人が自分の方へと走って来ているならば無理もないが。もう少しで少女に手が届く、とクロウドが思ったときに前方にある少し離れた建物から光が反射してきた。咄嗟の判断でクロウドは地面に伏せるために横に体を転がした。途端に銃声と共に体の右側の地面に穴が開いた。スナイパーの狙撃だ。穴は体から数センチしか離れていなかった。伏せたままクロウドはスナイパーへと銃口を向けた。自分とスナイパーの間に少女が立ちながら泣き叫んでいたが、構うことなく引き金を引いた。3発の銃声と共にスナイパーが建物から外に落下したのがスコープ越しに見えた。
クロウドは起き上がり少女に手を差し出した。「さあ、逃げるぞ」アラブ語で言った。
少女はアラブ語で言われてクロウドを信用したのか、彼の手を離れないように強く握り締めた。そのまま引っ張られて交差点を曲がった。必死に彼の歩調に合わせられるように走った。振り返ると、テロリストたちが背後から銃撃を受けて倒れる姿が見えた。左の方へと目を向けると、上空に飛行体の姿があった。
「クソ」クロウドが言った「忌々しいプレデターめ。さあ、急ぐんだ!」
クロウドはプレデターを見ながら必死に走った。少女を巻き添えにプレデターの犠牲になるのだけは避けたかった。だが、プレデターは自分の方へ向かってくる様子はなかった。その代わりにロドスたちがいる方へと向かい、一発のヘルファイアミサイルを放ち、飛び去っていった。すぐあとに爆発音が聞こえた。先ほどいたホテルが崩れ去るのをクロウドは目に焼き付けた。
なぜロドスたちを殺した?目的は俺のはずなのに、とクロウドは思うしかなかった。またあの無人機が戻ってくる前に少女を隠さなければならない。
しばらく走り続けて、ホテルからも遠い所へと来ていた。幸いなことに逃げている途中でブラック・リヴァーの傭兵やテロリストと遭遇することはなかった。上空にもプレデターの気配はない。少女は泣き止んでいたが、その頬にはまだ太陽の光を反射する涙が残っていた。クロウドは人が死ぬ姿をもうこの少女には見せたくなかった。
「ミア」誰かが言った。クロウドがその声のした方向を見ると、近くで中年のイラク人が民家のドアを開けてこちらを見ていた。
「大丈夫。私の叔父さんよ」少女はクロウドに言った。この少女はミアという名前だった。
クロウドはミアが手を離して叔父のもとへと駆け寄っていったので、周辺を警戒しながらその跡を追うように民家へと歩いて行った。「あの人が私を助けてくれたの」というミアの声が聞こえてきた。中年の男はミアの肩に手を置きながらクロウドを見ていた。その表情から警戒していることがわかる。銃を持った傭兵の男に対する反応としては当然だ。
クロウドが側に来ると、ミアの叔父が話しかけてきた。「あんた傭兵か?」
「ああ。だが心配するな。すぐにここを離れる」
イラクではブラック・リヴァーの社員たちの一部が民間人の殺害、レイプ、放火を犯していたので傭兵の評判は最悪だった。クロウドはデルタ・ブレイドの所属だが、イラク人にとっては傭兵派遣会社の違いなど知ったことではないだろう。
「何を言う?」ミアの叔父が言った。「ミアを助けてくれたんだろう。あんたも家に入りな。外は危険だ」
クロウドはソーヤとヨシノがまだ敵と戦っていると思うと、家に隠れることを少し躊躇したが、ミアの叔父に言葉に甘えることにした。レイナの救出。ヘリの墜落。敵との銃撃戦。そして、何よりも旧友のロドスを失ったことで体力的にも精神的にも疲労がたまっていた。
「ありがとう」クロウドが言った。
「とんでもない。ミアを助けてくれたのだからお礼を言うのは俺の方だよ」
クロウドが家に入ると、中には台所、テーブル、椅子、絨毯があった。窓はカーテンが閉められており、外からは若干の光が隙間から差し込んでいた。ミアは洗面所へ行った。その姿をクロウドは見つめていた。背後からは叔父がドアを占める音がした。
「まあ、座りな」
クロウドは勧められて椅子にすわると、ミアの叔父から水の入ったコップを渡された。
「俺はマハーマって言う。で、あんたの名前は?」ミアの叔父のマハーマが言った。
「俺はウィリアム・クロウドだ。ところであの娘、ミアの両親はどこに?」
クロウドは水を飲んだ。
「死んだよ。家がアメリカ軍の空爆を受けたんだ。運良くミアは生き残った。」
クロウドは水を飲むのを止めた。視線をマハーマに合わせられなかった。彼がどんな目で自分を見ているかを知りたくなかった。
「ミアの年はいくつなんだ?」
「5歳だ」
「あんたアメリカ人か?」マハーマが言った。
「ああ」クロウドは視線をテーブルに向けたままだった。
「それに元軍人だろ。陸軍か?海兵隊か?」
なぜわかったんだ?とクロウドは思ったが、正直に答えることにした。
「海軍だ。正確にはネイビー・シールズだ」
「ああ、特殊部隊かなんかだな。そりゃすごい」
マハーマの声には憎しみなど一切感じられなかった。それがクロウドには不思議だった。なぜマハーマは自分を責めないのか。もしかするとミアの両親であり、マハーマの兄弟か姉妹を殺した男かもしれないというのに。
「すまなかった」クロウドが言った。
「何を謝っている?」
「俺の祖国や軍があんた達の国にしたことをだ。」
「確かにアメリカは憎いが、あんたは命令に従っただけだろ。それにイラクだってアメリカ人を殺している。お互い様さ」
「しかし」
クロウドはそう言いかけて、5年前のことを思い出した。当時彼はイラクにいた。オサマ・ビンラディンがイラクに潜んでいるという情報をCIAが掴み、アメリカ政府はデルタ・フォースとシールズ共同のビンラディン抹殺作戦を実行した。その作戦にはクロウドだけでなくディヴァイド・ソーヤも参加していた。―――クロウドは後から知ったことだが、身分をシールズの隊員と偽っていたユニオン・フォースのジャック・ハーディング、レクター・フォード、アシュリー・ブルックも加わっていた。
その作戦で上空を飛ぶヘリからクロウドは、プレデターがビンラディン殺害のためにいくつもの民家を焼き払うのを見ていた。アルカイダの者たちが空爆から逃れるように民家へと隠れたためでだった。だが、作戦の優先事項はビンラディンの殺害であったために、民間人の犠牲は一切考慮されず無差別に爆撃が行われていた。結局アルカイダの一味の何人かを殺害することには成功したが、肝心のビンラディンの遺体を発見することはできなかった。
「あんた、傭兵にしては変わってるな」マハーマが言った。「傭兵なんて無法者集団だと思っていたが。いいか、あんたはミアを救ってくれたんだ。それが肝心なことだ」
「子供が死ぬのは見たくないからそうしただけだ」
「ミアがあんたの近くにいてよかったよ。さっきは恐ろしい奴が外にいたからな」
「恐ろしい奴?」
「ああ、そいつもおそらく傭兵だろうな。笑いながらテロリストや傭兵を撃ち殺していやがった。そういや、格好があんたに似てたな」
ディヴァイドかジンかのことを言っているのか、とクロウドは思った。おそらくディヴァイドのことだろうな。ジンは他人から恐れられるようなことはしない。
「そいつはいきなり空から降ってきやがったんだ」
クロウドは耳を疑った。目の前でヘリから落ちた男を見ていたからだ。