表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/96

第75話 「ストレス発散」


その夜、誠の携帯が鳴った。

守だった。


「おい、誠。 本当にこれで良いのかよ。

みずきちゃん、かなり応えてるぞ。」


「ごめん、守。 自分の気持ちに正直になると、こうするしかなかった。

ダラダラと気持ちの無い生活を続けるより、ハッキリとけじめをつけた方が良いと思ったんだ。僕の一方的な考えだけで、みずきには悪かったと思っているんだ。」


「そっか、解ってるなら良いんだけどさ。

みずきちゃん見てると、可哀そうになっちゃってさ。」


「本当にみずきには、すまないと思ってる。でも、どうしようもないんだ。」


「分かった。俺も他人の事を、とやかく言えたもんじゃないけど、一度ちゃんと会って、謝った方が良いんじゃないの?」


「そうねー、考えておく。じゃー。」


誠は、電話を切った。

誠は、明日のドライブのことで浮足立っていた気持ちを、引き戻された。


そして、朝が来て、瑠美はいつものように仕事に行き、数時間後に戻って来た。


「ただいまー。 誠、行くわよー。」


「お帰り。」


「なんか元気無くない? あっ! みずきのこと考えてた? 


みずきは、大丈夫だよ。今は落ち込んでいるだろうけど、強い子だから。


私に、復讐する方法を考えているかも。」


「えっ。」


「冗談だよ、冗談。 ほら、行こう。 

せっかくの気分転換なんだから、スマイル、スマイル。」


瑠美は、誠の頬に、かるくキスをした。


誠は、ドキッとした。


瑠美は、誠の手を引き地下駐車場へ向かった。


歩いていた瑠美が、止まった。


前には、真っ赤な車が有った。


それを見た誠が、思わず言葉を漏らした。


「ハデー。」


「そうかな? カッコイイと思うんだけど。」


「変わった形だよねー。」


不服そうな顔で、瑠美が車の反対側を指差した。

「誠は、あっち。」


「えっ! 左ハンドル? 外車なの?」


「そうだけど。この車、知らないの?」


「うん、車に興味無いから。」


「そっか。 乗って。」


2人は、同時にドアを開けて、乗りこんだ。


すぐに、瑠美は、エンジンを掛けて吹かした。

「ヴォーン! ヴォーン!」


独特の音が、薄暗い駐車場に響き渡った。


「さぁー、行くわよ。」


真っ赤な車が、マンション脇の出口からゆっくりと顔を出した。


眩しい太陽の陽が、車内へ差し込み、瑠美の顔を照らした。


瑠美は、サングラスを掛けると、ハンドル操作も機敏に、アクセルを踏み込んだ。


真っ赤な車は、さっきとは別の独特の音を出して加速した。


「ヒューン、ヴォーン!」


助手席で瑠美を見ていた誠は、普段ののんびりした動作とは違う瑠美を見て、単純にカッコイイと思った。


「この車は、なんと言うんですか?」


「本当に知らないのね。 ポルシェだよ。」


「あっ、聞いたことある。」


真っ赤なポルシェは、すぐに高速に入った。


瑠美は、一段とアクセルを踏み込み、強烈な加速で、誠はシートに押しつけられた。


「凄い加速だね!」


「凄いでしょー。この車は、ターボが付いてるから、すごく速いのよ。」


「車、好きだったんですね。」


「うん。 私のストレス発散方かな。 嫌な事が有ると、高速を飛ばすの。

この車、気持ちいいくらい加速するから、最高に気に入ってるんだ。」


瑠美は、ハンドルを撫でながら、車に話し掛けるように言った。

そして、付け加えた。「ねぇー、モモちゃん。」


「えっ? 車の名前ですか? ピンク色でも無いのに、モモちゃん?」


「知らないのー? 川口百恵。」


「あー、なんか聞いたこと有る。伝説のアイドルだとか。」


瑠美が、右手を伸ばして、音楽を掛けた。


車内にエレキギターの独特のイントロが木霊する。


「なんだか、カッコいい曲ですね。」


「そうでしょ! ほら、真っ赤なポルシェ!」


「なるほどー。」


「ほら、ほら、次が良いの! 『馬鹿にしないでよ!』 モー最高!」


「こんな歌有るんだー。なんか画期的ですね。」


「そう、なんか旋律も普通と違うのよ。江崎竜童、阿葉洋子は、天才だわ。」


「作った人ですか?」


「そう。私もこんな曲歌いたい。」


「その人に、頼んだらいいのに。」


「そんなに簡単には、行かないわ。一世を風靡したゴールデンコンビですもの。」


「瑠美さんだって、今、一世風靡してますよ。」


「私なんて、とてもとても、及ばないわ。」


「そんなことないですよ。いろんな記録作ってるじゃないですか。」


『馬鹿にしないでよ!』瑠美が大きな声で、曲に合わせた。


「あー、びっくりした、僕が言われたのかと思った。(笑)」


車内に笑い声を乗せて、真っ赤なポルシェは、箱根に向かって疾走した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ