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第90話 「みずきと真紀」


ある日、シャインミュージック㈱本社に呼ばれたみずきは、何の話だろうと少し不安になっていた。


六本木の高層ビルに在る会社に行くと、10畳くらいの会議室に通された。

中央に長い机が有り、左右にそれぞれ6席、前後に3席椅子が有った。

みずきは、椅子に座らずに、41階からの景色を窓から眺めていた。

「なんて人間って、ちっぽけなんだろう。沢山の人が居ても、ひと一人が人生で関わるひとの数なんて、大した数じゃない。そりゃー、バリバリの営業マンだったら、それなりに多いかもしれない、あとは、学校の先生やお医者さん、だけど、1万人には届くかどうか。

でも、あたしは、もうそれ以上の人たちに知られて、関わりをもちはじめている。

そう、あたしは、今、スターの階段を上っている。

瑠美、必ずあなたを超えて見せる。

そして、誠さんを取り戻すわ。」


突然、ノックの音がして、ドアが開いた。

渡瀬充だったが、後ろに誰かを連れている様子だ。

渡瀬充は部屋に入ると、後ろにいる人物を招き入れた。


渡瀬充が、窓際に立っているみずきを見て言った。

「こんにちは、今日は、君に会わせたい人が、2人いるんだ。

こちらの方が1人目で、シャイングループ代表取締役会長の矢倉孝道です。

会長は、シャインミュージックの社長でもあり、僕と一緒に会社を立ち上げた人で、もともと、僕とバンド仲間でもあったんだ。

だから、音楽については、厳しい目を持ってるし、その目は確かだ。」


矢倉孝道が前に進み出て、みずきに手を差し伸べて、握手を求めた。

「君は、素晴らしい才能を持っている。

一緒に仕事が出来て、とてもラッキーで嬉しく思うよ。

君の事は、渡瀬君にまかせているが、何か有ったら直接僕に連絡をくれても良いから。

思いっきりやってくれ」


みずきは、矢倉会長としっかり握手をした。

すると矢倉会長は、満足そうな笑顔で手を軽く振りながら、部屋から出て行った。


渡瀬充は言った。

「シャイングループ会長が、直接握手をした意味が、君に解るか?

それは、シャイングループ全体で君をバックアップするという事。

言いかえれば、シャイングループが、君に賭けているという事だ。

君は、絶対に売れる。「ブルーインパクト」キャンペーンで、僕の自信は、確信となった。

おそらく、鮎川瑠美と競う事になると思う。

そこで、2人目の会わせたい人なんだが・・・。

入ってくれ!」

渡瀬は、ドアに向かって大きな声で呼びかけた。


すると、みずきには見覚えのあるシルエットの女性が、ドアを開けて入って来た。

みずきは、その顔を一目見るなり、大きな声を上げた。

「真紀さん? 加藤真紀さん?」


みずきの声を聞くなり、入って来た女性も、声を上げた。

「みずきちゃん? みずきちゃんなの? びっくり。

まさかシャインミュージックが、絶対売れると見込んだ新人というのが、みずきちゃんだったとは、世の中、広いようで狭いわね。」


「でも、何で真紀さんが、ここに?」

「何だ、2人は、知り合いだったのか。それなら、話が早い。

橘みずきさんのマネージャーを、加藤さんにやってもらう事になった。

加藤さんは、鮎川瑠美のマネージャーをしていたんだが・・・。

うむっ?・・・何で2人は、知り合いなんだ? 鮎川瑠美に関係が有るのか?」


真紀が、みずきの顔色をうかがった。

みずきは、ほんの僅か戸惑ったが、真紀をチラッとみると、渡瀬に言った。

「鮎川瑠美は、関係ありません。真紀さんは、お姉ちゃんのクラスメイトだったんです。」


「そうだったか。お姉さんのクラスメイトか。世の中は、狭いなー、はははっ(笑)

これから、身の回りの事やスケジュール管理は、加藤さんにやってもらうから、連絡は密に取ってくれ。」


「はい、分かりました。宜しくお願いします。」

みずきは、深々と頭を下げた。


その後、今後の打ち合わせが行われた。

衣装やメイク、関連グッツ、方向性やポリシーなどについて話し合いが行われて、みずきには納得いかないものも有ったが、目的の異なるみずきには、あまり関係がなかった。

打ち合わせは、2時間経ったところで、渡瀬に急用が出来たので解散となった。


渡瀬が居なくなると、加藤真紀がそばに来て言った。

「みずきちゃんと、まさかこんな形で再会するは思わなかった。

歌手デビューなんて、それもこんなに早くに。しかも、シャインミュージックを本気にさせる新人だなんて。本当に、びっくりしたわ。」


「あたしも、チョーびっくりですよ。瑠美の親友でマネージャーの真紀さんが、あたしのマネージャーをするなんて。瑠美と何か有ったんですか?」


「何か有ったと言えば、有ったかな・・・。」


「やっぱり! 瑠美は自分勝手で、人が傷ついている事が解らない人だから。」


「まーね・・・。

私もね、歌手になりたかったの。

だけど、自分に実力も無いくせに、上手くいかない事を瑠美のせいにしてた自分も悪いんだ。結局、同じ夢を見て、瑠美が成功したから、嫉妬していたんだと思う。

でもねー、瑠美と一緒にいると、そう解っていても辛いの。

だから向こうの事務所辞めて、心機一転。

マネージャーとしての腕を買ってくれたシャインミュージックで、マネージャーとして一流になってやろうと思ってね。」


「そうですかー。

それじゃー、その腕前で、あたしを、瑠美を超えるスターにしてください。」

みずきは、真紀に頭を下げた。


真紀は、みずきに握手の手を差し伸べた。

2人は、両手でがっちりと固い握手をした。


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