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第41話 「友情」


守は、みずきを追い越して車を止めると、みずきの前に立った。


「よっ!」

「あっ! 土田さん?」

「今、誠から電話があって、みずきが駅に向かってるから、家まで送ってくれないか?って。電車が無くなってると大変だし、こんな時間だから心配だし、だって。」

「そうですか、すみません。でもいいです。」

「いいって、言っても、電車ないかもよ。」

「だったら、ホテルにでも泊るからいいです。」

「こんな時間に泊れるの? 大体何処にあるかも知らないんだろ?」

「タクシーに乗るから、いいです。」

「何があったか知らないけどさー、冷静になった方がいいんじゃないの?」

「誠も反省してると思うよ。」

「どうだか。」

「俺にこんなこと頼むなんてよっぽどのことだから。あいつ、基本、金持ち嫌いだから。俺とは、大学のゼミで仲良くなったあとに、俺が金持ちだって知ったから付き合ってるけど、やっぱり、ちょっと壁があるんだよ。だから、頼みごとなんてしたことなかった。そんな奴が、こんな時間に頼んできたんだ、よっぽど君のことを大事に思ってるんだよ。戻って仲直りしてやるのが一番いいと思うんだけどな。」

「そうなんですか・・・。」

「そんな訳だから、俺も引き受けた以上、君をほったらかしにはできないから、戻るか、家まで送るかは、絶対にさせてもらうから。」

「土田さんって、友達思いで良い人なんだすね。」

「えっ、俺が? 違うよ。誠が、良い奴なんだよ。」


「ちょっと、考えさせてください。」

「あー、いいよ。でも、とりあえず、車に乗ってくれよ。」


みずきが、渋々、車の助手席に乗り込んだ。

「こんな時間に、私達のためにすみません。」

「いいよ、気にしないで。どうやら、やっと頭が冷めてきたみたいだな。」


少しの沈黙のあと、みずきの口が開いた。

「分かりました。土田さんには悪いんですけど、私の自宅までお願いできますか?」

「そーかー、自宅か・・・。分かった。出発するよ。」

「ごめんなさい。土田さんには本当に迷惑な話ですよね。こんな夜中に、横浜まで往復なんて。」

「気にしなくていいって。さっきも言ったように、誠が俺に頼みごとなんて無かったことだし、なんかちょっとうれしいんだよ。」

「すみません。」

「もし良かったら、ケンカの原因教えてもらえる?」

「えっ、それは・・・・・。私の携帯を勝手に開いて、メール読んだんです。」

「そっか、それは良くないなー。サイテーだね。彼女を信用してないってことだろ?他の男からのメールがないかとか、浮気してないかとか、勝手に調べるなんて。」

「ち、違うの。そういうんじゃなくて、私の親が心配して掛けて来た電話だと思って、ちゃんと話そうとして、電話を取ったらしいんだけど、ボタン押したら美樹からのメールだったの。それで、つい見ちゃったらしいんだけど。」

「電話を取ったつもりで、ボタン押したらメールが出てきたから読んだ? なんだよそれ。読むことはないよな。大体、電話が鳴ったからって、みずきちゃんの電話を取るのがおかしいよ。ご両親からの電話だとか言ってるけど、そんなの気にしてるなら、先に誠が電話すればいいことだし。大体、自分ちに、女の子を泊めるんだったら、きちんと連絡しておくべきだよな。まったく何やってるんだよ、って感じ。そんくらいのことも、気が付かないなんて、ほんと、しょーもねぇー奴。」

「そ、そーじゃなくて、反対する彼に無理に泊めてって、私が言ったのが悪かったの。

親から電話が来たら帰るなんて言ったから、私の携帯が何時鳴るか気にしてたんだと思う。

だから、鳴り出した私の携帯を手にしたのは、当たり前のことで、ボタンを押したから、メールが出てきちゃちゃったのも分かるし、気になって読んじゃったじゃったのも分かる。だから、彼は悪くないの! ただ、見られたくない物が携帯に有ったから、私が神経質になって・・・。」

「そーなんだ。じゃー仲直り出来るじゃん。戻るぞ。」

「ダメ! 戻らないで。何て言っていいか分からないし、嫌われたかもしれない。」

「ゴメンって、ひとこと言えばいいんだよ。それで、全て元通り。」

「そーかなー。でも、今日は、家に帰る。着替えとかもあるし。」

「そーかー、こう云うのは時間を空けない方がいいんだけどな。」

「ごめんなさい。でも、頭を冷やしたいの。」

「分かったよ。」

守は、カーステレオに手を伸ばすと、バラード曲をボリュームを抑えて掛けた。

夜中の道は、混む事無く、割と早くみずきの自宅に着いた。

「そこのボロイ家がそう。」

みずきが指を差した家の前に車は止まった。

「はい、どうぞ。」

「ありがとう。帰り道、気をつけてね。」

「ああー。あんまり考え過ぎるなよ。誠は、いい奴だよ、魔が差しただけだよ。」

「分かってる。おやすみなさい。」

「おやすみ。」


守は、みずきが家に入ると、携帯電話を手にした。

「もしもし、今、送り届けた。もう、怒ってないみたいだぞ。ただ、色々と考えたいことが有るようで、表情は暗かったな。お前もちゃんと謝った方がいいぞ。じゃー。」

「あー、助かったよ。ありがとう。それじゃー。」

車は、動き出し来た方向へ戻って行った。



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