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第42話 「心の底」


朝がやって来て、みずきは、教習所に向かった。

教習所に着くと、早めに着いたにも関わらず、誠が待合所のベンチに座っていた。

みずきは、直ぐに誠を見つけたが、そばに行くのをためらった。

立ち止り、誠を見ていると、誠がみずきに気付いて、直ぐに立ち上がって、やって来た。


「まだ、怒ってる?」

「・・・。」

「ごめん。もうあんなことしないから、許してくれよ。」

「本当?」

「あー、絶対に。」

「なら、許してあげる。だけど、キスして。」

「分かった。最初の教室は、2階だっけ? そろそろ行こうか。」

「キスして。」

「えっ? ここで?」

「そう、今すぐ。」

「人が、沢山居るんだけど。」


みずきは、誠の目を見たまま動こうとしない。

誠は、どうしていいのか困ってしまった。


「分かったよ。じゃー、どこか人のいないところに行こう?」

みずきは、声を出さずに、うなずいた。


2人は、二階に上がって、教室を見て歩いた。

どの教室も人が居たので、3階に上がることにした。

3階には、教室が3つ在ったが、一番奥の1つが空いていた。

2人は、中に入りドアを閉めた。

すぐに誠は、両手をみずきの頭に添えると、キスをした。


僅か5秒のトリップ。

みずきの顔に笑顔が戻った。

「うん、まーいいでしょう、許す。」

「何だよそれ。(笑)」

みずきの心の底を知ることも無い誠の目には映らなかったが、笑顔のみずきの頬を一粒の涙が流れた。


2人は、2階に降りて講習のある教室へ行った。

講義は、いつもの通り坦々と続き、昼になった。

みずきの手作りお弁当が無かったこの日は、コンビニへ行って買って来た。


「やっぱり、みずきの作った弁当と全然違うよなー。」

「コンビニ弁当の方が、美味しいという事?」

「もー、そんな訳ないじゃん!」

「はっきり言ってくれないから、分からない。」

「みずきの作った弁当の方が全然美味しいです! 何倍も何十倍も美味しいです!」

「はい、よろしい(笑)」

「まったく(笑)」

2人の間のわだかまりは、溶けたように思われた。

昼休みが終わると、また、講義が始まった。


学科教習漬けの一日が終わり、帰ることになった。


「どうする? 今日も自宅に帰るのか?」

「きのう、居なくて寂しかったんでしょ?」

「えっ、そんなことないさ。自宅に帰った方が安心だよ。」

「そんなこと言ってると、本当に帰っちゃうよ。」

「うん、その方がいいと思う。」

「そっか、私のこと好きじゃないんだ。」

「そんなことないさ。」

「どうして、いつも中途半端な言い方するの?」

「私は、誠のこと、本気で好きなんだよ!」

「分かったよ。」

「分かってない!」

「分かったって。」

「じゃー、今、大きな声で、みずきが好きだって言ってよ。」

「またそんなこと言い出す。どうしちゃったんだよ?」

「言えないのね。誠さんの愛情ってそんなものなのね。」

「あーそうだよ! こんな所で大声で言えるかよ。」

「分かった。もういい!」


みずきは、一人で歩いて行ってしまった。

誠も少し苛立ち、追い掛けることはしなかった。


みずきの足は、自宅に向かった。

駅を降りると夜食を買う為に、コンビニへ立ち寄った。

すると、いつかのように、美樹と知佳が、雑誌の立ち読みをしていた。

みずきは、2人に根掘り葉掘り聞かれるのが嫌で、気が付かない振りをして、お弁当を手にした。しかし、レジに向かおうとした時に、タイミングが合ってしまった。


美樹が、まず声を掛けた。

「みずき! 教習所の帰り?」

続いて知佳が言った。

「誠さんの所に泊ってるんじゃなかったの?」

みずきが、仕方なく答えた。

「うん。もう、そういうの止めた。」

美樹は、様子がおかしいことに気付いた。

「どして? あれほど積極的に頑張ってたのに。」

「なんか、無理して頑張っても、上手くいかないや。」

知佳は、3人で話したいと思った。

「ねぇー、わたしんちに来ない?」


美樹が、良くぞ言ったという顔をした。

「そうね。みずきと話したいし。行こう? みずき。」

みずきは、そんな気分ではなかった。

「えっ? 私、ちょっと。」


美樹の言葉尻が強くなった。

「最近、全然話してないじゃん。何か有ったら隠さずに話して、3人で解決するんじゃなかったの? 

みずきが言い出した言葉だよ。」

知佳も美樹と同じ様に思った。

「そーだよ。」

みずきは、半分仕方なく同意した。

「んー、分かった。行こう。」



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