表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/96

第67話 「本当のこと」


瑠美が、玄関から戻って来た。

ため息をつきながら、また同じソファーに座った。


誠が、そんな留美に質問をした。

「みずきと姉妹って、本当なんですか?」


瑠美が、がっくりした顔をゆっくり上げながら、誠の方を見て答えた。

「えー、本当よ。」


誠は、はっきりと瑠美の口から言われて、少なからずショックを受けた。

「そうだったんですかー。

それであの日、みずき達は、海水浴場に来て同じホテルに泊っていたんですね。」


瑠美が、少し落ち着きを取り戻したようだった。

「そう、あの日は、みずきの友達が私と話がしたいと言うので、ホテルに呼んでたの。」


誠は、クイズでも解けたかのような表情をした。

「なるほど、同じ日に瑠美さんとみずきに会ったのは、有り得ない話じゃなかった訳だ。

もし、あの日、どちらか一人に会わなければ、今の状態にはならなかったかもしれなかったんだなー。」


「そうね。あの日、私か、みずきに会わなければ、こんなことにはならなかったわね。」


真紀が、気をきかせてお茶を入れようとした。

「誠さんは、アイスコーヒーで良いかしら?」


誠が、立ち上がった。

「いいえ、結構です。もう帰りますから。」


真紀が、慌てた。

「どうして? もう少しゆっくりしていって。」


誠は、右手の平を前に突き出すようなジェスチャーをして言った。

「妹の彼氏を、次から次へと横取りして、飽きたらポイッて捨てる瑠美さんより、み

ずきの方が心配ですから。」


誠が、玄関に歩き出した。


慌てた真紀が、急ぎ足で誠の前に立ち塞がった。

「ちょっと待ってよ。」


誠は、真紀の左の隙間をすり抜けようとした。

「どいてください。鮎川瑠美さんが、そういう人だったとは、がっかりしました。」


真紀の口調が強くなった。

「違う! あなた勘違いしてる!」


「勘違い? 何がですか。さっき、そう言ってたじゃないですか。」


「だから、それが勘違いなのよ!」


座っていた瑠美が、立ち上がった。

「真紀、いいの、止めて。」


真紀は、瑠美の方を見た。

「でも、このまま帰ったんじゃ。誠さん、戻って来ないよ。」


「良いんだってば、真紀。」


「だめだよ。本当のこと言おう? 誠さんならきっと大丈夫だよ。」


誠は、一体何を言っているのか、興味が出て来た。

「本当のこと?」


「そう、本当のこと。」

真紀は、誠が興味を示したので、ホッとした。

誠は、出て行こうとしていた威勢が消えていた。


真紀に手を引っ張られて、誠がソファーに戻って来た。

真紀が、ニッコリして言った。

「じゃー、アイスコーヒーでも飲んで、一息つきましょう?」


真紀は、ダイニングにアイスコーヒーを入れに行った。


真紀が居なくなったリビングは、気まずい空気が流れた。

瑠美の視線は、下に落とされ、誠は、そんな瑠美を見ていた。


「お待たせー!」

真紀が、アイスコーヒーを3つ、お盆に載せて戻って来た。


真紀がガラスのテーブルに、アイスコーヒーを置いて、それぞれの前に滑らせた。


瑠美が、顔を上げて言った。

「ありがとう。」


「あっ、どうも。」

誠は、アイスコーヒーよりも、早く「本当の話」が聞きたい様子だ。


真紀も、ソファーに座った

アイスコーヒーを手に取り、挿してあるストローを口にした。

釣られるように、瑠美と誠もアイスコーヒーを口にした。


みんながグラスを置くと、真紀が深呼吸をして、瑠美と目を合わせた。

真紀は、お互いの気持ちが通じたと判断して、本当のことを語り始めた。

「誠さん、これから話す事は、全て本当のことで、みずきちゃんは知らないことです。

だから、みずきちゃんや他の人には言わないでください。

 何で私が、そのような事を知っているかと言うと、瑠美とは、中学1年の時から一緒で、お互いに悩みを打ち明けられる親友だったからなの。

まず始めに、言っておくけど、さっきここで瑠美がみずきちゃんに言っていた事も、きっぱり忘れてください。真実ではないので。」


「えっ? 嘘だったの? 姉妹って言ったのも?」


真紀は、答えづらそうに言った。

「ん~、姉妹は本当だけど・・・血は繋がってないの。」


「え~っ? それって。」


「そう、瑠美は、養子なの。」


誠は、驚いて瑠美を見た。

同時に真紀は、話の許可を求めるかの様に、瑠美を見た。


瑠美は、視線を落したまま、2人に対して、ゆっくりと小さくうなずいた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ