第65話 「真紀の驚き」
誠は、みずきを連れて、鮎川瑠美の待つマンションへと向かった。
誠とみずきは、途中の会話も殆ど無いまま、お互い鮎川瑠美と会ってからの事を考えていた。
みずきの表情は、曇っていた。
しかし、誠は、時折目が合った時のみずきの瞳に、怒りに似た強いものを感じた。
横浜駅に着くと、待ち合わせ場所のみどりの窓口へ向かった。
少し歩くと、緑色に明るく照らされているみどりの窓口の案内板が、目に入った。
みずきの緊張が、高まった。
「誠に、ばれる。隠していた事を知ったら、誠は一体どう思うんだろう?
あたしを嫌いになる? だったら、このままどこかに隠れてしまう?
いいえ、そんなことをしたって、何も変わらない。
あたしは、瑠美に誠の事を諦めるように言いに来たんだ。
えぃ!もーなるようになれ!」
みどりの窓口の入り口に差し掛かると、マネージャーの加藤真紀が、待っているのを見付けた。
みずきの足の運びが遅くなった。
みずきは、誠の影に隠れるように歩いた。
マネージャーの加藤真紀が、誠に気が付いて、軽く会釈した
誠も、それに応えて会釈した時、後ろに居たみずきの顔が、真紀の目に映った。
真紀が驚いた。
すぐに真紀は、誠を差し置いて、みずきに近寄った。
「みずきちゃん! どうしたのこんなところで?」
誠は、唖然とした。
みずきは、仕方なさそうに答えた。
「こんにちは。実は、困ったことになちゃって・・・。」
真紀の脳は、少し前の瑠美との電話での会話を辿っていた。
そして、気付いた。
みずきが、まことの付き合っている人である事を。
「まさか、誠さんが付き合っている彼女って・・・。」
「そう。あたし。」
真紀の顔色が、急に悪くなった。
「どーして? どーして、みずきちゃんなの?」
「あたしも、同じ事を何十回、いえ、何百回って言ったわ。
どーして? どーして? また、瑠美なの?って。」
「このまま瑠美に会う気なの?」
「そのつもりで来たわ。きっぱりと諦めてもらうつもりで。」
「そう、そうなんだ。」
唖然とした表情で聞いていた誠が、声を出した。
「えっ? どういうこと? みずきと真紀さんは前から知り合いだったの?」
みずきと真紀は2人とも答えるのをためらった。
2人を見て、誠は察した。
「そーかー、知り合いだったんだね。
・・・ということは、みずきは、鮎川瑠美とも知り合いということ?」
みずきが、仕方なさそうに、軽くうなずいた。
誠が、みずきの顔色を気にしながら話した。
「えーっ、それじゃー、今まで、隠してたの?
酷いなー。でも、瑠美のことが、嫌いだって言ってたから、仲が悪いんだね。
過去に何か有って、もめたとか?」
みずきは、また、仕方なさそうに、軽くうなずいた。
「まーいいや、とりあえず、行ってから話そう。」
誠は、そう言うと、真紀に先に行ってという様な素振りをした。
3人は、真紀の車に乗り込み、瑠美の待つマンションへと向かった。