第74話 「デートの予定」
数日が経ち、より親密になった2人が一緒に外出する日がやって来た。
「仕事の変更で明日の1時から、空いたんだけどデートしよう?」
瑠美が、嬉しそうに言った。
「デートって、外で?」
「当り前じゃない。」
「だけど、真紀さんとの約束は、良いの?」
「見つからなきゃ、約束破ったことにならないでしょ?」
誠は、あまり乗る気にならないでいた。
「そんなんでいいの? 知らないよー、ばれても。」
「大丈夫だって。ねぇー、どこ行きたい?」
誠は、聞かれたので大した経験も無いのに、口癖のように言った。
「映画とか?」
「せっかくなんだから、ただ座ってるよりも、外の方が良いなー。」
誠は、外と言われても考えつかない。
「免許が有れば、ドライブとかもあるけど・・・。」
瑠美は、大事なことでも、思い出したように言った。
「教習所、途中だったんだよね。この近くの教習所に行く?」
「うん。友達にお金出してもらってたから、免許証取れるまでやらないと。」
「分かった。事務所のスタッフに、頼んでおく。費用は私が出すから、お金は、お友達に返しちゃって。」
「でも、瑠美さんに出してもらっても、なんか悪い気がするし。」
「何言ってるの。そんなの気にしなくていいよ。今はたまたま、私がお金有るから出すんで、将来無くなったら、出してもらうかもしれないし、お金以外のものは、出してもらうからね。」
「お金以外のもの?」
「そう、知識や知恵やら、技術とか。 それに、愛情とかもね。」
誠は、思ったものと違っていたので、気が抜けた。
「あ~。」
「だから、生活費とかも全然気にしなくていいから。」
「そう言われてもねー。」
「それじゃー、ここの家賃半分出す? 高いわよ~。」
「えっ! 無理です、無理です。」
「だったら、そんなこと言わないの。」
「はい、はい。」
瑠美が、突然、大声を上げた。
「あーっ! そうだ、私、免許持ってる。 忙しくて、あんまり乗ってないけど、車も有った。」
「えっ! そーだったんだ。じゃーいつでもドライブ行けるんだね。」
「でも、どっちかって云うと、手を繋いで渋谷とか原宿をショッピングして歩きたいなー。」
「そんなの無理でしょ。すぐ人だかりになちゃって、問題になっちゃうよ。」
「そっかなー、サングラスして、よく渋谷とか横浜、歩いてるけど案外気付かれないよ。」
「うそー。鮎川瑠美が歩いてるのに、気付かないの?」
「うん、たまに、『鮎川瑠美さんですか?』とか言われるけど、『よく言われまーす。』って言うと、首かしげて行っちゃうよ。」
「サングラスしてたって、分かりそうなもんだけどなー。」
「一緒に歩いてみる?」
「ムリムリ、落ちつかないし、ばれたら大変なことになっちゃうし、真紀さんに知られたら・・・。」
「そんなことないんだけどなー。 じゃー、分かった、今回は、ドライブで箱根に行こう。」
「分かった。そうしよう。でも、さっきの言い方だと、運転してないみたいだけど、大丈夫? それに、車もちゃんと動くの?」
「こう見えても、運転は得意なんだなー、これが。 車も、週に一度、スタッフに見てもらってるから大丈夫。」
「本当かなー。事故でも起こしたら、新聞に出ちゃうし、バレバレだよ。」
「運動神経良いから、大丈夫だって。」
「その割に、僕の前で2度も転んでるんですけどー。」
「ほんとだよね、以前は転んだことなんて無かったのに・・・。」
「みんなそうやって、おばさんになるんですよ。」
「ひどーい。でも、明日が楽しみー。今日は、早く寝ようっと。」