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第5話 「ホテル」


3人はホテルに着いた。

水越渉と野田誠は、ロビーのシャンデリアに目がとまった。


渉が思わずつぶやいた。

「へー、案外、奇麗なホテルじゃん。」


誠も宿泊料が気になった。

「本当に、俺たち払わなくていいのかよ?」


守は全く気にしていなかった。

「あー、大丈夫だよ。親父の病院の福利厚生で契約しているホテルで、安くなるから気にすんなよ。」


フロントの女性が、にこやかに迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。」


守が、カウンターに乗り出して、女性に近づいて言った。

「予約してある土田ですが。」


フロントの女性は、顔を近づけて来た守に、嫌な顔もせずに対応した。

「はい、お待ちしておりました。こちらにご記入お願いします。」

守が記入すると、続けて案内した。

「ありがとうございます。それでは、係りの者を呼びますので、あちらのソファーでお待ちくださいませ。」


3人がソファーに掛けると、渉が小声で言い出した。

「あのフロントの人、良くねぇ? なんか俺、あの落ち着いた声にぞくぞくしちゃった。」


守が、うなずきながら言った。

「解る解る。俺も自然に、顔が近づいて行っちゃったよ。」


呆れたような感じで、誠が言った。

「自然に、って、あれが?」


案内係の女性が来た。

「土田様でいらっしゃいますか?」


守が、はいと答えるや否や、その可愛らしい女性は、

「部屋まで案内致します。お荷物がございましたらお預かりいたします。」

と言い、3人は言われるままに、リックサックを渡した。

その案内係りは、受け取ったリックサックを、台車に載せると、

「お部屋は、8階の3号室でございます。それでは、あちらから参りますので、お後にお続きくださいませ。」と言って、台車を押してエレベーターに向かった。


エレベーターに乗ると、ラベンダーのような優しい香りがした。

守が、案内係りに、突然話しかけた。

「とてもいい香りの香水をお付けですね。」

「いいえ、私は、何もつけていませんよ。そこの芳香剤の香りじゃありませんか?」

と、にこやかに案内係りは返した。


守は、ばつが悪うそうに言った。

「あっ、そうだったんですか。可愛らしいあなたにお似合いの香だったから、

てっきりそう思っちゃって、すみません。」


その可愛らしい女性は、にっこりしながら、答えた。

「いいえいいんですよ。でも、お口がご上手ですね。可愛らしいなんて言われたの、何年ぶりでしょうね。はい8階に着きました。出ましたら、右手で御座います。」


案内係りの女性がエレベーターを降りかけた時に、渉が突然、少し大きな声で言った。

「本当に、可愛いですよ!」


案内係りの女性は、驚いたように振り向くと言った。

「あー、びっくりした。ありがとう。お世辞だと分かっていても、嬉しいです。」


部屋のドアは開いていて、4人は中へ入った。

案内係りの女性は、お茶を入れながら、注意事項などを説明した。




渉は、案内係りの女性が出て行くとすぐに、窓のカーテンを開けて、外を見渡した。

「スゲー、眺めいいじゃん。」


誠は、渉の声に誘われて、窓の外を眺めた。

「本当だ。いい景色。」


守は、景色には関心が無いようだ。

「風呂行こうぜ!」


渉が、不思議そうな顔をした。

「部屋風呂だけじゃないの?」


何言ってるの、といった感じで守が答えた。

「温泉の大浴場が有るって、今説明してたじゃん。」


渉は苦笑いをしながら言った。

「はっはっはっ、顔に見とれて、聞いてなかった。」


守は、渉の顔を見て話した。

「おいおい、可愛いけどきっと年上だぞー。さっきナンパした子といい、渉は年上好みなんだなー。」


渉は、守がマジ顔で言ってるのを気にしながら、否定した。

「別にそう言うことじゃないよ。たまたま、顔が好みだっただけだよ。」


誠が、館内案内を見ながら、言った。

「そーかなー。」


守は、支度をすると、2人に声を掛けた。

「風呂行こうぜ。さっきの案内係りの人に会ったら、ナンパしちゃえばいいじゃん。」


渉が、調子に乗って答えた。

「んー、それもいいかも。」


3人は、誰に会うことも無く、大浴場まで来てしまった。


服を脱ぎ捨てると、大浴場の湯船に浸かった。

守が、頭にタオルを載せて渉に言った。

「残念だったな、渉。案内係りの人に会えなくて。」


渉が、天井を見上げて言った。

「残念なのは、俺じゃなくて、彼女さ。こんなイイ男を捕まえるタイミングを失くしたわけだからさ。」


誠が、笑いながら言った。

「そんなこと言ってると、僕が頂いちゃいますよ。」


渉が、少し慌てた感じで言った。

「何言ってるんだよ。誠の好みじゃないだろ? 誠は、鮎川瑠美のようなのが好きなロリコンだろ。」


誠が、右の眉をあげながら言った。

「そんなことはないさ。彼女のように綺麗で、落ち着いた感じも好きだよ。」


守が、割って入った。

「まーまーまー、お2人さん。気持ちは解りますよ。僕もいいなーと思いましたから。こうしましょう、後でトランプで勝負して、負けたら彼女をナンパする。」


渉が意気込んだ。

「負けたらって、罰ゲーム? なんか変だけど、俺はいいよ。」


直ぐに返事をしない誠に、守が訊いた。

「誠は、どーよ。」


ナンパしようとまで考えていなかった誠は、守が訊いてきたので仕方なく答えた。

「えっ、また、ナンパ? まーいいですけど・・・。」


守が、仕切った。

「じゃー決まった。後でブリッジやろうぜ。」



3人は、風呂から出ると、予約した食事を摂りにレストランホールに向かった。

渉がフロアの人や料理を見て、つぶやいた。

「バイキングかー。色々食べれていいかも。」


守がはしゃいだ。

「俺は、肉、肉、肉。」


誠は、寿司を持っている人を見て言った。

「僕は、和食がいいなー。」


3人は、何度も往復して、腹いっぱい食べると、部屋に戻って行った。



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