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第56話 「約束」


2人が現れて、真紀が、ほっとしたような表情をした。

「さっきの続きをしようと思ってたんだけど、野田さんも悪い人ではなさそうだし、質問攻めにしても意味が無い気がして来たから止めるわ。ただ、約束をある程度してもらわないと、瑠美の歌手生命が奪われることにもなるので、お願いするわ。」


誠は、ただ聞いているだけだったが、瑠美が返事をした。

「解ったわ。言ってみて。」


「まず、一つ目は、2人で外に出ない事。どこでマスコミが見てるか安心できないわ。

よって、2人が会えるのは、部屋だけ。そう、この部屋も危険があるので、引っ越すことになったわ。」


真紀が立ちあがって、窓の方を指差した。

「引っ越し先は、あそこに見えるマンションの21階、ここより海に近い分眺めも良いよ。ついでに、私も隣の部屋に引っ越すことになったから。実を言うと、私の部屋の家賃も、事務所が出してくれることになったの。つまり、2人の交際は、社長に了解を得ました。」


瑠美が、声を上げた。

「ほんとー! 本当なの真紀?」


「本当だよ。結構大変だったんだから。やっぱりって感じで、大反対。

あれやこれや言い合いになって、1時間経っちゃって、私も熱くなって来ちゃって

認めてもらえないなら、瑠美は引退すると言ってますって言っちゃった。」


「そんなこと言ったんだー。びっくりしてたでしょー。」


「そこまで真剣なのか?って焦っちゃて、強気だった態度が一変。

外部に知られない事を条件にOKが出たわ。

感謝してよー。」


「感謝する、する。良いマネージャーで良かったー。

ほんと世界一のマネージャーだわ!」


「まー、私もお陰で、住めるはずもない高級マンションに、タダで住めることになったんだけどね。」


「そんなの当然よ。」


「ついでに、言っとくけど、これからは、野田さんが瑠美に会いに来る時は、私に連絡頂戴。

私が車であなたを迎えに行くわ。次のマンションの駐車場は地下に有って、住民はカードでシャッターが開くようになってるから、住人以外の車は入れないし、車の乗り降りを住人以外に見られることも無いわ。社長名義で借りた部屋の玄関ドアまで私が一緒に居て、周りに誰もいないのを確認して、私が鍵を開けてあなたを入れてから、私は隣の自分の部屋に入るという手順ね。部屋を出る時は、私に電話を入れて、来た時と逆に進めていく手はず。こうすれば誰にも気付かれないと思う。いいわね?」


誠は、知らない所で勝手に話が進んでいることに不快だったが、文句を言ったところで、どうにもならないと解っていた。

「分かりました。それじゃー、番号とメルアドを教えてください。」


真紀は、すぐに瑠美に聞いた誠のメルアドにメールを送った。

誠の携帯が鳴り出した。

「真紀さん、届きました。」


「それじゃー、私に連絡をする時は、最初に電話を入れて、私が出なかったら、メールをしておいてください。

えーと、それでは2つ目ね。付き合っている事を外部に絶対に言わない事。

誘導尋問みたいなものにも引っかからないでよ。親戚や友達にも言ったらダメ。」


誠は、そんなことはどうでも良かったが、一方的に言われ続けているのが、しゃくに障っていたので、突っ込みを入れてみた。

「親、兄弟には良いんですね。」


「御免なさい、言い忘れたわ。言っては駄目。言いたい気持ちも解るけど、聞いた方は、人に言いたくてウズウズすると思う。交際を続けたいのなら、誰にも言わないことね。」


とうとう、誠が我慢できなくなった。

「あのー、僕は、瑠美さんと交際したいと言ってませんけど。」


真紀が、耳を疑った。

「えっ? 今何て?」


瑠美が、慌てた。

「誠さん!」と言うと、すぐに手を引いて、廊下に連れ出した。


「さっき約束したじゃない。お願いだから、変なこと言い出さないで。

真紀だって頑張ってくれてるし、不満は後で聞くから、今は、私に合わせて。

お願い!」


大スターが、自分に手を合わせている、そんな普通では考えられないシチュエーション。

そして瑠美の真剣な眼差しを見て、誠は思い直した。

「OK、大丈夫。」


瑠美は、胸を撫で下ろした。

「ありがとう。」


真紀の前に戻ると、早速、真紀から質問が飛んだ。

「さっき言ってた事なんだけど・・・」


誠が、すぐに答えた。

「あー、あれは、何でもないです。ちょっとした勘違いで。

まだ、社長さんには、交際したいと言ってないということで。」


真紀の表情が、明るくなった。

「あー、そういうこと・・・。

社長には、一度挨拶しておいた方が良いかもね。

ただ、社長は、あなたのこと良くは思ってないけどね。

私が、日程と場所を調整しておくわ。


えーっと、どこまで話してたっけ?

そうそう、3つ目の約束ね。


それは・・・、妊娠しない事。

出来ちゃったから結婚しますなんて、もってのほか。絶対に許しません。

その時は、私も敵になって、損害賠償請求をしますので、キチンと避妊をして楽しんでください。」


瑠美が、少し大きな声を出した。

「ヤダー真紀ったら、楽しんでくださいなんて。ねーっ、誠さん?」


誠は、放心状態だった。

「あれ? 誠さん? 大丈夫? 

真紀が変なこと言うから、誠さん、壊れちゃったじゃない。」


「そんなに変なこと言ったかなー?

おーい! 誠さん、帰ってきてくださーい。」

真紀が、誠の肩を軽く叩いた。


誠が、蘇った。

「あっ! すみっません。

ちょっと妄想の世界にトリップしてました。」


瑠美が、誠の肩を叩いた。

「ヤダー、もうー、変なこと妄想しないでください。」


3人とも、笑った。

ただし、誠は、不自然な笑い方をしていた。


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